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    ろどな

    左右相手非固定の国

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    9/5 主カミュ
    ED後、世界が平和になった世界のふたり。

    #主カミュ
    ##rd_9月ひとり創作フェスタ

    きっともとより愛してた 二人で旅をしようと、そう決めたのはどちらからだったか。カミュはマヤをクレイモランの城に預け、それから船に乗った。行き先はダーハルーネ。待ち合わせ先をそこに決めた理由すら、おぼろげだ。
     船に揺れる間、ぼんやりと考えていた。それはあの旅と、彼からの熱烈なアプローチ。今思い出しても頬が赤くなるほど、彼は情熱的に愛を紡いだ。もちろん旅の仲間にもバレるほどで、最初こそからかわれたものだが、自分が煮えきらない返事ばかりをしていれば、徐々にからかう声は減り、旗色が悪くなっていった。
     だからカミュは言ったのだったか。旅が終わったらおまえのことを教えてくれと。
    (ああ、それで旅だ)
     元々世界を救う旅が終わればそうするつもりだった。ただそれはひとりで、もしくはマヤを連れ立って、だ。決して彼と旅をするなど、考えたこともなかった。物理的にも精神的にも世界が広がった今、クレイモランからどこかへ定期船に乗り旅立つなど考えてもいなかったものだから、カミュはひとり嘲笑をこぼす。
     ダーハルーネへは数時間の内に着くだろう。カミュは自らの私財で得た個室に戻り、これからの予定を思い浮かべる。彼はユグノアへ行きたいと言っていた。自分もなにも知らないが、平和になった世で自分の生まれた地を改めて歩みたいのだと。その気持ちはわかる。旅の間は忙しなく動いていたから、廃墟となったその地をのんびりと眺める時間などなかった。
     それから、イシの村にも行きたいと言っていた。あそこは正真正銘、彼のルーツをたどることができる故郷だ。彼を知るものも多く、知らない彼を知るにはもってこいである。
    (そこまでする必要あるのか?)
     あらゆることを考えて、待ち合わせ先への定期船にまで乗っておいて、いまさら原点へと立ち返ってしまった。そもそも、熱烈なアプローチの時点でおかしいのだ。彼も、自分も男だというのに。
     そういった趣味の者がいてもおかしくはない別に偏見があるわけでもない。だが、彼はユグノア王家の生き残りであり、自分はしがない盗賊。もう罪になるようなことをする気はないから、トレジャーハンターと言ったほうが正しいか。とにかく身分だって違いすぎる。
     承諾しなきゃよかった。ベッドの上で思わず膝を抱えて、カミュはひとり後悔する。彼のことを知らないからそれを受け入れられないんだと、そう思っていたのだが、知ってしまったら受け入れられるのではないか。そもそも、受け入れるという選択肢がある時点でまんざらでもないのではないか。思考が波のように揺れて、落ち着かない。
    「まもなく〜、ダーハルーネ〜」
     船員の、高らかな声が耳に届いた。ついに到着してしまった。僅かな荷物を整えて、それから甲板に出る。ほんの僅かぶりに見た港町に、彼をかばってついた傷跡が疼くような感覚を覚える。もう傷跡などないのに。
    「カミュ!」
     船の下、港から彼の声が聞こえた。嬉しそうに笑いながら、大きく手を振って。
    (あんなに、嬉しそうで)
     思わず苦笑いが漏れる。自分なんて、と卑下するつもりはないが、彼のあの太陽のような笑顔を受け入れて良い存在ではないと、わかっているから。
     それでも。太陽だからこそ浴びたくなってしまうのかもしれない。極寒の地ではそのぬくもりだけが癒やしだったから。
    (ああ……、オレも、好きだな……)
     とはいえ、自覚した想いをすぐに告げる気はない。彼に願ったとおり彼を知って、それから伝えてやりたい。彼がどうやって自分に自分を知らせてくるのか楽しみだから。
     カミュは停まった船から降りるとき、なんでもない顔をして彼の元へ向かった。微塵も、愛しているなんて伝わらないような顔で。
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    MAIKING2023.3.5 日陰者の太陽へ2 展示作品ですがパソコンが水没したので途中までです。本当にすみません……。データサルベージして書き終えたら別途アフタータグなどで投稿します。
    ※盗賊団についての独自設定、オリキャラ有
    ※数百年後にブラネロになるブラッドリーと子ネロの話
    死にかけの子ネロをまだ若いブラッドリーが拾う話 雪に足をとられてつんのめるように転んだネロには、もう立ち上がる気力さえ残っていなかった。
     突き刺すような吹雪でぼろぼろになり、白く覆われた地面に叩きつけられたはずの体は、寒さで麻痺して痛みさえ感じない。
     ぴくりとも動かす気力のおきない自分の指先に、雪が降り積もっていく。
     その様子をぼんやり見つめながら、このまま死ぬんだろうな、と思った。
     他の感想は特にない。
     すっかり疲れ果てていたので、もう全部がどうでもよかった。
     誰が家族なのかもよくわからないまま出て行った生家にも、殴られたり逃げたりしながら掏りや窃盗で食いつないだ日々にも、大した感慨はない。
     最後にはとっ捕まって場末の食堂で働かされていたが、足りない材料を地下室に取りに行かされている間に食堂どころか村ごと燃やし尽くされていた。
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