正直に言うけど、下心があったわけじゃないんだ!
興味というか、見たい気持ちが強かっただけで…!
もごもご口を動かすもはっきりとした言葉を紡ぐことはなく、俺の言い訳は相手に伝わることはなかった。
「まさか木村さんにこのような趣味がおありだったとは…」
「待って待って!違うから!いや違くないけど!」
必死に伝えようとするも墓穴を掘っていくばかりでどうにもならない。
清澄は己の身を包む布量の多い白いフリルのエプロンと、黒くて丈の長いワンピースを広げてみせた。
ことの発端は清澄が俺の部屋を訪ねてきたことだった。
今日清澄がうちに来るのはもともと予定していたわけではなくて、急に決まったことだったから俺は部屋をそこまできちんと片付けられていなかった。
でも人を招けないほど乱れてるわけでもないし、清澄に断りを入れてそのまま上がってもらうことにした。
「俺、お茶入れてくるよ、ちょっと待ってて」
たしかペットボトルのお茶ならあったはず。
そういって清澄をひとり部屋に残して俺はリビングに向かっていった。
事件が起きたのはその後だ。
お茶とコップを持って部屋に戻ると、清澄がある袋をもって固まっていた。
それは、パッケージに仮装した女性が描かれた、メイド服だった。
「違うんだ清澄、誤解だ!」
「どうしてこのようなものがお部屋にあるんです?」
「じ、実は…」
しどろもどろになりながら俺は清澄に経緯を説明する。
「このあいだ鷹城と喋る機会があって、コスプレの話になったんだよ。こんなの着てほしいみたいなのあるか?って。そんな話で盛り上がっちゃって、その流れで…つい…」
「なるほど、そういうことでしたか」
清澄は俺の言葉に納得したようだ。
ゆっくりと目の前に正座する。
袴で慣れているせいか、スカートの扱いも様になっていた。
「木村さんは、私にメイド服を着てほしかったんですね」
「あ!いや!そうじゃないんだけど!いや!そうなんだけど!」
相変わらずテンパる俺に、清澄は口元を隠して笑っている。
「木村さんに見ていただけなければ、折角勇気を出して着たのが無意味になってしまいますが」
「いや、うん!すごく似合ってるよ…とっても、可愛い」
深緑の髪に白いフリルのヘッドドレスがよく映えている。
清澄は背が高いから立っと結構存在感あるけど、こうして座っていればそんなことも気にならない。
メイド姿の恋人は文句なしに可愛かった。
「メイドさんなら、ご奉仕しなければなりませんね」
清澄はそう言って、小首を傾げて微笑んだ。
ご奉仕…!?
俺の頭の中は一気に妄想でいっぱいになってしまった。
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