「あ、」
それは脱衣所で肌着を脱いだときだった。
俺は白い半袖の肌着の一箇所に血のような茶黒い小さな染みがついていたことに気がついた。
いつの間に怪我したかな?それともまた知らない間にやっちゃった?
自問自答しながら肌着を広げてみる。
すると、その染みは背中の肩甲骨の下のあたりに付いているということがわかった。
いくら俺でも普通に生活していてこんなところ怪我するわけがない。
だとしたら思い当たるのはただひとつ。
昨晩の情事で清澄がつけた爪痕だ。
身体中を襲う快感から逃れるため無意識に伸ばされた両腕、ぎゅっと込められた指先が生み出した小さな傷。
直接は見えないけど、今俺の背中には恋人が残した跡が付いている。
そう思うとこの血痕すら愛おしくて、汚れすら落としたくなくなってしまう。
早く洗わないと落ちなくなっちゃうぞ。頭ではわかっていてもどうしても勿体なくて、俺は小さな血の染みを指の腹で撫でた。
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