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    primulayn

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    二十歳組のおはなし(わけはた記念作品)

    大人になったことを自覚し、みずから生き抜こうという青年を祝い励ます日。
    二十歳を迎えた同い年の多くは華やかな振袖や袴、スーツに身を包んで旧友との再開を慶んだりするものなのだろう。

    かく言う俺はFRAMEの仕事があるから地元の成人式は欠席だ。
    小学校や中学生の頃に仲が良かった奴らに会えないのは残念だけど、今の俺はアイドル活動が一番。
    温かい布団から抜け出してぐっと背伸びをする。寒いけど今日も頑張るぞ!


    てきぱき身支度をしていると突然携帯が鳴った。
    電話だ。しかもプロデューサーさん。


    「プロデューサーさん、おはよう!」
    「おはよう。朝早くにごめんね」
    「ううん、全然!」


    プロデューサーさんはいつも俺を元気にしてくれる。
    朝から声が聞けるなんて今日はラッキーだ!


    「今日仕事が終わったら事務所に寄ってもらいたいんだけど、大丈夫?」
    「わかりました!」


    電話を切って最終確認。
    荷物よし、予備の靴紐もよし。
    携帯の充電も完璧。待ち合わせ場所も確認済み。


    「いってきます!」
     




    雑誌の撮影は驚くほどスムーズに終わった。
    珍しいことに不運なことも何も起きない。
    ピン撮影もカメラマンさんにすっごく褒めてもらったし個人的にも大満足だ。
    英雄さんと誠司さんと別れて、俺は事務所に向かった。


    「龍さん、お疲れ様です」


    事務所の扉を開けると事務員の賢が出迎えてくれた。


    「賢!おつかれ!あれ、プロデューサーさんは?」
    「プロデューサーさんは外出していて…あ、でもすぐに戻ってきますよ」


    賢がお茶を淹れてくれたのでソファに掛ける。
    ゆっくり一口味わったところで外から足音がして事務所の扉が開いた。
    プロデューサーさんかと思い振り返ると、そこにいたのは鷹城と北斗さん。


    「もしかして木村もプロデューサーに呼ばれたのか?」


    思わず顔を見合わせる。
    どうやら2人も同じように事務所に呼ばれていたらしい。
    鷹城はイベントの打ち合わせ、北斗さんはレコーディングの帰り。


    3人で今日の仕事について話し込んでいると再び事務所の扉が開いた。


    「待たせてしまってすみません!」


    扉が開く音と同時に、プロデューサーさんとみのりさんが大荷物を抱えて駆け込んできた。


    「大丈夫ですよ、俺たちも今来たところなので」
    「それより荷物!手伝おうか!?」


    慌ててソファから立とうとするもプロデューサーさんに制されてしまう。


    「これは皆さんへの贈り物なんです」


    プロデューサーさんが抱えていた大きなダンボールから大事そうに品物を取り出す。
    そこにあったのは見るからに大きくて華やかな花束だった。


    「今日は成人の日だろ?プロデューサーが3人に贈りたいって言うから手伝わせてもらったんだ」


    みのりさんがプロデューサーさんの後ろからひよこっと顔を出す。


    「3人とも、成人おめでとうございます」


    泊の入った白い包み紙に金と赤の装飾、そしてピンクと黄色の花がメインに据えられたかなり高級感のある花束だ。
    プロデューサーさんから受け取ると、ずしっと腕に重みが感じられる。


    「うわぁ…すごい!」
    「見事な花束ですね」
    「すごく綺麗だな…ありがとう、プロデューサー」


    店には置いてなさそうな、明らかに特注のそれに驚きが隠せない。


    「3人とも成人式に参加させてあげられなかったから…せめて事務所で成人式ができたらと思って」


    申し訳なさそうに眉を下げるプロデューサーさんに、俺はぶんぶんと頭を振る。


    「こんな素敵な花束が貰えるなんてすっごくハッピーだよ!」


    プロデューサーさんも忙しいはずなのに、こんな風に俺たちの事を考えてくれて…めちゃくちゃ嬉しい!


    「この花はスイートピー、こっちの花はフリージアなんだ。よかったら調べてみて」


    成人を迎える俺たちにプロデューサーが選んでくれた花だとみのりさんが言う。
    帰ったら調べてみよう、そう思いながら俺はプロデューサーさんとみのりさんに深く頭を下げた。




    まだまだ大人になった実感は湧かないけど、それでも昨日までの自分とは少し意識が変わった気がする。


    明日からもまた頑張るぞ!


    そう誓いながら、大きな花束を抱えて帰路に着いた。










    スイートピーの花言葉は "門出"
    フリージアの花言葉は "友情"
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