「きみ」が早期卒業するまでの47時間【一寸の光陰】
郷里の便りを受け取ってからの君の行動は素早かった。
便りを見たのは梅の去り桜の至らぬこの季節に最後の斜陽が射す時分だったが、読み終えるやすぐさま内容を学園長に知らせ承諾を得ると、長く伸ばしていた髪を大人らしく切り揃えた。
翌日、図書室の本と学校の備品はすべて返し、小綺麗な私物を髪と一緒に売り払った。僅かでも急ぎ金が必要になったとはいえ、まともに値がついたのが選りすぐりの品々よりも仙蔵への対抗意識だけで手入れをした髪だったことにどこかさみしく感じた。世は無情だ。
量は減ったがそれでも、5年間集めたガラクタを広げると一人になったばかりの部屋がいっぱいになった。
こういう光景はなにも珍しいことではない。3年生から4年生に進級するときには同級生の半分以上が就職、といっても家業に戻った、が決まって学園を去り、その形見物を君も受け取ってきた。先月も同室相手の私物をほとんど丸ごと受け取った。もうすこし長くいるつもりだったが思いのほかことが早く進んだ。それだけのことだ。
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