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    ごまわらび

    @jujuwarabi

    呪🍙先輩
    🐺🍙のなんでもない日常

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    ごまわらび

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    ねこちゃんを見ていたら思いついた落書き
    単発

    #伏棘
    voluptuous

    ぬくもり「棘には自分が主人公になるっていう発想がないんだ」

    いつだったか、パンダ先輩に言われたセリフを思い出していた。

    「恵なら棘の家の方針は知ってるな。棘は生まれたときから、脇役であれ、と叩き込まれてる。ひっそりと、独り生涯を閉じろ。ってな」

    そこで、バシン!とひとつ、背中に喝を入れられる。

    「恵から伝えないと、棘からは絶対に動かないぞ」


    朝方、突然俺の布団に潜り込んできた、愛しい人。
    何も言わず、ただ子猫のように俺の肩にぐりぐりと額を押し付けている。脅かさないように、ゆっくりと体勢を変えて、体の下に腕をまわして抱き寄せた。
    お互い起きていることは承知の上で、寝たふりを続ける。

    ふわりと消毒液の匂い。

    誰にも口外したことのない、俺の、秘めた思い。

    以前にも同じようなことがあった。
    朝方、体の左側に突如現れた愛しい温もりを感じながら、その行動の意味について俺は全速力で考えを巡らせ、やはりこれはそういう意味なんじゃないか。という結論に達し、意を決して寝返りを打とうとしたところで、狗巻先輩はひとつ大きく息を吸い、その勢いで部屋を出て行った。

    あれは一体何だったんだ。
    一日中その出来事を引きずり、機嫌の悪い俺に人知れず授けられたのが、件のパンダ先輩のアドバイスだ。
    そもそも、何故パンダ先輩が俺にその言葉をかけようと思い至ったのかは、あえて考えないこととする。

    後に聞いた話では、前日の任務で予定にはない等級の呪霊が現れ、なんとか祓うことには成功したものの、狗巻先輩はギリギリの状態で。一泊の予定を急遽切り上げて呪専に戻り、家入さんの治療を受けた直後だったそうだ。
    それにしたって何故、パンダ先輩でも、乙骨先輩でもなく、俺の部屋に来たのか。

    多分、命の危機に瀕して、心細かったのだろう。ほんの少し浮つく気持ちを抑えて、自分なりにそう結論づけた。


    せめて。
    毛布を引き上げて、頭の上まですっぽりと包み込んで、改めてぎゅっと抱きしめた。俺の背にしがみつくように回されていた腕に、小さく力がこもる。

    この部屋にいるときくらいは、あんたが主人公です。

    パンダ先輩から、ああは言われたものの、まだ気持ちを伝える勇気が出ないまま、ただただ抱き合って朝を迎えた。

    「で、何か進展はあったのか?」

    実技実習の最中、他に聞かれることを警戒しながら、コソコソとパンダ先輩に声をかけられた。

    「何がです?」
    「なんだよ、棘、任務で限界MAXくると部屋くるだろ?こんどからは恵のとこに行けって、俺が言ってやったんだぞ?」
    「え?」
    「実家にいた頃は巨大なぬいぐるみがあったらしくてなぁ。しがみつくものがないと眠れないらしい。流石に高専生にもなって、ぬいぐるみは部屋に置けないんだと」
    「確かに、部屋には、来ますね。でも、そんなの、進展なんて、あるわけないじゃないですか」
    「ふぅーん?」

    ぬいぐるみの代わり。パンダ先輩の言葉が、思いがけず、深く深く、俺の心を抉った。
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