「清澄、お風呂上がったよ」
タオルを肩にかけた木村さんが自室に現れる。
今日は木村さんが私の家に初めてお泊りをする日。
お貸しした浴衣を着た木村さんは、普段と違って見慣れない姿でなんだかそわそわしてしまう。
不器用に結ばれた帯、やや開き気味の襟もなんだか愛おしく感じてしまう。
「これ清澄の浴衣だよね?借りちゃってよかったの?」
「はい、私はいくつも持っておりますので」
顔を火照らせた彼はそのまま胡座をかいて私の前に座った。
「清澄の家の風呂すっごかったなー!広いし旅館みたいだった」
「ただ少し大きいだけですよ」
興奮気味に話す木村さんに思わずふふ、と笑みが溢れる。
初めて家に案内する人は皆、お風呂に驚くものだ。
「それではわたしも入浴してまいりますので少々お待ち下さいね」
浴衣とタオルと一式を持ってすっと立ち上がる。
「うん、いってらっしゃい!」
木村さんの元気な返事を背に風呂場へと向かう。
このときは、自分の入浴後に彼があんなことになるとはお互いに想像もしていなかったのである…
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