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    のくたの諸々倉庫

    推しカプはいいぞ。

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    その手を取るために必要なこと/類司
    前に書いてたものその1です。支部に上げる予定は今のところないのでここに。

    #類司
    Ruikasa

     好きだ、と。
     震える声で告げた瞬間、類は大きく目を見開いた。
    「……君が、僕のことを?」
     小さく頷く。屋上は夕暮れの色に染まり、風も冷たくなり始めている。きっと今大声で歌ったら、遠くまで響くのだろうな──と。玉砕覚悟の告白故か、オレの思考はいつも以上に平静なもので。
     けれど見つめた類の表情は、案の定明るいものではない。まあそうだよな、というか告白なんかした時点で冷静じゃなかったか、などと頭を抱えかけたとき。
    「やり直し」
    「……は?」
     心の底から、意味が分からなかった。
     こいつの思考回路を理解できないのはいつものことだが、まさか告白の返事より先にダメ出しをくらうとは。けれどそんなオレをよそに、口元に手を当てて考え込んだ類はただ、「もう一度、言ってみせてよ」と。
    「なん、でだ」
    「そうだね、うまく伝わらなかった……というのが主な理由かな。思わずその対象を、僕かと訊いてしまうほどには」
    「ばっ……今ここにいるのは、オレとお前だけだろうが……!」
    「分からないよ、僕の頭上をカラスが飛んでいたくらいだ。それにこう見えて僕は臆病でね、君の『好き』と僕の『好き』が食い違っていたらと思うと怖いんだ。
     ……だからほら、演者らしくさ。伝えてみせてよ、僕のことが『好き』なんだろう?」
     言って微笑む表情も、穏やかな声色も全て、まるで作りもののように美しいというのに、なんだその無理難題は。呆然とするオレに小さく首を傾げ、「言わないなら帰るよ」と告げる類の目は本気だった。
    「……お、おお神代類よ、お前はどうして神代類なんだ……!」
    「オリジナリティーがないね、やり直し」
    「お前のことは……そ、その、初めて姿を見た時から」
    「容姿だけ褒められても嬉しくないなあ」
     なんだこいつ。いやほんとなんなんだこいつ。
     もはや怒ればいいのか呆れればいいのかすら分からず、震えるオレに対して、彼は涼しい顔のままで。ああ脈なしか、オレはただ遊ばれているだけなのかもしれない、と。
     胸中で黒い塊が、吐き気を伴って潰れるのが分かった。
    「……お前は、オレにどうしてほしいんだ……?」
     顔を見ていることすらつらい。うつむいたオレに吹き付ける風は冷たかった。けれどここで、無様に逃げ帰ることだけはしたくない。
    「……僕はね、君が本気かどうかを知りたいだけだよ」
    「……っ!」
     平らな声。思わず拳を固めた。けれどそれが向かう先は彼ではなく──
     鈍い音。まさかオレが、自分自身を殴るとはさすがに思っていなかっただろう。顔を上げ、驚いた様子の類を見やる。
    「そうか、なら……全力で、伝えてやる」
     言って、オレは彼へと歩み寄った。自分で殴りつけた頬がひどく痛むけれど、それは決意の一撃だ。彼の手を取り、痛む頬へと触れさせる。
    「オレだって、演じる以上知らないわけじゃない」
     類の瞳はブレなかった。まっすぐ互いを見つめたまま、オレは溢れる想いのままに──その言葉を口にする。
    「感情というものは、言葉として形にした途端に価値が大きく下がるものだ。例えばオレが舞台上で、誰かに愛を囁く言葉と……お前への想いを伝えたいがために告げる言葉が、同じものであることだってあるだろう。感情を伴わず、口にすることだけなら誰にだってできるからな」
     それでも、と。彼の手にそっと擦り寄った。体温が伝わる。オレも彼も、ここに生きているという証。
    「ありふれた言葉というものを選ぶ時、そこには色々な理由があるだろう。ただ遊びたいだけで言うとか、それ以上のことが何も思い浮かばないほど必死だとか。それでも共通の言語というものがある以上、オレたちが選べる言葉というのは限られてくる。
     だからあえて、オレはシンプルに『好きだ』と言おう。そこに万感の思いをのせて、けれどあえて添える言葉があるとするなら……」
     息を吸う。肺の底に落ちる空気が、思考をどこまでも澄んだものにしてくれた。
    「オレが負う痛みに寄り添い、癒してくれるのはお前がいい。そして同時に、お前が負うかもしれない傷を受けるのは全て、オレがいいんだ」
     ──その瞬間だけは、世界の全てがこの場所から隔絶されていたような錯覚。そうして数秒見つめ合い、先に静寂を破ったのは類だった。
    「……今君が痛みを負った理由は、自分で傷つけたからだけどね」
    「う、うるさい! それで答えはどう──」
     それ以上を口にする前に、伸びてきた腕に引き寄せられる。そうして彼に抱きしめられて、オレは一気に心拍数が上がるのを感じた。
    「ありがとう、司くん」
     彼の顔は見えない。けれど何より雄弁に、彼の声色が全てを語っている。
    「充分すぎるほど、伝わったよ。僕も君のことが好きだ」
    「……類……!」
    「意地悪なことをしてすまないね。まさかこんなにも、君が僕を想ってくれていたなんて」
     顔が見たくてもがけば、予想以上にあっさりと解放される。そうして見つめた類はどこまでも、綺麗に笑っていた。
    「これから、よろしくね」
    「……ああ、よろしくな」



     ──その告白が風に乗って、後々知り合いにからかわれまくるのはまた、別の話。
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    タイトルは未定です!!!

    サンプル6P+R18シーン4P

    冒頭導入部とエッチシーン抜粋です🫡❣️

    あらすじ▼
    類のガレージにてショーの打合せをしていた2人。
    打合せ後休憩しようとしたところに、自身で発明した🌟の中を再現したというお○ほを見つけてしまった🌟。
    自分がいるのに玩具などを使おうとしていた🎈にふつふつと嫉妬した🌟は検証と称して………

    毎度の事ながら本編8割えろいことしてます。
    サンプル内含め🎈🌟共に汚喘ぎや🎈が🌟にお○ほで攻められるといった表現なども含まれますので、いつもより🌟優位🎈よわよわ要素が強めになっております。
    苦手な方はご注意を。

    本編中は淫語もたくさんなので相変わらず何でも許せる方向けです。

    正式なお知らせ・お取り置きについてはまた開催日近づきましたら行います。

    pass
    18↑?
    yes/no

    余談
    今回体調不良もあり進捗が鈍かったのですが、無事にえちかわ🎈🌟を今回も仕上げました!!!
    色んな🌟の表情がかけてとても楽しかったです。

    大天才小粒まめさんとの合同誌、すごく恐れ多いのですがよろしくお願い致します!
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    おわり!
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    「ああ、見た目は俺そっくりだけどな。なんなら俺の生まれ変わりかもしれないが、記憶の引き継ぎに必要な『俺』は今ここにいる。
     つまりは姿形だけそっくりな他人だよ」
     白い部屋。僕が贈ったものだけが、色を持ってそこに佇むこの場所で──僕を見るガイアの目は、さも愉快そうに弧を描いた。
    「ちなみにな、お前今結構危うい状態にあるぞ。ここにいるほんの短い時間以外、前からずっと寝てなかったもんな」
    「……そんな、ことは」
    「あるんだよ、過労死しかけてもなお気付かないとか余程だぞ。
     それとも俺と、ここで一緒に楽しく暮らすか?」
     ──あるいはそれは、僕がそれを拒むのだろうという確信と共に放たれた言葉だったのかもしれない。
     それでもひどく、心は揺れた。彼と一緒に、ここで、永遠に。
    「……それも、いいかもしれないな」
    「っ……おいおい、どうしたんだよお前。そんなにお疲れだったのか」
    「言い出しておいて慌てるな……疲れているのは確かだが、君と過ごせるならそれも、悪くないと思っただけだ」
    「冗談だろ……そうなればお前、もう二度と目を覚ますことなく死ぬ 3518