異形と盲平家の亡霊が聞こえてキャッキャッする2人。暗くなり犬王の父に蹴り落とされ打った所がズキズキと痛み出してきた。
「ウ…」
敏感な聴覚で逃さなかった友一は「どこか痛いのか?」と体を触る。
「大丈夫だ。ただの打ち身だ」
ヘラヘラと笑う犬王だが顰める友一。
「敏感に動き回るお前がそんなヘマするわけないだろう」
「たまにあるさ」
膨らんで硬い背中を触ると僅かに反応した。
「背中か?硬いところに余程じゃないと痛くはないだろ。嘘をつくなよ」
バレてしょんぼりする犬王。
「……悪かった」
「責めている訳では無い。打ち身の薬で塗ってやろう」
「あるのか」
「盲はたまにぶつかるこある。だから常に持ち歩いている。中にはわざとぶつかってきたり石を投げられたりとかな」
「酷いな」
「悪いことばかりじゃない。団子を多めにくれたり新しい道ができたと教えてくれたりなど。ほら、背中を向けろ」
「ふーん」
服を脱ぎ、硬い鱗が盛り上がっているのを現す。顔を晒して驚かせたことあっても顔以外は晒したことは無く友一だけだった。
「…ここか。誰に蹴り落とされたんだ?」
「……」
頭にある手をポリポリと掻き無言になる。
「なら、誰か蹴り落としたやつを聞き出してぶん殴る」
「やめろ。悪い人…ではないぞ」
「知っている人、ということは父か」
「なんで分かるんだ」
「人々からよく聞いている。醜いのを虐めていると」
「俺が勝手にやった事だ」
「何故、庇う?」
「…親だからだ」
微妙な空気になる。薬を塗る音が聞こえる。
「……俺は醜いからといって愛せず虐めるのは親では無いと思っている」
「……」
「今すぐ俺が引き取って可愛がってやりたい」
「……」
「犬王?どうした、俺も嫌なのか?」
「…嫌いじゃない。だが…こんな言葉が初めてでなんて返せばいいのかわからん…」
もじもじする犬王にフッと笑う友一。しかし友一の裏は犬王の父をいつかぶん殴ってやる…!と燃えていた。犬王が止めなかったら今すぐ駆けて「よくも犬王を」と杖やら琵琶などぶん殴っただろう。
そんな恐ろしいことを知らない犬王は「俺がもっともっと舞い、異形であったからこそ誇りを持って認めれるようになれば、いつか仲良しになれるさ」と言いながら右手を限界まで伸ばす。
「…そうだな」
いつも犬王は純粋だ。眩しいほどに輝いている。出会ったあの時と変わっていない。
硬い鱗で盛り上がった背中を優しく撫でる。
「それに俺は友一がいるぞ!!だろ!」
「あはっ!俺も犬王がいる!!」
輝く夜空に笑い合う2人。