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    のくたの諸々倉庫

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    ディルガイワンドロライお題「猫」「雪」

    #ディルガイ
    luckae

    猫はその命が尽きる時、近しい人間の前から姿を消すと聞いた。
    「……なんだなんだ、今日は随分と甘えたさんだなあ」
     朝起きてすぐ、探ったシーツは冷え切っていて──その事実に眉をひそめるよりも早く、ココアを手にやって来た彼を強く抱きしめる。
    「ほら、こぼれちまうからちょっと離せって。
     ……はは、ほんとにどうしたんだよ」
     今でこそ恋人なんて関係に落ち着いてはいるが、今までにあったことを思うたび、ガイアというこの男は脆く危うい存在だということを再認識する。今日だってしっかりと抱きしめて寝たはずだというのに、本当にいつ抜け出したというのか。
    「君が僕なしでは、死ねないようになればいいのにと思っていた」
    「……そこは『生きられないように』って言うもんじゃないのか?」
    「君がそれを望むのならするが」
    「真顔で言うなよ……」
     はあ、と彼がため息ひとつ。窓の外に雪が積もるほどの気温ゆえか、ほんの数秒空中へと残ったそれすら惜しいと思った。
    「……手放したくないんだ」
    「俺は逃げないさ」
    「信用ならない」
    「即答かよ……なんなら首輪でも付けるか?」
    「僕の趣味を疑われるようなことはしたくない」
    「わがままだなあお前……」
     ああ、またやってしまった。いつか聞いた話にはまだ続きがあって、自らの死期を安心できる場所で過ごしたい、と思うからこそ猫は姿を消すらしく──そこで徐々に身体機能を失い、動けなくなったまま死ぬのだ、と。
     つまりは人間のそばにいることが何より安全だと思わせるか、それこそ閉じ込めて家から出さないようにでもしない限り、彼らは姿を消してしまうのだろう。後者を実行するだけの力はきっと僕にはない。となれば前者……とまで考えて、それもまた不可能であるだろうことも理解してしまったのだ。
    「……僕には、君をつなぎ止めておけるだけの力はない」
    「そうなのか?」
    「少なくとも僕は、そう思っている」
     しばしの静寂。彼が近くの棚にカップを置いた。そうして僕の頭を撫でて、「いつものお前はどうしたんだよ」なんて。
    「……別にいいだろう、僕は好いた相手の前で……自分を取り繕うことはもうやめる」
     だから、といくら抱きしめたところで、彼はいつか僕の前から消えてしまうのだろう。僕の隣にいることが何よりも幸福だと、彼がそう思っていればどんなによかっただろうか。
    「好きだよ、ガイア」
     僕がこんなにも愛おしく思う相手なんて、君以外には誰もいないというのに。
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