bar tigerへようこそ 薄暗い路地の突き当りに、ネオンサインの看板がきらめく店がある。
【bar tiger】
黄色く発光する虎の顔面。その真下の扉を開いて更に進むと、数席のカウンターしかない小さなバーが現れる。
「いらっしゃい」
カウンターでグラスを磨いているのは頭部に虎の頭の被り物をした、奇妙なバーテンダー。
首から下はシャツにベストを着た人間なので、恐らく被り物だと思う。
カウンターの左端には先客がいる。
恐らく、前に来た時も会ったことがある奴だ。
そいつから二つ離れた席に座ると、バーテンダーが話しかけてきた。
「しばらくぶりですね。あれから如何ですか? 新生活の方は」
「ああ。まあなんとかやっていけてるよ」
「それはなにより」
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