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    3iiRo27

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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第百二回 お題:「Trick or Treat」「間接キス」
    恋に翻弄される司が、類に一矢報いるお話。
    司視点

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    オレだって、たまには。「ふむ……。それなら、ここは下手にいるしかないか……」

    「うん、次の動きが間に合わないからね。あまり目立たないというのが問題だから、ちょっと迷ってはいるんだけれど」

    「なるほど……。ああ、それならば、寧々の台詞のところで、此方に移動してもらうのはどうだ?」

    「へえ、それはいいね。これならカバーができる。後は……」




    何時も通りの練習風景。

    休憩時間だから、えむと寧々は飲み物を買いに行っているが、オレ達は休憩はそこそこに、立ち位置の相談をしていた。

    公演までの期間はまだあるが、できるだけ詰めて詰めて、よりよいショーを作る方がいいだろう。
    というのが、オレと類の見解だ。


    ……まあ、大概えむと寧々に怒られて、休まざるを得なくなるのだが。




    今はそんな2人がいないからこそ、ショーの話が盛り上がっていた。







    「……ふむ、とりあえずこんなものか。」

    「そうだね。ここから先はえむくん達も交えて相談しよう」

    「ああ」




    ふう、と一息ついてから、傍にあるであろう飲み物を手繰り寄せ、一口飲む。

    ずっと口を開いていたから、すっかり喉が渇いていた。







    「あ、司くん」

    「んむ?」

    「それ、僕のお茶だね」



    指で示されながら言われたそれに、吹き出しそうになるのをどうにか堪えた。



    「っ、けほ……、ほ、本当だ……!すまない類!かなり飲んでしまった!買いなおすから、」

    「ふふ、大丈夫だよ。僕は司くんほど喉は乾いてなかったし。それに、」





    そう言いながら、にっこり笑って、オレの頬に手を添える。

    ああ、言おうとしていることがひしひしと伝わってくる。






    「間接キスで真っ赤になってる司くんを見れたのは嬉しいからね?」

    「……言うな」



    赤くなった顔を隠すようにそっぽを向くことしかできない。

    類はそんなオレを見て、どことなく嬉しそうにクスクスと笑っていた。





    結局、2人が戻ってくるまで、オレの顔の赤みが取れることはなかった。






    ----------------------------






    「はあ……。またか……。」




    1人、自室でベッドに寝転がりながら、うう、と唸る。



    オレと類が付き合い始めたのは、ほんの1ヶ月前のことだ。

    寝ても覚めても類の表情が離れなくて、恋だと自覚する前にそんな日々にやきもきしていたところで。
    類から追求が来て互いに発覚、というような、なんとも情けないような付き合い方をオレ達はしていた。




    そして、お分かりだろうか。

    付き合う前から、オレは恋に翻弄されていたのだ。




    ショーで恋愛ものを見たこともあったけれど、オレの中では、類とのそれは想像を上回っていた。
    いつも、想像以上の感情の激流に飲み込まれてしまって。

    類は、そんなオレに笑いかけながら、ゆっくり慣れていこう。と言ってくれた訳なのだが。





    「……どうすれば、慣れる、だろうか……」




    手を繋ぐのも、キスも、全部類からだった。

    オレからもやろうとしたけれど、頭がパンクしそうになって。
    それでも、とやろうとするのを、いつも類が止めてくれて。


    ……本当は、類がくれるもの……感情を。
    オレも、沢山返したい。



    でも、ただでさえ、間接キスだけでも顔が真っ赤になってしまうオレが。

    そんな、もっと凄いものを返せるのか。



    それが、オレの今の最大の悩みだった。






    「うぐぐ……。こうなったら、また咲希に借りて漫画を……」



    最近は、咲希から少女漫画を借りて、恋愛感情を学んでいる。

    少しでも吸収して、類と対等になれるオレにならなくては!





    そう思いながら、手当たり次第に漫画を持っていく。

    咲希もオレも、漫画は自由に読んでいい本棚に入れているから、いつでも読める。



    今日も、タイトル違いの漫画を片っ端から取り出し、読みすすめていった。










    その中に1つ、異色な漫画が混ざっていることに、気づかずに。







    ----------------------------







    「司くん!すまない、待ったかい?」

    「い、いや。大丈夫だ。そんなに待ってないから」

    「……?そう、かい?ならいいけれど……」




    首を傾げる類に、オレは内心パニクっていた。



    実は頭から、漫画で見た光景が、離れなくなっていたのだ。

    普段は比較的対象年齢が低めの少女漫画ばかり置かれていたのだが。
    今日あそこに並んでいる中に、少々過激な内容が扱われている少女漫画が混ざっていたのだ。



    恋愛の攻め方も、キスも、何もかもが大人向けで。

    頭が沸騰しそうになりながらも、見慣れない光景に、思わずページが進んでしまい。

    つい、全部読んでしまった、という訳だ。





    お陰様で、普段は平気なのに、類を目の前にすると漫画の光景がどんどん蘇る。

    顔が赤くなったらすぐバレてしまうのに、ちょっとしたことでも赤くなってしまいそうになる。


    どうしたものかと、頭を抱えてしまいたくなった。





    「時に、司くん?」

    「なっ、なんだ?」




    声が裏返りそうになるのを堪えながら答える。

    類はそんなオレを気にすることなく、話をすすめていった。





    「話したいことがあるからってここに呼び出されたと記憶しているんだけれど、何かあったのかい?」

    「あ……ああ。えむから連絡があってな。例の施設点検の業者の都合で、明日明後日は練習できないそうだ。」

    「おや、それは残念。色々詰めたり相談したりしたかったけれど、仕方ないね。……確か、えむくんもそれに付き合うんだっけ?」

    「ああ。見ておきたいから、と打診していたみたいだしな」




    普段は晶介さん達に任せっきりだったそれを、今後のためにも見せてほしいという話を、つい先日聞いたばかりなのだ。

    練習は中止になってしまうが、先を見据えての行動だ。背中は、押してやりたい。




    「なら、セカイでの個人練をメインにしようか。今はちょうど詰めるタイミングだしね」

    「ああ。寧々にも連絡しないとな」

    「そうだね。……あ、なら31日は会えないんだねえ」

    「ああ、そうなるな」




    10月31日。

    去年は前倒しで学校でお菓子が飛び交ったし、当日はセカイで皆とお菓子パーティになったんだったか。

    そういえば、今日も授業前にもらったな。





    そう思いながら。

    興味本位で、口を開いた。











    「とりっく おあ とりーと」



    そう言いながら手を伸ばすオレに、類は目を白黒させながら、口を開いた。





    「司くん、「Trick or Treat」だよ」

    「と……トリック、オア、トリート」

    「うん。まあ少しは発音よくなったかな。今後のためにも大切なことだからね」

    「ああ。……それで、お菓子は?」




    類らしい、綺麗な発音に聞き惚れながらも、誤魔化されないように念を押す。

    すると、類は観念したかのように、困った表情で頬をかいた。




    「残念ながらあ、珍しくお菓子のストックを切らしていてね」

    「む、そうなのか?」



    「うん。……だから、いいよ?悪戯。」






    にっこり笑いながら、類は手を広げる。



    ……しまった。悪戯の内容を、全く考えてなかった。

    いや、というか、類もそれを見越して言ったのだろう。

    何をしてくれるのかと、期待の目で此方を見ていた。



    どうするか、と頭を抱えそうになった、その時。







    頭に蘇っていたそれを、思い出した。



    「…………」

    「……あれ?司くーん?おーい」




    固まったオレに類は手を振ってくれたが、オレは答えずにすぐにハッとなり、ゆっくり深呼吸をした。






    そうだ。

    内容は少々過激だったが。

    ぴったりのものが、あるじゃないか。






    「……悪戯、決まったぞ」

    「おや、早かったね。何をしてくれるんだい?」




    にっこりと笑う類を尻目に、ポッケに入れていたものを取り出す。

    ここに来る前にもらっていた、西瓜味の飴だった。







    それを、類の目の前で、口に入れる。





    「……えっ、司くん何を、ん、んぅ!?」




    ポカンとする類の両頬を掴み、勢いよくキスをする。

    そのまま舌で口を割り開き、先ほど食べていた飴を類の方に送ってやった。








    できた!と思ったその瞬間、類の舌が割り込んでくる。






    「んむ、ん、んんぅ……!」

    「っ、んん……」



    そのまま、口内をまさぐられ、舌を吸われ。

    飴はオレと類をとで行ったり来たりして、あっという間に小さくなった。









    「……っ、は……全く、可愛い悪戯をするじゃないか……」



    漸く口が離れ、口から垂れる唾液を拭いながら、類が不敵に笑う。

    格好良すぎるそんな光景に、顔の熱さが取れない。もう、ノックダウン寸前だ。



    でも、それでもこれだけはと、すう、と息を吸って、口を開く。






    「っこ、ここから先は、お預けだ!」

    「え」

    「それが、悪戯!だからな!」








    そう言って、こっそりかき集めて置いた荷物を掴んで、屋上を後にした。


    こっちを悪戯にしたのは、発想の転換だった。

    本当は、飴の口移しだけで、精一杯だったのだ。







    類が追いかけてくる気配はなく。

    悪戯は成功したかと。今までの分、これで少しは返せたらいいなと、そう考えていた。










    だから、知らない。





    残された類が、泣く子も黙るような、据わった目をしていたことを。


    学校終わりに手を引かれ、御預けにしたそれの続きを類の家ですることになることを。


    オレは、まだ、知らない。
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