「異本丸交流譚」初期プロット【概要】
匣入りソと連隊戦ソ=記憶喪失本丸のソ
早くに顕現→みつよに片想い中
温泉
八つ当たりが気まずい標ソ
標みつよと接触する情報部ソ
特務部典を警戒する匣&標典
【匣入り本丸】
露天に浸かるふたり(匣)
鄙びた温泉宿
初陣誉祝い
甘やかされていると思う
風呂上がりに廊下で標本丸のふたりと出会う
「あっ」
「……あ」
気まずい標ソ
「ここでまた会ったのも何かの縁だろ。俺、あんたと一度話してみたかったんだよな」
妬いたこと詫び
「……よう。隣、いいかい」
情報部ソ
「二振とも、兄弟と来てるんだろ? 実は俺もそうなんだけどさ」
遠目に手を振る、手を振り返す特務部みつよ
「初対面でいきなり言うのも何なんだが…。ちょいと聞きてえことがあって」
お前らどっちも兄弟と好い仲、だよな。そう声を潜めて問われた直後、向かいに座したソハヤが鼻から茶を噴いた。
「うわっ、すまん! そんな驚かせるつもりじゃ…。塵紙、使うか?」
口許を覆い盛大に咳き込むソハヤの背を、もう一振のソハヤがおろおろとした様子で撫でる。
「あんたも、兄弟と……?」
「寧ろ気付いてなかったのかよ…。鈍いぞ、お前」
「さっき、妬いたって聞いたから」
「……昔の話だ。それについては悪かったと思ってるよ」
「いや。……そう、か。良かったな。あんたの兄弟と、うまくいって」
「……」
ありがとな、と。俯き、小さく呟いた彼の耳は赤かった。
「で、本題なんだが。実は俺も、な。兄弟と懇ろな仲になりてえんだけど、これが中々うまくいかなくてよ…」
「差し支えないなけりゃ、俺に聞かせちゃくれねえかい。お前らの、兄弟との馴れ初めをさ。同じ刀のよしみだ、頼む。参考にしてえんだ」
「大丈夫だったか、兄弟」
「へ?」
「……さっき、他の本丸の兄弟たちと話してただろう」
「ああ。それが何だよ」
少々むっとした。他所の刀と少し話し込んだぐらいで、何故そこまで心配されなければいけないのか。
「後から来た方の兄弟が…。いや、その連れらしい大典太光世が、どうにもな」
気に掛かる、と。そう兄弟は言った。
「……お前は何も感じなかったか」
「別に。まあ、俺は鈍いからな」
「誰もそんなことは言ってないだろう」
「ちょっっ…、これ…!」
「ああ」
「何で! ダブルベッド!!」
本当はソを人前に出したくないみつよ
酔って甘えるソ
兄弟は、こんなところ来たくなかったか?
俺は楽しみにしてたんだけど…な
【光の標本丸】
宿に到着するふたり(標)
「おおー、いい雰囲気の宿じゃねえか!」
部屋に入って檜風呂にはしゃいでいると押し倒されるソ
「夜は、外の露天行くんだからな…。ぜってー、痕付けんじゃねえぞ…」
「承知した」
長期任務の労いだと言われたが、ソハヤは当初まったく気が進まなかった。件の事件については、自分たち兄弟のいざこざに本丸の皆を巻き込む形になってしまったというのが実情だ。労われるべきは、近侍の山姥切国広をはじめ、政府との交渉を担ってくれた三日月宗近、記憶を失くした兄弟の護衛や討伐に奔走してくれた部隊のもの等であろうに。
本丸を出る前に山姥切にそのような話をしたところ、彼は困ったように眉を下げて言った。
「……どうしても、あんたたちに行ってもらわなきゃいけない事情があるんだ」
「これも任務、なのか?」
「いや…、任務ではないんだが……。理由は、今は言えない。すまない」
大典太を宜しく頼む、と。頭を下げた山姥切に、ソハヤはたじろぎつつも分かったと頷いた。ただでさえ散々に迷惑を掛けた彼を、この上さらに困らせることは本意ではない。それ以上の追求は諦めるより他になかった。
頼むという山姥切の言葉は気に掛かるところが、まあこうなった以上は仕方がない。折角の機会だ、存分にのんびりさせて貰うとしよう。
「あっ」
「……あ」
気まずい標ソ
自分と同じ名と顔と声をした相手にあまり使いたくない表現なのだが、甘え上手とでも言うのだろうか。どうにも放っておけない気持ちにさせられる刀だと思う。なるほど、これは確かにあちらの大典太は放っておかないだろう。
「……よう。隣、いいかい」
声を掛けてきたのは、三振目のソハヤノツルキだった。
「二振とも、兄弟と来てるんだろ? 実は俺もそうなんだけどさ」
お前らどっちも兄弟と好い仲、だよな。
鼻から茶を噴くという下品極まりない図を晒してしまったが、今回ばかりは致し方あるまい。
「俺が言うのも何だけどさ。あんた、兄弟のこと本気なんだろ。だったら、あんまり他で遊ばねえ方がいいぞ」
霊力で、分かる。そう言うと彼は一瞬動きを止めた後、瞼を伏せて薄く笑った。自嘲しているのだろうか。
「あんたの兄弟が同じは分からねえけど。少なくともうちの兄弟は、そういうの、すげえ気にする方だから」
「……知ってるよ。ご忠告、ありがとな」
絡まれて帰ってきたみつよ
「あいつ…!」
「落ち着け、兄弟。特に何かされた訳じゃ」
「されてんじゃねえかよ。こんなに霊力べったり付けられやがって…」
「ごめん、兄弟…。きっと俺が余計なこと言ったせいだ」
【政府三池】
「謀反の疑い有、か」
「ああ」
ブリーフィングルーム
薬研藤四郎
「大典太光世の記憶障害については事実らしい。ただ、事件を起こす原因となった物証を、故意に破壊して隠蔽した可能性があるんだと。俺っち個人としちゃ、特に事件性は感じねえ話なんだが」
ま、上からの命令なんでな。
「温泉旅行がてら、宜しくたのむ」
そう続けたのは、特務部の三日月宗近だ。
「温泉旅行ねえ。よくおびき出せたな」
「向こうさんも察してはいるだろうよ。分かってて乗ってきてるんなら、一筋縄じゃいかないかもしれねえな」
「だが、おぬしらならやれるだろう? 大典太は少々やり合いにくい相手かもしれんがな」
「……別に構わん。相手が誰だろうが、必要ならば斬るだけのことだ」
「頼もしい言葉だな。だが、あくまでも交戦は最後の手段だぞ」
「三日月の言う通りだ。不穏な動きを察知した場合は、まず連絡をくれ。そいつらだけ取り押さえても仕方がねえ。本丸そのものを摘発する必要があるんでな」
「了解した」
「それと、もう一件」
こちらはついでのようなものだが、と三日月は言う。
「以前より、経過観察を続けている本丸があってな」
「んじゃ、行くか。兄弟」
「……ああ。兄弟」
到着した温泉宿には、自分達以外に二組の三池が居た。ターゲットの霊力を辿ると、宿に併設された洒落た和風カフェへと行き着く。ソハヤは、店内のテーブルに大典太と向かい合って座る。
『……どうやら顔見知りらしいな』
『ああ。想定外だぜ』
場合によっては各ターゲットに接触しづらくなるかもしれない。幾つかのパターンを想定しつつ、テラス席で会話を交わすソハヤノツルキ二振と、少し離れた席でこちらは黙って並んで座している大典太光世二振を目視で確認、まずは各々に霊力で軽く探りを入れる。
「!」
思わぬ共通点を見出したソハヤは、これは使えそうだと口の端を上げた。ちょっと行ってくる、と腰を上げ、テラス席へと向かう。
「……よう。隣、いいかい」
事後風呂へ行った標みつよを帰りに引っ掛けるソ
「……おい、…ソハヤ」
「へえ」
ソハヤはにんまりと笑い、大典太の首に腕を回した。
そっか。俺はあんたの兄弟じゃねえもんなあ。
「いいねえ、新鮮で」
「……お前の目的は、何だ」
「目的、なあ。そんな大層なもんはねえけど。強いて言うなら、あんたみてえないい男を引っ掛けることかな」
大典太は、深く溜息を付いた。
「いい加減にしろ。こんなところ、誰かに見られたら…」
「誰かじゃなくて、あんたの可愛い兄弟に見られたら、だろ」
「……お前…」
「あー、悪かったよ。別に、本気であんたを寝取ろうなんて思っちゃいねえさ」
「……大体…、お前のところの大典太光世は、どうなんだ。見られて都合が悪いのは、お前だって――」
「俺は別に構わないぜ、兄弟に見られても」
「……本気か」
というか、彼は今もこの遣り取りを聞いている筈だ。あの部屋で、涼しい顔で。この程度では、彼の心を動かせはしない。
「あいつは、とっくに知ってるからな。俺がこういう奴で、色んな男と遊んでること」
「……」
少々苛めすぎたか。
こっちはあんた達の我儘に振り回されて余計な仕事を増やされてるんでな、と。八つ当たり気味にソハヤは思う。しかも、見せ付けるようにべったりと番の霊力を纏わり付かせて。一応こう見えて、こちらは真っ当な任務の真っ最中なのだ。しかし触れた箇所から流れ込む情報
これぐらいのおふざけは甘んじて受け入れて貰いたい。
「やりすぎじゃないのか、あれは。恨まれても知らんぞ」
それとも、まさか本当に酔ってるのか。
「酔える訳ねえだろ。あんたと同じで、酒と薬は耐性付加されてるからな、俺も」
「ああ、そうだったな」
「平気だよ。大抵の『兄弟』は優しいからな、『ソハヤノツルキ』には」
「そういえば。兄弟と懇ろになりたい、とか言っていたか」
大典太は、ゆっくりとこちらに近付く。
「……おい」
制御はしているが、不用意に触れるべきではない。距離を詰められたソハヤは、一歩下がった。そうすると大典太が、また一歩近付く。じわじわと巧妙に追い詰められ、ソハヤは壁に背を付け動きを止めた。壁に手を付き長い腕の間にソハヤを閉じ込めた大典太は、肘を曲げ顔を近付ける。吐息が顔に掛かり、ソハヤは俯いた。
「相変わらず、往生際が悪いな。お前は」
「……よく言う。あんただって、俺に見せたくないもの、沢山持ってる癖に」
「見てもいいと、前にも言った筈だがな。俺はいつでも本気だ」
いつでも誤魔化してばかりの、お前とは違ってな。
「……俺は…」
「……まあ、いい。強引に手に入れても、つまらんからな」
耳に吐息を吹きかけながら言われて、ぞくりと背筋が甘く痺れた。あっさり離れていった大典太を上目遣いにねめつけ、ソハヤは自らの腕を抱く。
※すげえ半端なとこで切れてますが、メモ段階ではここまでしか書いてなかったようです