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    so_fte7

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    ※ヌメ後※

    フォトンモード酷使のせいで記憶削げ落ちていくカ+ミザの話

    #ミザカイ

    Meteor 夕下がりの部屋の中で私の頬を指の背で撫でるこの男はきっと覚えてはいない。
    昔はこうして触れるなど馬鹿馬鹿しいとか、お前とオレの関係では有り得ないだろうとか、一言加えて小馬鹿にした挙句に更に悪態を上乗せしてくる傲慢さが嫌に焼き付いてる程だ。
    思い出すだけで胃の底がムカついてくる筈なのに、今ではその感覚でさえ思いだそうとしても出来なくてミザエルが苦し気に顔を歪める度に、目の前に座るカイトはそうしてきた。
    何故、そう触ると一度問いかけたことがあったが、暫く言葉を選ぶように自身を眺めてくるカイトの瞳には嘗てのような煌々とした色はない。

     ――違う。
     貴様の瞳はそんな、迷いを宿した光ではなかっただろうと、例え私が叫んで教え込んでもきっと明日には彼は忘れている。
    天城カイトは、フォトンモードの酷使によりその双眸より光を失いかけており、そして記憶は剥がれ落ち、酷い時にはミザエルの名と顔さえも覚えていない。
    始めは何かの冗談かと、怒り任せに怒鳴りつけた時、カイトは「どうしてオレを知っている」と、吐き捨てたのだ。


    「……カイト、その触り方は辞めろと"頼んだ"筈だろう」


     細く零されたミザエルの言葉を掬い上げるのは、とうに日が暮れた部屋の空気だけ。
    最早この言葉はカイトへの頼みなのか、ミザエル自身による現実を否定する為の願いなのかも定かではない。
    境界は簡単に曖昧と成ってしまう。溶け込んだ日常を虫食む闇など、我々の足元に常に在ったというのにそれを忘れてしまっていただけだった。


    「そうだったか、……すまない」

    「いや。カイトがそうしたいならば、私は構わん。――だからそう簡単に己を卑下するな」


     きっと声には憤りが詰まってしまっていただろう。
    目の前のカイトが申し訳なさそうに眉を下げるものだから、ああ、またやってしまったとミザエルも気が下がってしまう。
     しかし、こうも向かい合う度にどうして此奴でなければならなかったのだろうと。
    堂々を通り越して毅然と尊厳と緩慢を練り上げたような、鏡のような存在であった天城カイトという決闘者の光は失われかけている。
    覚えているのは周囲の者達だけで、カイトから剥がれていく其の彼は一体何処へ旅立とうとしているのか。
    掬い上げようとしても零れゆく星々の煌めきのようでいて、実際は埋め合わせに足る存在などこの世界の何処にも無い、たった一人の旅路の導を奪うのは一体誰なのだと。
     天城カイトがナンバーズを集める為に罪なき人々の魂を奪っていたことは、ヌメロンコードにより再び生を受け人として生きる時間を得た頃にようやく知った。
    しかし、それを知ったといえ、私も嘗てバリアンとしての行いを考えれば、可笑しい言葉かもしれないが"私個人としてはどうでもよかった"。
    この男が理由もなく意味もなく起こす行動など有りはしないと、ミザエルの中で確固たる信頼と半ば崇高にも似た憧れを彼の名と共に讃えていたからだ。

     無くした時をかき集めるよりも、世界を欺いてまでカイトを失ってはならないと。

     カイトが指の背で撫でる癖があったのは、オレの手は穢れていると零したのを聞いたことがあった。
    だが、それでもかまわなかったのに頑なに記憶としては忘れているくせに、身体では、恐らく魂の根底では覚えているのだろう。
    こういう男であったと思い返すようにカイトの浮ついた手を取り、自らの頬に手の平を当てさせミザエルはその体温を感じるように双眸を閉じる。


    「カイト、私は貴様で傷ついても良い。そうやって誰かに示せ。……貴様が忘れるなら、私が思い出させてやる」

     
     願いと同等の呪いを吐いている。記憶が剥がれ落ち、身を削がれる思いを一番感じている相手に何と惨い言葉を投げているんだろうと。
    それでもカイトが失うならば、私だけでも覚えていなければと。カイトを守るためというよりも半ばこれは、縋っているだけなのかもしれない。
    私を肯定しそれでいいと言ってくれたあの時の言葉を彼に還そうとしても、決してそのままそっくり返せなどしないというのに。
     象る想いなど塗り替えられてしまえばただの屍になると知っているのに諦めきれないのは、嘗て向けられた魂までをも燃やすあの"天城カイト"の言葉をまた、聴きたいという欲。


    「――違う。私の言葉にはしたくない……だが、もう、どういった声なのかも……もう一度教えろ天城カイト……ッ」


     あの時とは違う涙が頬を濡らしても、カイトは言葉を瞑りただ静かにミザエルの頬を撫でる。
    その温度を感じる度に、お前が言った約束を守れないのだと思い知り、カイトのやさしくも悲しい手を握ることしかできなかった。


     カイト。
     ホットチョコレート、以前より上手く作れるようになったから、また二人で飲もう。
    貴様は、まだまだだなと笑ってくれ。


    (2022/01/15)
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