Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    のくたの諸々倉庫

    推しカプはいいぞ。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 57

    世界5分前仮説/共生鍾タルのネタをお借りしました。

    #鍾タル
    zhongchi

    「ねえ、先生。今いるこの世界が5分前にできたものだ、っていう仮説、知ってる?」
     言われて少し考え込んだ。問われた言葉の意味が分からない、というより──その問いから後、彼が何を言いたいのかがよく分からない。
    「聞いたことはある。この世界は5分前につくられたものであり、今俺たちが持っている記憶などは全て、創造主による捏造なのだ、という話だろう」
    「そうそう。もしそうだったらすごいなと思ってさ、だって世界は広いんだよ? あちこちで矛盾が出ないように、それでいて複雑に絡み合った『設定』の上……俺たちは今、こうやって息をしてる」
     言いながら、彼の指が伸びた。首の輪をついと撫ぜ、岩元素のマークを通り、その服の下、彼を生かす力の核へと。そうして「ね、不思議でしょ」なんて。
    「先生は6000年の時を生きたカミサマでさ、俺はそんな先生と一緒に生きてる元人間。そんな設定のもと、たった5分前に俺たちがこの地に足をつけたっていうなら……こんなにおかしなことはないなって」
    「どうして、おかしいんだ」
    「俺はね先生、生かしてくれたことに感謝してる。ずっと一緒に生きられるなら、他の何と別れることになってもいい、というよりは……うん、なんて言えばいいかな。
     お別れは、悲しかったよ。だってある意味では、先生より大事な人たちだったから。けどそれが全部、誰かが気まぐれに考えたものだったとしたらさ。
     ちょっと、悲しいよね。なんて業深いことだとも思うよ」
     そうして光のない目が細められる。そんな可能性、考えたくもなかったよ、と。
    「……俺は、公子殿と共に生きることができてとても、嬉しい」
    「うん、先生はそう言うと思った」
    「最後まで聞け。
     ……そうだな、離別を承知で俺の手を取り、今こうして隣にいてくれるお前を愛している」
    「ありがとう、先生」
    「……それでも時折考える。戦うことが好きなお前から、片目を隠すために距離感を奪った。見た目が変わらないことで定期的に引っ越さねばならない不便だってある。それでもどうして、お前が俺から離れないのか……否、考えることを放棄して死を選ぶことが、どれだけ楽か既に知っているお前が、どうしてそれをしないのか。ずっと、不安だった」
     触れた頬には傷ひとつなく、今もなめらかな手触りがそこにある。望んだのは、俺だけだったのかもしれないとどこかで思っていた。
    「だが……その離別をどれほど悲しんでも、お前は俺の隣にいてくれる。それがとても、嬉しい」
    「……ばかだなあ、先生は。こんなに長いこと一緒にいる理由、まだ分からなかったの」
     彼が別れを悲しむほど、きっと人間という存在からは遠ざかっていく。それを望んだのは俺だ。だってずっと、お別れはつらかった。
    「……はは、そうだな。俺にはまだ早い話だったようだ」
    「いったい何年生きたら適正年齢になるのさ、もういっそのこと1万年目指しちゃう?」
    「それもいいな、公子殿がいるなら」
    「もう『公子』じゃないけどね」
    「なら、アヤックス」
    「なあに?」
     ……かなわないな。
    「愛しているよ」
    「はは、いつからさ」
    「決まっているだろう。
     お前が俺に、初めて笑みを向けた時からだ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏😍💓💓❤❤❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    hiwanoura

    PROGRESS怪しいお店をしている先生とアルバイトのタルによる、怪異巻き込まれ現パロ。略して怪異パロ。途中までです……
    ※微グロ?
    ※微ホラー?
    怪異に好かれまくるタル怪異パロ


    其れは、気が付いたらそこにいた。
    瞬きをした瞬間、伏せていた視線を上げた瞬間、横を向いた瞬間……そんなふとした瞬間に、視界の端に現れ始めた黒い影。なにかいたな?とそちらを向いても、そこには何もおらず。気のせいか……それとも疲れているのか、と、すぐに興味はなくなってしまうのだけれど、しかし。少しするとまたその影は視界の端に居るのだ。見ようとすると見ることの敵わない何か。正直、気にはなるが、まぁ邪魔なものでもないし生活の妨げにもならないので放っておこうと思っていたのだが……数日が過ぎ、影が居ることに慣れ始めた頃。ふと、其れが視界を占める割合が以前より大きくなってきていることに気がついた。ゆっくりと、しかし確実に。影が、近付いて来ている……そう理解すると、今度はなぜか周囲に火元もないのに焦げ臭さを感じるようになった。普段生活している時にはそんなもの感じないのに、決まって影が見えた時には何かが焼けた臭いが鼻をつく。ただの枯葉や紙なんかを燃やしたような焦げ臭さでは無い。鼻の奥にまとわりつくような不快な臭いと、刺激臭とが混ざりあったようなそんな焦げ臭さ、と。そこまで考えて気がついてしまった。あぁこれは、人が焼けた時の臭いだと。なるほど、この背後に居るこいつはただ真っ黒な影かと思っていたが、焼死体だったらしい。皮膚が黒く炭化してしまうほどに焼かれた、人だったものだ。未だにこうして彷徨っているということは、ひょっとしたらまだ死んだことに気がついてはいない……つまりは、生きたまま焼かれたのかもしれない、と。その何者かも分からないなにかにほんのわずかに憐れみを感じていると、また周囲でおかしな事が起き始めた。手を洗おうと捻った水道から真っ赤な水が流れでて止まらなくなったり、歩いていたら目の前にベシャリ、と何か生き物の皮を剥ぎ取ってぐちゃぐちゃに潰して丸めたような物が落ちてきたり、壁に爪が剥がれるまで引っ掻いたような傷が無数に着いていたり、細い隙間に血走った目が大量に……それこそ隙間なく詰め込まれていたり。十分置きに知らない番号からかかってくる電話をとると『死死死死死死、ね、呪われろ死死死』と絶叫されるか、謎のお経を聞かされるし、学校に置いてある上履きに溢れんばかりの爪が、まだ肉片も血もついたような状態で入っていた時には流石にどう処分するか困ったものだった。鏡に映る己
    6769