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    karanoito

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    karanoito

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    シンク&イオン 診断メーカーのお題より「まっすぐすぎて、きらいだ」

    大キライな緑の瞳

     選ばれたアイツと選ばれなかった僕の違いはコピーが成功したからと言うだけじゃない。ヴァンの手の内で上手に躍れるかどうか、従順な犬でいられるかだ。
     そして奴は導師イオンに成る事に成功した。
     出来損ないの僕と違って、堂々とオリジナルとすり替わった。ヴァンの思惑通りに進む駒として。
     導師イオンは預言〈スコア〉を与え続ける。定められた通りに。誰も導師の行いに疑問を持つ者はいなかった。あのヴァンでさえ、裏切られるまで反抗の意志を示すなんて思ってなかった筈だ。
     唯のレプリカに何が出来ると。
    「大人しくしてればよかったのに」
    「無理ですよ、ルークと会ってしまいましたからね」
    「会いに行ったの間違いじゃないの? ヴァンの野望を潰せる奴を探すために」
    「さあ、どうでしょう」
     イオンはにこやかな笑みを浮かべる。態度は落ち着いてて食えない、物静かな口調ながら貫禄があった。今まで導師を演じ続けてきたのは伊達じゃないってワケだ。
     その余裕が気に食わない。
    「アンタの反抗も捕まったからここでおしまい、全てはヴァンの計画通りに進むワケだ。何もかも無駄だったんだよ」
    「……無駄なんかじゃありませんよ」
     イオンは捕まった。監禁されて、今まで通り預言を詠み、導師として一生を終える。それが導師イオンのレプリカの役目。
     強がりを言ってるだけだと思った。
     だけど、
    「シンク、僕はヴァンを止める為に預言を詠んだ訳じゃありません。たまたま詠んで、知ってしまっただけなんです」
    「……だから?」
    「預言を知った以上ヴァンの考えには賛同出来ません、僕はオリジナルのイオンじゃない。オリジナルが賛同していたからと言って、無条件に賛同なんて出来る筈ないんです」
    「レプリカ失格だね」
    「そうですね……でもねシンク、僕はオリジナルじゃないけど“導師イオン”なんです。導師は人々の為に一生預言を読み続ける、その務めから逃げるつもりは最初から無かったんです。僕のたったひとつの存在意義だから」
     ふっきれたような清々しい顔でイオンは言い切った。まっすぐな瞳で。
     やっぱりコイツは本物の「導師イオン」なのだ。失敗作が持ち得なかった誇りを持って、前を向く。……僕とは正反対の存在。
     その、まっすぐな瞳がどうしようも無くキライだ。
    「アンタがどうしようと勝手だけど、僕は、アンタの事キライだよ」
     同じ緑の瞳なのに、まっすぐすぎて、キライだ。
    「僕はあなたの事好きですよ、だって僕たちは──」
    「……黙って」
     緑色の瞳が労るように微笑んでる。その目を見たくなくて、自分の仮面を外すと、椅子に座ったイオンの顔に押し当てた。
    「キライだよ……『イオン』なんか、大っキライだ」
    「シンク……?」
     自分の声が泣き声に聞こえて、余計に苛立つ。
     仮面の向こうで困ったようにイオンが微笑んで、細い指が僕の頬を撫でた。

    2012.1
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