Lacrimosa箱から手慣れた動作で煙草を一本取り出す。
口に咥えてライターに火をつけた。
よく知っている銘柄だ。記憶の中で、いつも吸っていたもの。
火をつけて吸い込んで、煙を勢いよく吐き出した。
「うぇっ、まっず」
そう言い捨てて咳き込む。
百害あって一利無し。
一体どうしてこんなものを死ぬほど吸っていたのか。不思議でたまらなかった。
いつかは理解出来ると思っていたのに。
ただ、匂いだけは落ち着くと感じた。
講演は盛大な拍手で締めくくられた。
スポットライトから身体を外し、ローは壇上から降りる。
本日の格好はシンプルなシャツにジャケットを着用と普段から考えれば随分と大人しいものだった。
それもそのはず。本日のローは海賊ではなく一医師としてこの場に来ているからだ。
20231