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    petigawara_fgo

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    カフェでマスターしている綱と看板娘の茨木の現パロ

    #綱茨

    カフェみなもとへようこそ裏通りの路地を入ったところにその店はひっそりと佇んでいる。
    カフェ「みなもと」、古風な純喫茶である。
    築年数は相当経っているだろう、古い建物ではあるがよく手入れされており、瀟洒でクラシカルな魅力に溢れた店内はバーカウンターといくつかのテーブル席が並ぶ。
    ランチはカフェのランチに相応しくナポリタン、ピザトーストなどが並ぶがマスターの気まぐれで黒板にはその場限りの特別メニューが書かれている。

    カフェのマスターは渡辺綱、物静かな長身の美男子である。見目麗しい店主目当てに遠方から訪れる常連もいるほどだが、彼自身は自信の容姿に興味がない様子である。
    仕事ぶりは朝八時に店を開店すると夜の二十二時までは店に立つ。勿論、休憩や適宜休みは取るものの店員が多くない現状、綱はいつもいる。

    カランとドアについているベルが鳴る。ランチよりは少し早い時間帯、店内はまばらだ。
    真っすぐな金色の髪、好奇心の強そうな瞳の制服姿の少女がやってくるなり、店主の案内もなくカウンターの端に座る。
    茨木、彼女の指定席だ。
    彼女は店主の一回り年下の幼馴染で最近バイトとして雇うことにした。
    今日はテスト明けということもあり、ランチ時からのバイトだ。
    シングルマザーである母親にネグレクトされている彼女は家に帰っていい時間が遅い。
    それで綱はもとより店内に彼女がとどまることを許していた。高校生らしくバイトの一つもしたいと言い出した彼女を綱が半ば強引に採用して今に至る。

    「今日のランチは何だ?」
    「茨木は何を食べたい?」
    「吾は卵サンドの気分だ! あるか?」
    「ああ。喫茶店だからな。今ならホットサンドも作れるが」
    「それがいい!」
    綱は慣れた調子でパンを切る。作っておいたゆで卵で卵フィリングを作る。マヨネーズに塩胡椒とほんの少しのビネガーを足す。
    パンの間に挟むとバターを溶かしたホットサンドメーカーに挟む。
    茨木はその様子をわくわくと眺める。茨木はここに来るまで誰かが自分のために料理を作ってくれる経験がなかった。
    だから、この時間は茨木にとって大事な時間なのだ。
    綱の無駄のない動きで調理する姿はきまっていると思う。

    「これは試作品だ」
    トレイにはホットサンドとサラダの他に小さなプリンが二つ載っていた。
    「この前、甘味メニューが足りないと言っていただろう」
    「覚えていたのか」
    「こっちがとろみの多いプリン、こっちが硬めのプリン、どちらがいいだろうか」
    「店主なら自分で決めればよかろう」
    「甘味については茨木に一日の長がある。参考にしようと思ってな」
    そう言われれば悪い気はしない。
    「いただきます」
    行儀よく手を合わせて挨拶と共にランチを食べる。
    「旨い!」
    育ち盛りの彼女のために二倍量が用意されているのだが、瞬く間に皿から消えた。
    「野菜も食べろ。デザートを取り上げるぞ」
    茨木は残されようとしていたサラダを指摘されるとばつが悪そうにむっとした後に食べた。
    「プリン」
    喫茶店では定番のデザートであり茨木の大好物だ。それを試作品としてでも出されるのは悪い気はしない。
    「とろーりもかためのも悪くない」
    悪くないと言いつつも笑みの形に綻んだ顔を見れば美味しいという内心は駄々洩れである。
    「しばらく試作品を作ってみて良さそうならメニューに入れよう」
    綱が言うと残ったプリンがあったら賄いとしていただこうとプリンとの甘い日々を想像してにんまりと笑った。

    茨木は近頃この店でバイトを始めた。
    掃除に店番、コーヒーを淹れるのも上手くなった。ほどほどに繁盛している店なので忙しいが他のバイトよりは払いが良いし賄いもつく。
    「茨木、着替えたらテーブルを拭いたり、いつものを頼む」
    店内を整えるのは茨木の分担だ。クラシカルメイドのような制服を纏うと慣れた様子でテーブルを拭き、グラスやカップを食洗器に入れていく。
    食洗器の中の乾いた食器を所定の位置に戻す。身長の低い彼女には難しい食器はまとめて重ねておく。
    「今日の日替わりはハワイコナだ」
    「了解した。ちょっと待ってろ」
    毎日のルーチン、茨木は日替わりを二杯分淹れる。注ぎ口の長いヤカンからくるくるとドリッパーに注いでいく。ゆっくりとデカンタに落ちていくコーヒーはいい香りだ。
    淹れたコーヒーは二つのカップに注ぐ。片方が綱に、片方は自分に。自分用にはたっぷりの砂糖とミルクを入れる。
    綱は茨木の淹れたコーヒーを飲むと一言。
    「合格」
    毎日の品質チェック。
    「茨木、淹れるのがうまくなったな」
    「ふふん! 吾の実力にもっとバイト代をはずんでもいいんだぞ!」
    「検討しておこう」
    「本当か」
    「ああ」
    「そういえば、この間も言っていたような」
    「俺の検討中にお前が言うからだろう」
    「早く決めぬか!」
    綱は嘆息すると「最近賄いを食べつくす誰かさんがいるから仕入れ費が高騰していてな」とお小言を一つ。
    「そ、それは味見というか、品質の管理であって」
    「しばらくは据え置きだな」
    「ぐぬぬ」
    看板娘と店主のやり取りはこの店の名物だ。なお、看板娘をナンパすると後ろから店主がすごい目で睨んでくるのでそんな愚か者はいない。

    カランとドアのベルが鳴る。客が来たようだ。
    「いらっしゃいませー」

    カフェみなもと、今日も看板娘と店主は美味しいコーヒーと軽食を用意して客の訪れを待っている。
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