ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉒話「姫と老婆」 女王とディアヴァルは、森の奥へ奥へと進んでいった。
深い森には太くねじくれた木々が鬱蒼と茂り、空はほとんど見えない。地面には分厚く苔がむし、足音も吸い込まれて響くことはない。聞こえてくるのは、どこか遠くで鳴く鳥の声と、吹きすぎる風が梢を揺らす音くらいだ。そんな風景の中に、細い踏み分けが通っている。その細い獣道か人の道かも定かではない踏み分けを、一人の老女が歩いていた。曲がった腰に長い木の杖をつき、片手に籠を抱えている。誰が見てもみすぼらしい老婆にしか見えないそれは、女王の変装した姿だった。
どれほど歩いただろうか。太陽が天高く上がりそろそろ昼も近いと見えた頃、やっと森の木々がまばらとなり、一人と一羽は開けた空き地へと歩み出た。
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