「…これでいいでしょうか?」
ごそごそと音が鳴り、スマートフォンの画面が揺れる。
真っ暗だった画面に光が灯り、見慣れた和室が写った。
「いま外カメラになってるから、インカメラにできない?そう、このボタンを押して…」
「は、はい」
ぱっと画面が切り替わり、画面に清澄の顔が写った。
「よし、これで大丈夫」
「ありがとうございます、ビデオ通話というのは初めてなので…えっと、見えていますか?」
「見えてるよ!」
俺の画面には清澄がいっぱいに写っていて、端に小さく俺の顔も写っている。
「清澄、最近の調子はどう?」
「私の方は変わらず過ごしていますよ。お陰様でユニットでのお仕事を多く頂いています」
「俺も。最近はFRAMEでの撮影とか多くてさ!」
ありがたいことにお互い仕事が多く、清澄となかなか会えない日々が続いていた。
そこで俺は、普段のLINKでのやり取りだけじゃなくてビデオ通話を提案した。
本当はちょっとでも時間を作って直接会いたいんだけど…なかなかオフも重ならないのが事実。
なにより清澄の顔が見たくて、さ。
仕事の最中にあった小さな出来事やユニットメンバーの話、身の回りであったこと、いくらでも話は弾んでついつい通話時間が長くなってしまう。
「木村さん、私はそろそろお風呂に入らなければならないので…」
「あっ、もうこんな時間か!そろそろ終わりにしようか」
「はい。今日はありがとうございました。ビデオ通話、とても楽しかったです」
「俺も楽しかった!付き合ってくれてありがとうね!」
それじゃあ切ろうか、バイバイ!
そう言ってカメラに向かって手を振る。
通話終了のボタンを押そうとした瞬間、清澄がはにかんで小さく手を振った。
は!?
可愛すぎでは!?
画面に写った破壊的な可愛さに激しく動揺する。
しかし、画面はそのままぷつんと切れてしまった。
え…?
今のは一体…?
通話の切れたスマホを片手に、俺はぼんやりと天井を眺めることしかできなかった。
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