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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第二十二回 お題:「発明」「ごく稀に俺」
    司視点 両想い
    ※イベント「スマイルオブドリーマー」のセリフネタバレが含まれます

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    バサリ

    「っと、落としてしまったか。んーと…これは何のノートだ?」


    ある日の休日。
    学校もショーもお休みとなったため、脚本を書くために貯めていた資料の整理をしていた。


    その時に落ちてしまった、1冊のノート。
    忘れやすい俺は使用用途を表紙に書く事が多いのだが、このノートだけは何も書かれていなかった。

    書き忘れか、あとで書こうとして忘れたか。どちらも同じか。
    そう思いながらパラパラと流し見し、漸く気付いた。


    「ああ、これ…あの時のノートか」

    あの時、というのは。
    初めて、セカイの皆も交えて、次にやるショーの内容を決めた時。
    意見を纏めるために、わざわざ卸たてのノートを持参していったのだ。


    なんだかんだ決まる前に例のえむの事件もあったりしたため、すっかり忘れていた。


    改めて書き殴ったようなノートの内容を見ながら、あの時のことを思い出す。



    なかなか内容が決まらなくて。というか全員これがやりたい!と譲らなくって。
    そんな中でえむの元気がないって教えてもらって。

    確か、そうだ。その日の帰りに、出会ったんだ。
    えむの、兄さん達に。


    それで、彼らの言ってることに対して反論して。それで。
    類も、彼らに…………………







    「…………んん??」


    思い出した記憶が、正しいような正しくないような。
    そんな違和感を感じて、首を傾げる。


    「……類って……一人称、俺だったっけか?」









    --------------------








    その日の夜。

    家に泊まりにくる一歌達と有意義な時間を過ごしてもらうために、類の家に泊まりに行っていた。

    明日も学校もショーもお休みだ。沢山ショーの話ができるだろう。
    …あと、まあ。したいこともできるだろうと、そう算段をつけていた。



    勝手知ったる類の家。とでも言えばいいのか。
    家に両親がいることが少ないし、類も類で機械を弄っている最中はできるだけ動きたくないという理由から、俺の類の家の鍵を手渡されていた。ちなみに両家共に許可をもらっている。それでいいのか類家。


    一応来たという合図でピンポンだけは鳴らしてから、鍵を使って類の家にお邪魔する。
    しっかり手洗いうがいを済ませてから、類の部屋にお邪魔した。




    「類、来たぞー……って、なんだこれは」
    「やあ司くん!待ってたよ!」

    ニッコニコの笑顔で振り向いた類の手には、沢山の管がついたヘルメットのようなものがあった。
    そしてその管の先には、プリンターのような機械が鎮座していた。


    「おい…どこからどう見てもショーとは関係なさそうな機械に見えるが」
    「そうだね。今回はショーとは関係ないよ。でも僕たちにはとても必要な機械なのさ!」
    「…??どういうことだ?」


    首を傾げるオレを尻目に、類はニッコニコで手に持ったヘルメットを俺に被せた。

    「百聞は一見にしかず、ってね。ちょっとそのまま大人しくしててね」
    「おい!?まず説明をしてから…っ!?」



    突如頭に走った電流に、思わず身体がビクンと反応する。
    痛みがない、というわけではないが想定していたものよりもずっと痛くはない。
    それが数秒ほど続いたのち、ガガガという音を立ててプリンターが動き始めた。


    「お疲れ様、司くん。一応電流の強さはなるべく調節したから大丈夫だとは思うけれど、痛くなかったかい?」
    「あ、ああ。思ってたよりは全然。それで結局、これは何なんだ?」
    「ふふ。これはね、」


    印刷された紙を手に取って、笑顔で答える。




    「記憶中枢を刺激して、そこに記憶されている会話を印刷する機械さ!」


    「…つまり、記憶している会話を印刷できる、ってことか?なんでこれが俺たちに必要なんだ…??」


    「それはほら、あれだよ。
    僕たちヤってる最中って、お互い気持ちよすぎて何て言ってたか全然覚えて「わーっ!わーっ!わかった!わかったからこれ以上はやめてくれ!」

    話を遮られて類はムスっとしていたが、俺にとってはとてつもなく恥ずかしいものだった。
    正直、最中で蕩けている時にしか言えないようなことなんて沢山あったし、それは類もそうだ。
    それで一回、次の日に言った言わなかったで口論になったことはあったが…まさか、類がそれを気にしていたとは。


    「あ、しっかり印刷されているね。ほら、ここなんて司くんの喘ぎ声が」
    「そんなもの読むな!!!没収!!!」
    「あー!!もう、酷いじゃないか司くん!」
    「酷いのはどっちだ!そんなことあんまり口に出すな恥ずかしい!!!」


    はー、と思わず頭を抱えてしまった。
    なんてものを作り出しているんだ………なんて思っていた、その時。




    その日の朝に疑問に思っていたことが、脳裏を過ぎった。





    「………あ」

    正直、記憶に自信がない。
    きっと本人に聞いてもはぐらかされそうだから、真相は闇の中だと思ってた。

    でも、この機械なら?


    「?司くん?」
    「…なあ類。この機械、日付や時間のしては可能なのか?」
    「え?……ああ、うん。時間単位にはなっちゃうけれど、可能だよ」
    「なら…えーと、○月○日の、○時頃で、できるか?」
    「んん…?うん、わかったよ」


    首を傾げながらも、カチカチと調整をする類。
    それを尻目に、俺は再度ヘルメットを被った。

    慣れない刺激が終わり、ヘルメットを外すと、そこには指定した通りの時間の内容が書かれていた。


    「それにしても…なんでそんな半端な時間を指定したんだい?時間的に練習はもう終わってると記憶しているけれど」
    「いや、この日は違うんだ。……ああ、やっぱりあっている」




    "アンタ達、誰?なんでえむに怒鳴ってんの?"
    "誰も何も、家族だ!誰だか知らないが、そっちこそ口を挟むな!"
    "家族…?"
    "では貴方方は…えむくんのお兄さん達ということですか?"





    「…!これ…確か、えむくんのお兄さんたちと初対面した…」
    「ああ。ちょうどその日に、次のショーの演目を決めようしていたからな。その時のメモが残ってた」
    「なるほど。だから正確にわかったんだね。……でも、なんでこの日のこの時間を…?」
    「それはちゃんと理由があるぞ。………あ、あった」


    手にした文章に、記憶は間違っていなかった。とほっと息を吐く。
    対して類は、まだ気づいていないようだ。

    俺の手にした紙に書かれた、内容に。



    "誰もがかなわないと手放した夢すら見続けることができる、そんな人物です。だから…"






    「んー…?そんな変なことは言っていない気がするけれど?確かにお兄さんたちに啖呵を切ったりはしたけどね。「僕たちの仲間を侮辱するのはやめて頂きたい」って」
    「類。違う」
    「違う?何が…」





    "これ以上、俺達の仲間を侮辱するのは、やめて頂きたい"

    だ」



    紙を見せながら、俺は類にしてやったりな顔をする。
    受け取った紙に目を通し……類は漸く、それに気付いた。






    「…………………」
    「まさか、類が自ら作った発明でこれを思い出せるとはなあ」
    「…………………」
    「類って、一人称が俺になる時もあるんだな」
    「いやうんごめんなさい記憶掘り返すのはやっぱり恥ずかしいね」

    まくし立てるように早口で言う類に、思わず笑みが溢れる。


    「…まあ、お互いの記憶を見るのはほどほどが一番、ってことだな」
    「そう、だね」
    「あ、でも類がごく稀に俺になるのは今後も記憶しておくか」
    「ちょ、なんでだい…!?」

    珍しく目に見えて慌てる類に、俺は笑顔を向ける。



    「こんな珍しい類の姿、保存しておきたいからに決まってるだろう?」







    「…なら、僕も司くんが珍しく甘えてくれた姿保存しとく」
    「…………まあ恥ずかしいが…両成敗ってやつだからな…」

    お互いに恥ずかしさから真っ赤になった顔を見合わせ、笑いあった。
    恥ずかしい姿も、君/お前相手なら、悪くない。
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