いつもの崖とカブトムシ友一はいつものようにあの崖へ登ったら犬王が倒れていた。いつもの気配が弱っていて周りにいる動物たちが悲しそうに鳴いていた。
友一は慌てて手探りで犬王へ駆け寄り掴んで揺する。
「どうした!?大丈夫か!どうしたら!」
オロオロする友一の手を力なく掴む犬王が。
「だ、大丈夫だ…聞きすぎて…」
掠れた声。
「え?」
「いっぱい…平家の話を…頭の中が…爆発した…だけだ……ちょっ待って…確かに全部聞くと言ったが…待ってくれ……」
犬王は平家の霊を聞いていたのだが千以上も居て、そのうえに出来事の順番がバラバラなため頭が整理しきれなくなったのだ。
「……ハッハッハ」
「おい…」
平家の霊がせわしなく飛び回り犬王に話を聞かせようと押し合いしていた。
「意外と真面目で面白くて」
「どこ行っても寝る時も話しかけてくるんだぞ…整理する時間が欲しい…鯨…カブトムシ…手…重盛…」
「!そうだ、カブトムシいい!」
「」
唐突にパンッと手合わせした友一に疑問を持つ犬王。
「そのカブトムシを印にしよう!!イカしてると思わない?」
「……それ、いいな…」
倒れたままの犬王は呑気だなあと思った。
「よし!さっそく作りに行ってくる!」
「えっ…お、おい待て…」
盲とは思えないほどダダーッと駆け下りていった友一。ほっとかれた犬王は溜息をついたが笑った。
🐶🐟