Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    3iiRo27

    @3iiRo27

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 130

    3iiRo27

    ☆quiet follow

    ritk版深夜の60分一発勝負
    第百四回 お題:「親フラ」「字」
    司に対する思いを抱えきれなくなった類が、その思いの欠片を零すお話。
    類視点⇒?視点

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    臆病者の大誤算『…………で、次のシーン。「寧々が台詞を言いながらはける」だな』

    「……うん。こんなものかな。ごめんね司くん、迷惑をかけてしまって」

    『迷惑かけた、というのであれば、もう少し綺麗に字を書くように心がけた方がいいんじゃないか?』

    「うーん、痛いとこを突くねえ」



    司くんの言葉に、思わず苦笑してしまう。




    今は10時半。
    普段であれば、こんな風に電話したりすることはないのだけれど、今回は事情があった。


    僕は台本に、演出関係のメモをひたすら書いている。それこそ、台本が真っ黒になってしまうほどに。
    あまりに酷い時は新しい台本を用意して、そこに現在確定している演出を書いているのだが。

    たまに急いで書いてしまい、自分でも読めない時が発生してしまうのだ。


    演出で作りたいものなんかはなんとなくわかるのだけれど、動きに関するものは、別のことを考えながら書いてしまうせいで、自分でも読めなくなってしまっていた。

    そうなってしまった時、決まって僕が助けを求めるのが、司くんだった。



    えむくんや寧々と違い、司くんは全員の動きを把握しておきたいからと、自分の出番が一切ないようなシーンでも、メモ書きしないといけないものは全部書いていた。

    だから、僕が書き漏らしているような部分も、司くんの台本になら書いてある、という訳だ。




    『本当、オレがこんな風に書いていなかったらと思うと末恐ろしいな』

    「うん。本当に助かっているよ。いつもありがとう」

    『……また何か企んでいないだろうな』

    「酷いなあ、本当に感謝しているんだよ?」



    よよよ……と言いながら、嘘泣きをすると司くんはため息をついた。



    『そういうくらいなら、日頃から……っと、すまん、ちょっとミュートする』

    「え?う、うん」



    そういうと少しの間静かになり、すぐに元に戻った。



    『すまん、少し母さんに呼ばれた。すぐ戻るから、このまま繋いでおいてくれ』

    「うん、わかったよ」




    俗に言う、親フラというやつだろうか?

    司くんがそう言ってまた静かになる電話に、僕はくすりと笑いが漏れた。



    司くんは、周りの人を本当に大切にしている。

    家族も、青柳くんも。咲希くんの幼馴染も、東雲くんも、えむくんも、寧々も。


    僕もきっと、その中の1人なんだろう。




    でも。

    そんな、「大切な人」枠から外れたいと思うのは。

    「恋人」という枠に、収めて欲しいと思うのは。





    「……流石に、我儘かなあ」


    もう二度と、人が離れるなんてことを経験したくないのだ。

    伝えなければ、そんな恐怖を味わわずに済む。

    でも、伝えなければ、一生その枠に囚われたままなのだ。


    こんなの、我儘以外の何者でもない。





    僕は、手にしたスマホに、呟くように、思いを乗せる。



    「……好きだ」



    今はまだ、勇気が出ない。

    離れる恐怖と、愛してほしい欲求を比べたら、圧倒的に恐怖が優っている。



    「……司くんが、大好きだ」



    でも、膨れ上がるこの気持ちも、抑えられはしないから。




    せめて、今、この時だけでも。













    『…………類?』


    ひゅ、と息がつまる。

    だが、すぐに呼吸を整えて、その声に答えた。



    「っ……ああ、司くん。おかえり」

    『すまんな、結構待たせてしまった』

    「ううん、気にしないで。そんなには待ってないし」



    よかった。話せている。
    僕は、「何時も通り」だ。



    『そうか?なら良かった。折角だし、このまま少し演出案を練るか』

    「あ、それいいね。それなら、一番最初のえむくんの登場シーンだけど……」



    司くんの声に答えるように、台本の該当のページを開く。







    そう。これでいい。

    僕の気持ちは、一生出てこなくていいんだ。




    司くんの傍にいれるのなら、それで。





























    ------------------------------



    『……それじゃ、おやすみ。司くん』

    「ああ、おやすみ!」



    ぷつり、と切れたそれに充電器を指して、サイドテーブルに置く。

    そして、ばったりとベッドに倒れ、そっと頬に手を当てる。



    自分の手にも伝わるくらい、顔は真っ赤になっていた。





    類は、気づいていない。

    ミュートをしていたから、類からはオレの声が聞こえない。



    でも、オレの方からは、類の声が聞こえている。

    そしてオレは、「ワイヤレスイヤホン」をしていた。


    つまり、離れていても、類の声は聞こえていた訳で。




    初め、聞こえてきた独り言に、類はそのことに気づいていないのかとは思っていたが。

    その後に突然聞こえてきて告白に慌てるオレを、母さんは不思議そうにしていたけれど。

    とりあえず用は済ませて、ミュートを解除しようとした時、気づいた。



    類の声が、悲痛に漏れていたことに。



    だから、とりあえず聞いていないていで話を進めたけれど。




    (合っていたみたい、だな)



    オレが普通に戻ってきたことで、安堵したような声でそのまま通話を続けていたのを見る限り。

    オレに伝える気は、さらさらないのだろう。





    (……まあ、今はいいか)


    なんだかんだ、オレも類のことは恋愛的な意味で好きなのだ。

    でも、そっちがそんな風に隠してくるのであれば。



    (沢山メロメロにさせて、我慢できなくなってから、告げるだけだ)



    まあ、ちょっとした意地悪だ。

    いつも翻弄される側だから、それくらいはいいだろう。



    そう思いながら、そっと布団に潜り込んだ。















    それから、数ヶ月もしないうちに、我慢できなくなった類に、押し倒されながら告白され。


    それを待ってたと言わんばかりにキスをして、ネタばらしと告白の返しをして。




    暴走した類にその日のうちに頂かれる、なんてことになるのは。

    また、別のお話。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💒☺👍🌠💒💒💒💒😭❤👏👏❤🙏💖😍👍☺👏💘❤🙏💙😭👏👏👍💘😍💖❤👏💘💖😍💘👏💯👏💖❤💖😭👏☺💯👏❤💖💞💖💯💘😍💯👏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works