余計に怖がらせるとは思わなかったの? と聞かれましても担当編集から旅行の土産をもらった。
お菓子と、資料にと言われた本だった。
本はなんでも、曰くつきなのだそうだ。
怖いのは苦手だと言ってるのにひどい話である。
「先生は怖がってくれたほうがいい作品書きますから!」
確信犯である。本当に酷い話である。
茶請けもあることだし、道連れを呼ぼう。そうしよう。
「あ、とーかちゃん? 突然だけどさ。お茶に呼ばれてくれない? えー、なんもないって。ほんとほんと」
ちくちくいわれるのは避けられないが背に腹はかえられぬ。
鯉太郎は秘蔵のお茶を献上すべく、席を立った。