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    ごまわらび

    @jujuwarabi

    呪🍙先輩
    🐺🍙のなんでもない日常

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    ごまわらび

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    このあと一つくらい?
    全部かけたらまとめてちょっと直して支部にあげる予定です

    #伏棘
    voluptuous

    子猫の続き狗巻先輩が猫になってから2週間ほど経っただろうか。
    相変わらず猫のまま授業を受けたり、ふらりと散歩に出かけたりと、彼は猫生活を満喫していた。

    その間の俺はといえば、我ながら呆れるほど献身的に、自由奔放な子猫のお世話を続けていた。

    最近では狗巻先輩は毎晩俺の部屋で寝ることが当たり前になっていて、任務で帰宅が遅くなった日には、人の姿で俺の布団に入っている事すらあった。

    そんなある日、俺は夜の食堂で先輩たちと、依頼者からの差し入れだという専門店のアイスクリームを片手に他愛もない話をしていた。
    狗巻先輩はパトロール中なのか、姿を現さない。
    あの人の好きなパチパチするキャンディの入ったチョコミントのフレーバーをひとつ、傍に避けて確保しておいた。

    話題は授業の内容や、任務のこと、子猫の狗巻先輩にめろめろになりながらも、泣く泣く海外出張に出掛けていった乙骨先輩のことや、新しいテレビ番組に、芸能界のゴシップ、話題はどんどん移り変わり、自然と狗巻先輩の話になっていった。

    「なあ、棘って、猫の時どれくらい頭の中猫なんだろうな」

    「どうなんだろうなぁ。すこし前、任務で人に戻ってた時は、『完全に意識はある』って言ってたけどな。でも雨が降る前は熱心に顔洗ってるよな」

    確かに、その姿は俺も見かけたことがある。

    「そうなんだよな。この間は水飲んでる時にこっそり背後にキュウリ置いたら、振り返った時に驚いて大ジャンプしてたぜ」
    「……真希さん、やめてあげてください。それ、猫の寿命を縮めるらしいですよ」
    「いや、棘だから大丈夫だろ」

    真希さんはまったく反省する様子もなく、俺が傍に避けておいたアイスクリームの蓋を開けた。

    「んー、やっぱり何割かは猫だよな。というか、人間の棘が猫の入れ物に入ってるような感じなのか、おれみたいに」

    「なんだそれ。分かりにくいな、その例え」

    真希さんは弾けるアイスは初めてだったのか、怪訝そうな顔で、パチパチの原因をスプーンでほじくり返しながら答えた。

    「人としての意識ははっきりとあるけど、猫としての無意識的な本能も持ってる状態なんでしょうね」

    「確かに。かまって欲しい時とか尻尾立てて寄ってくるから、今の方が人間の時より分かりやすいところはあるな」

    「尻尾といえばさ、猫の金玉ってめちゃくちゃ可愛いんだぜ。恵も今度見てみろよ」

    「猫の金玉くらい、どんな物か知ってますよ。じゃあ、俺もう寝るんで」

    そんな事言われたら意識するじゃないですか。やめてください。心の中で叫びながら、俺は席を立った。

    「おー、おやすみ。子猫ちゃんによろしくな」

    猫の本能か。そういえば、犬と違ってあまり気にした事がなかったな。


    次の日。俺は湧き起こる知識欲に負けて、3時間ほどを予定していた任務を30分弱で片付け、向かった書店で一冊の本を手に入れた。

    仕草でわかる猫語の教科書〜猫ちゃんは意外とおしゃべり〜

    こんな本を読んでいる事を狗巻先輩に知られる訳にはいかない。書店で紙のカバーをかけてもらった上に、2冊の全く別の内容の本で挟んである。
    とりあえず、少なくとも今から2時間はあの人は午後の授業を受けているはずだ。

    (これくらいの内容なら2時間もあれば全部読めるだろう)

    俺は部屋に戻って、一気に読んでしまうことにした。

    カラカラカラ………トトッ。

    ベッドで横になって、件の本を三分の二ほど読み進めたところだろうか。
    この時間ではありえない音に、心臓が破裂しそうなほど、早く打つのを感じた。
    雨の日の泥まみれ事件から、窓の下には雑巾が置いてあって、外から帰った猫はそこで足を拭くルールになっている。

    トスッ。

    雑巾で念入りに前と後ろの足を拭ってから、ベッドに飛び乗る白い子猫の姿を視線の隅に捉えながら、なるべく自然な仕草で本を閉じ、手だけでサイドボードに置いてあった別の本の下に忍び込ませた。子猫はそんな俺の動揺などどこ吹く風で、仰向けに横になった俺の体の上を進んでくる。

    「授業、サボったんですか?」

    その質問に答えるでもなく、子猫は俺の胸の真ん中で、通称「おててないない」香箱座りをした。
    心地よい重さと、薄い部屋着越しに伝わってくる柔らかい温もりに、優しい気持ちになる。
    つんと立った耳、丸い後頭部から背中、スラリと伸びた尻尾の先までを、ゆっくりと右手でなぞった。
    子猫の方もまんざらでもなさそうに大人しくしている。

    滑らかな曲線と柔らかい肌触りを手のひらで堪能しながら、この世の中で一番美しいと思ってきた玉犬の精悍な造形に対して、子猫は「可愛い」だけを凝縮して作られたんじゃないかとも思う。

    気付けば何度も頭から尻尾の先まで繰り返し撫でていた。気持ちよさそうに目を閉じていた子猫が、突然俺の手のひらに強く頭を擦り付けるようにした後、ふと目が合う。

    ガラス玉のように綺麗な瞳。

    子猫は視線を逸らすこともなく、ゆっくりと2度、瞬きをした。


    「おい、お前ら、昼間っから窓全開でイチャついてんじゃねーぞ。棘、五限は人間に戻って小テスト受けるんじゃなかったのかよ」

    突然降って湧いた真希さんの声に、子猫は一目散にその横をすり抜けて逃げていった。

    「ったく。あいつ、小テスト完全にバックれるつもりだな」

    「そう言う真希さんはここに居て大丈夫なんですか」

    「ああ、あたしはアレだ、一応小テストは受けてきたし、さっさと済ませて棘を探してたんだよ」

    (この人も途中でバックれてきたんだな………)
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