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    ak0cc0_dct

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    ak0cc0_dct

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    turn off day /// 演目二次(怪盗コンビ)

    呼び鈴は使わず、ノックを3回。
    開かれた扉から顔をだした男の頬にはガーゼが貼られていて、眉あたりには斬られた跡も見える。思わずゴーストを見たかのように一歩後ずさってしまった。自然と長いため息が出る。
    「アンタ……またか」

    俺の相棒は、つくづく女運が悪い。
    良縁をわざと選んでいないようにさえ見える。
    それならいっそ説明がつきそうなものだが、口を開けば大体こいつの言動が原因なのでいつからか取り合うのをやめた。
    扉を閉めていると「そういう君は昨晩お楽しみだったようで」と声がかかる。
    「フッ、そうだな。一晩中離してもらえなかったよ」
    石の床を歩み、リビングのソファに腰かけた彼へとディスクを渡す。
    今時のコンピュータでは読み込めないだろう形状をした薄いカード型のそれも、この部屋にある機器では読み取れる。扱うデータが軽いならば物理的な工作もまたひとつの策と言えた。
    昨晩していたランデヴー――相手は無機物、次のターゲットの建物にある防犯ビデオのログなので温もりのひとつもない――の成果は、カルヴァンの親指と人差し指の間でひらひらと動く。
    「見ないのか?」
    「うーん、今日はよそうかな」
    「なんだと」
    「それよりも酒を飲もう。今日はね、しごとの気分じゃないんだ」
    今の時間なら通りのパン屋でちょうど焼きたてのバケットを売り出すし、デリも夕方のかきいれ時に向けて新鮮なものが手に入る。と、人差し指を上に向けて語るあいつの目に光がない。
    この凄まじいオンとオフの差に毎回頭痛がたえないわけだが、女運の件と同じく言うことはやめた。
    「後で払ってくれよ」
    「もちろん」
    彼が酒を許すのは、この場所がまだ誰にも突き止められていない証拠だ。
    ひとときの安らぎでもあるそれを受けるべく扉へと向かう。と、そうだ、と小さな声が飛んだ。
    「パン屋には先に向かってくれ」
    「……ああ、わかった」



    「お前の狙いはこれか」
    「私がわざわざ出向くのは得策じゃないからね」
    そういう時こそ君の出番だろう?
    いけしゃあしゃあと得意気に語るあいつの手には、俺が渡した時代錯誤のディスクと真反対の小さなメモリカード。指の太さと同じそれは、パン屋に並ぶ最中に通りを駆け抜ける人物からサッと渡されるに至った。目深に被った帽子からちらりと見えた瞳と流れる金の髪に舌を打つ。
    「アンタもアンタなら、あいつもあいつだな」
    そんなところで結託していたなんて聞いてない。
    仲がいいやら悪いやら。今世紀最大でもなんでもいいが、怪盗とスパイが仲良く喧嘩をする国なんて古今東西ここぐらいにしてほしかった。
    「彼も君に会いたがっていたからね。何か言っていたかい?」
    「何も?」
    「くく、そうか」
    相変わらず素直じゃない子だね、とどこか遠くを見つめる姿にこれ以上の会話は無用とワインの栓を開けた。
    「仕事はしないんだろう?」
    「ああ、二言はない」
    深い赤を注いだグラスを掲げながら、今日ばかりはこいつのオフに付き合ってやろうと決めた。

    ===
    サミュエルにアンタって言わせたかっただけです。

    女運が悪いカルヴァンの設定は大昔に書いたオチが蒼まどの話がもとです。
    私の書く世界線はわりとスパイ(ミレール(as響也))が出張ってくるんですけど、公式でもカルヴァンとコンビ組んでた設定がある以上今後があれば結構出張ってきた筈じゃないかと思いダンダンダダンダン(地団駄を踏む音)

    久しぶりに書いたら楽しかった!
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