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    teelse9

    @teelse9

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    teelse9

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    ゆべなぽ戦行間読み
    CPとしては犬虎意識ですが、文中の要素としては非常に薄いです。
    とても長いのですみません。

    「大丈夫ですか、ダビィさん」
     そんな声が後輩から降ってきたのは、ナポリ戦のハーフタイムのことだ。
     ダビィはベンチに座ったまま、上を向いた。ユニフォーム姿の日向小次郎が、首にタオルを掛け、スポーツドリンクを片手に持って、目の前に立っていた。
    「だーれが大丈夫だって?」
     言いながらも、その反論に力がないことをダビィは自覚していた。
     ナポリ対ユベントスのセリエA開幕戦、前半は、ユベントスが攻められ続ける展開になった。中盤がディアスに翻弄され、ほとんど機能をしなかったせいで、ディフェンスラインに過度な負担がかかった。ダビィもナポリの攻めを止めるために走り回ったとはいえ、その結果が出たとは言い難い。零対二。厳然と、スコアはユベントスの窮地を指し示している。
     すると日向は、くすりと笑って、隣に腰掛けてきた。
    「二点取られて大丈夫ってんなら、別にいいっすけど」
    「うるせえ。……やられすぎたな。後半は立て直す。さっきジェンティーレとも、その辺は話してきた。あいつもあいつで、結構尻上がりなところあるからな」
    「ま、お願いしますよ──と言いたいところですけど。あんたが大丈夫じゃないとは、最初からあんまり思ってなくて」
     ん? と、ダビィは首をかしげて、横の一回り大きい日向を見た。それに応じるように、彼は前を向いたまま。
    「むしろ、あの人の話ですよ」
     指を少し、くいっと動かす。その控えめな動作に、ダビィは少しだけそちらに視線を向け、そして察した。小声が漏れる。
    「デレピか」
    「そうっす。今日、なんかすごい不調ですよね」
     それはダビィも感じていた。そして、それを直接言わずにダビィに相談してきた日向の心情も、また、僅かに察することができた。日向は、自分がデレピの不調の原因ではないかと思っているのだ。
    「ヒューガ、一つ言っておくが、あいつはおまえにエースストライカーの座を追われたからってショックを受けるような奴じゃねえよ」
    「……」
     図星を刺されたのか、日向が黙った。
     ユベントスの世間一般の評価はどうあれ、開幕戦において監督がセンターフォワードに配置したのは、エースストライカーと目されていたデレピではなく、レッジョから帰ってきたばかりの日向だった。デレピは今、攻撃的ミッドフィルダーの位置を務めている。それが彼の調子を捻じ曲げてしまったのではないかと、そう思っているのだろう。それは違うと、ダビィは思っているが。
    「あれはちょっと、調子出ないだけだろ。あいつもプロだ。後半でちゃんと取り返すさ」
    「……そうっすかね」
    「ああ。あんまり心配すんな。ていうか、おれに相談するなんておまえのほうが大丈夫か?」
     そうからかい気味に言うと、彼は露骨にそっぽを向いた。
    「あんたが一番相談しやすい──じゃなくって! あんたら中盤が機能してないと、おれにボールが来ないんすよ、ボールが!」
    「おい、今変なこと言って……まあいいや。そうだな。前半は悪かったって」
     前半戦で、活き活きとユベントスゴールに殺到するナポリのフォワード陣を一番歯噛みしながら見ていたのは、前線でひたすらボールを待っていた日向だろう。ましてナポリの火野は、旧知の仲でありライバルであるとも聞いている。日向をゴールに向かわせてやれなかったことに関しては、こちらとしても申し訳ない。
    「よろしく頼みますよ。……何より勝ちたいんで」
    「ああ、そうだな。俺だってこのままタダで負ける気はねえんだ。ちゃんと立て直すから、安心しろ」
     日向は頷き、その手に持ったスポーツドリンクを飲み干した。そして、その場を去っていく。
     彼が行くのを見送ってから、ダビィはデレピに近寄って、声をかけた。
     あるいは、さっきの日向と同様に──。
    「デレピ。大丈夫か」
    「ん……ダビィ」
     振り向いた彼の状態は、しかし、ダビィよりよろしくない。
     ダビィはため息をついた。
    「ヒューガに心配されてんぞ、おまえ」
    「そうだよなあ。すまん、不甲斐なくて」
    「相手のディアスってやつは相当やる。アレに中盤で暴れ回られたら、中々ボールは運べねえさ。……それにしたって、おまえは、色々調子悪そうだけどな」
     そう言うと、デレピの顔に苦笑が広がった。
    「あはは、バレてたか」
    「そんなの皆気付いてる。練習の時と比べても、ひでえじゃねえか、今日は」
    「そうだなあ、そうかも。……ゼダンがなあ」
     最後のつぶやきは、消え入りそうな声だった。もっとも、予想通りの言葉だったので、聞き取るのは容易だったが。
     デレピが調子を落としているのは、日向のせいではあるまい。むしろ彼が意識しているのは、前シーズンまで共に戦っていたゼダンだろう。世界最高峰のトップ下と称される彼。そのゼダンが抜けた穴を埋めるべく、ポジションをトップ下へと変更したデレピに、重圧がのしかかっていることは想像に難くない。ダビィやデレピはゼダンの凄さを間近で知っているからなおさらに。
    「あいつのことはあんまり意識するなよ。おまえとはプレイスタイルが違うしな」
    「そりゃそうだけどよ。やっぱり、意識しないわけにゃいかないさ」
     肩を竦めるデレピの顔に、苦労の跡がにじむ。
     やはり、絶対に負けたくない開幕戦、それも後輩たちを引っ張らなければならない立場で、彼にも相当影響があるようだ。
     とはいえ後半は彼にも立て直してもらわなければ困る。
     彼もプロだ。あまり心配しすぎるのはよくないとわかっているが。ダビィは一度頭を掻いた。

    ***

     後半戦も、最初はナポリのペースで進む。ダビィはデレピの動きに特に注意していたが、彼はやはり精彩を欠いた。
     だが、それでもこれ以上の点差は許すわけにはいかない。
    「ジェンティーレ、そっちだ!」
    「おう!」
     前衛が機能不全だろうが、守り切れば点は取られない。ダビィもかなりポジションを後ろに下げ、とにかく守ることに専念した。ハーフタイムでの打ち合わせで、ジェンティーレはほぼディアスを封じるために動くと決めていた。それが功を奏し、ディアスも前半のような暴れっぷりは鳴りを潜めていた。そうなると、ボールを前へ運ぶのは、他の人ということになるが──。
    「ディアス!」
    「させるか!」
     火野が送ろうとしたパスを、ダビィが力強いダッシュで割り込んで奪い取る。
     視野の広さ、そしてフィールドを走り回る体力は、若い奴らにも負けてやる気はない。すぐさま体勢を立て直し走り出す。ここまでは良い。
     と、相手のミッドフィルダーが更に取り返そうとプレッシャーをかけてくる。ダビィはそれを躱すように前方のデレピにパスを送る。
     その先が、デレピの動きが、問題だった。
     デレピの何が悪いというわけではない。ただ、踏み込みの一歩がいつもよりほんの少し遅い。視野がいつもより僅かばかり狭い。微小なずれは、しかし、足の動かし方を忘れたムカデのようにも思える致命的なずれだ。
     そしてそれを見逃してくれるほど、相手は甘くない。
    「そこだ!」
     ディフェンダーの鋭い飛び出しが、フォワードへ送ろうとしたデレピのパスを刈る。
     日向へボールが通らない。そしてそのまままた、前線のディアスへとパスが通り、ナポリの攻めのターンが来てしまう。
     思わずダビィは、前半からフル稼働しているジェンティーレをチラ見した。彼は少し苦い顔をしたようにも思えた。それでも、そのプライドをもって、全身全霊でまたディアスのマークにつく。
    「ちっ、こいつ──」
     ディアスが舌打ちした。彼はジェンティーレのマークをわかっていて、そしてそれを何度も一対一で抜いてやろうとしている。しかしジェンティーレは踏ん張っていた。この後輩は、生意気で腹が立つ男だが、その若さにも関わらずユベントスのディフェンダーにあって、不動のレギュラーを務める超新星。エンジンがかかりさえすれば、天才ファン・ディアスといえどもそう簡単には突破できない。
     パスコースもない、抜くのも難しい──そう踏んだディアスは、苦し紛れのロングシュートを放つ。これならあのバッカスが万が一にも通すはずがない。ダビィは安堵した。
     それが罠だった。
     ポストにボールが当たったとき、嫌な予感がしたのだ。いくらロングシュートだからって、あのディアスが、ゴールの枠まで外してくるとは思わない。胸騒ぎが襲った。
     そして案の定、ボールが転がったのは、火野の前。
    「しまっ──」
     これはポストを利用したパスだ。シュートなんかじゃない。──そう気づいたとき、ダビィは全速力で一歩目を踏み出したが、しかし火野はフリーだった。
     どれほどのスプリントであっても、火野の長いシュートモーションであっても、妨害に入れない程度には彼は自由だった。そうしてしまった一因は自分だ。慢心して対応を怠った。ダビィは唇を嚙み締める。
     その眼前で火野の足が振りぬかれ、豪速のトルネードシュートが放たれる。
     当然ブロックは間に合わず。
    「バッカス!」
     思わずダビィはそう叫び、ボールの行方を追った。
     ──バッカスは、ダビィが思うよりずっと機敏だった。
     大きく飛び込んでシュートに触れ、押し負けることもなく、がっちりとキャッチする。シュートはゴールラインを超えることはなく、彼の手の中に収まった。ただ、着地した時の表情は、それでも少し余裕がなさそうに見えた。
    「なにィ⁉」
     火野が立ち尽くす。そうだろう、多少ディフェンダーの立ち位置によってコースが限定されていたとはいえ、完全フリーのシュートだ。ストライカーとして、確実に決めるつもりだったはずだ。その顔は蒼白だった。
     しかし、それを見るバッカスの顔も同様に険しくて。
     そして、その瞳がダビィを咎めるように視た。
    「……っ」
     火野にフリーのシュートを許した自分はその視線を受けるに値するだろう。立ちすくんだダビィにはお構いなしに、バッカスはボールを蹴り、プレイを再開する。それは、日向への超ロングパス。ダビィとデレピのいる中盤を通り越し、一気にフォワードへの導線を繋ぐカウンター。
     しかし、頭上を通るそのボールを見た時に、ダビィは暗い気持ちになった。このロングフィードは中盤への失望の証でもあったからだ。
     バッカスはゴールキーパー歴が長くない。アメフトで鍛えたその体は容易にボールを遠くへ飛ばすとはいえ、その正確性にはまだ難があった。練習はしていたが、それでも超ロングパスの成功率はそこまで高くない。
     それでもバッカスは、こう考えたに違いないのだ。
     ──今の中盤に託すよりも、ロングフィードに賭けたほうが、まだ高確率で日向にボールを届けられると。
     そしてそのロングフィードは功を奏した。日向へと、確かにそのボールは届いた。彼へとパスが通るのは本当に久しぶりに感じられる。
    「──!」
     日向はボールを受け取ると、真っすぐに走り出した。そこへディフェンダーがショルダーチャージを仕掛けてくるが、当たり負けはしない。体勢を崩し切ることなく、センターフォワードらしく、力強く、突破し──。
     日向は、その足を振りぬいた。
     猛虎を象徴するワイルドタイガーショット。
     そして、ボールはキーパーの手を弾き飛ばし、ゴールに飛び込んだ。
     凄まじい歓声が上がる。同じくフォワードのトレサガやインザースが近寄って、日向を祝福する。デレピも同様にしていた。しかし、日向に声をかけてから踵を返した時の彼の表情は対照的に明るくはなかった。
     ダビィはそのデレピへと近寄った。
    「おい。わかってるよな」
    「……」
    「バッカスを精度の低い超ロングパスを使わざるを得ない状況に追い込んだのは、おれたちだ。賭けには勝ったが、状況は好転してねえ。中盤を取り返さなきゃあ、話にならないんだぜ」
    「……わかってるつもりだ」
    「だったらさっさと修正しろ。おれも気合いを入れ直す」
    「そう、だな」
     煮え切らないデレピの態度。彼が後輩ならまだダビィは努めて明るく励ますこともあったかもしれないが、しかし、目の前にいるのは共に戦い続けてきた戦友だ。ダビィは、発破を掛けようとその胸倉を掴んだ。
    「おまえが抜けたゼダンのことを意識しておかしくなってんのはわかってる。だがな、この状況を見ろ。おれたちが不甲斐ないせいで後輩にどれだけの負担を強いてると思ってやがる。ヒューガだけじゃない、ジェンティーレにもだ。……こうじゃねえだろ、おれたちのやりたいサッカーは!」
    「ダビィ……」
    「おれだってな──」
     続けて言おうとしたところで、ダビィは腕を掴まれた。
     言葉を止めて腕を掴んだ人物を見れば、先ほどゴールを決めた日向張本人だ。その表情は硬い。
    「なにしてるんですか。喧嘩してるような場合じゃないでしょ」
    「してねえよ! ただちょっと檄を飛ばしてやろうと」
     言い訳しようとしたが、日向が食い気味にその言葉を遮った。
    「どういうつもりでも! ゴールも祝わずにいかつい顔で言いあいしてたって、なんもいいことねえっすよ」
     正論だ、そんなことはわかっている。それでもデレピの目を覚まさせたかったのだ。言われてダビィはむすっとして、ついつい言い返す。
    「おまえのゴールなんて祝う必要ねえだろ。入って当然なんだからよ!」
     すると日向は、大きく目を見開いた。何かと思えば、彼の口から信じられないとばかりの言葉が続く。
    「なんすか、それ⁉ おれのセリエAでの初ゴールですよ⁉」
     ……そうだっけか?
     ダビィは一瞬言葉に詰まった。確かに論理立てて思い出してみれば、日向はユベントスのデビュー戦にてノーゴールノーアシストで前半交代し、そのままレッジアーナにレンタル移籍して一シーズンを終え、そして戻ってきてこの開幕戦である。そういうことにもなるか。
     なんかちょっとだけ申し訳なくなった。
    「そういえば……そうだな。あー、一応褒めてやるか」
    「雑! 雑すぎる!」
     すると、そのやり取りを見ていたデレピが突如、くすくすと笑いだした。
    「な、なんだよ」
    「どうしたんですか」
     二人が一様に、不審げな顔でそちらを見ると、デレピは笑顔のまま答える。
    「いやいや、ダビィは本当にヒューガが好きだなあと思って」
    「え? おれが?」
    「そうさ。ヒューガのゴールが入って当然だなんて、凄い信頼じゃないか」
    「は、いや、それは、そういう意味じゃ……」
    「それに、どうせおまえ、日本戦のゴールが印象に残りすぎてて、ヒューガのゴールを見た気になっていたんだろ? よく話してくれるもんなあ、あの時のヒューガのことは」
    「おいやめろ! それ以上言うんじゃねえ!」
    「デレピさんその話もう少し詳しく」
     打って変わってにやにやし始めた日向がデレピに続きを要求する。ダビィは恥ずかしさで顔から火が出そうになってきた。
    「やめろって! 別におれは、ヒューガのこと、なんとも……」
    「思ってないわけないよなあ? たくさん心配してるしな」
    「うーるーさーい!」
    「ダビィさん、もうちょっとそれを本人の前でも出して下さいよ」
    「ヒューガも黙ってろ!」
     デレピは二人を交互に見て、やはり楽しそうに、しかし少し困ったような笑顔を浮かべた。
    「あはは。おれも、頑張らなきゃな」
     それを聞いたダビィは、思わず眉をひそめた。この男が頑張っていないはずがないのだ。
    「おまえは十分頑張ってるだろ。あとは気の持ちようだ。ゼダンのことを意識しないようにすれば──」
    「ゼダンさん?」
     日向がそれを聞いて、少し驚いたように復唱した。今更隠しても仕方ないので、ダビィは頷く。
    「こいつ、自分と前任のゼダンを比べちまってるんだ。それで、調子を崩しててよ」
    「なるほど。……デレピさんは、ダビィさんみたいに無神経で図太くないっすからね」
    「誰が無神経で図太いって」
    「めっちゃ褒めてます」
    「嘘つけてめえ!」
    「褒めてますって」
     しれっとそう言いきった日向は、そして、デレピに向き直り。
    「安心してください、デレピさん。あんたがダメな時は、おれやジェンティーレ、それからダビィさんが頑張って勝ちますから。トレサガさんやインザースさんだっていますし。ゴールはバッカスの野郎が守りますし。おれたちに、どーんと任せてくれてもいいんすよ」
     ダビィは思わず日向を見た。
     彼があの控室で、自分にボールが来ないと嘆いていたのを知る身としては、思わぬ発言だった。しかし、だからこそ彼がデレピを精一杯気遣っていることも感じられた。
     そして、当のデレピは……それを聞いて、虚を突かれたような表情になって。
    「──そっか。そうだな」
     大きく息を吐き出して、そう呟く。
    「デレピ、おまえ」
    「はは、なんだか……気負いすぎていたみたいだ。後輩たちやチームメイトに迷惑かけるのを気にして、おれがやらなきゃって。ごめんな」
    「……」
    「もう、大丈夫。……とまでは言えないけど。凄く元気出たよ、ヒューガ。ちょっと吹っ切れた」
    「ならいいですけど。無理だけは、しないでくださいよ」
    「ああ。精一杯、おれにできることをやってみる」
     その笑顔を見た時、ダビィは敵わないなあと思った。自分がいくらデレピに発破を掛けたところで、こうはならなかったろう。この後輩は、見事にデレピを勇気づけてみせた。
    「さあ、行こうぜ。次の一点で、同点だ」
     ダビィはそう言って二人の肩を叩く。自信に満ちた笑顔が返ってくる。
     反撃はここからだ。
     ──試合はナポリボールからの再開。ディアスがボールを持ち、突っ込んでくる。
     今までは、ここでデレピが簡単に抜かれ、ジェンティーレを筆頭とするディフェンダーに大きな負担がかかっていた。しかし、いつまでもしてやられているばかりではいられない。
     ダビィとデレピは小さなアイコンタクトを交わす。
     今なら、いける。
    「ここから先へは、進ませない──!」
     デレピの気迫の籠った守備。そのディフェンスは、天才をも足止めした。
     しかし、一方でわかり切っている。この天才を止めるのは、容易ではないと。
     だからこそ。
     デレピはわざと隙を作った。
    「そこだっ!」
     ディアスともあろうものが、その隙を見逃すはずがない。開けたパスコース。
     それこそが、ダビィとデレピの仕掛けた罠だ。
    「これ以上──やらせるか!」
     空いた隙は、狙ったパスコースへパスさせるための、誘導。
     ダビィは駆けた。後半の、更に後半戦であっても、そのスプリントは衰えることはない。中盤のダイナモ、無尽蔵のスタミナを、決定打に変える。
     一瞬の攻防、刹那の飛び出し。ダビィの執念が、デレピとの連携が、ディアスのパスを刈る。
     中盤の前方でユベントスがボールを奪取する。これがどれほど、久方ぶりのことか。
    「行くぞ、デレピ!」
    「おう、ダビィ!」
     攻守が入れ替わる。中盤を支える二人は走り出した。ワンツーで繋ぎ、パスを交わし、一気に敵陣に切り込んでいく。そして、デレピからインザースに、迷いのない綺麗なパスが通る。
    「行け、インザース!」
    「任せろ!」
     その俊足で一気にインザースがサイドラインを駆け上がる。相手のディフェンダーは間に合わない。敵陣奥深くへボールを持ち込んだインザースは、ペナルティエリアを見た。
     そこには日向がいる。多数のディフェンダーに囲まれながらも、エースストライカーとして、その役目を果たそうと。そして、インザースのセンタリングが上がる。
     日向とナポリのディフェンダーが競り合いになる。ナポリの誰もが、日向を警戒していた。こいつにだけはボールを渡すまいという気迫で、ペナルティエリア内のポジションを奪い合う。
     しかし──そして──。
     インザースのセンタリングは。
     日向を飛び越した。
    「──」
     日向が派手にディフェンダーの目を引き付けたことで──ファンタジスタは躍動する機会を得る。
     いつの間にやらペナルティエリアの端に立ったデレピに吸い込まれるように、ボールは飛んでいく。
     左斜め四十五度。
     彼の最も得意な位置からの、フリーのシュート。
     エースストライカーが二人いて、何が悪いと言わんばかりに。
    「──!」
     キーパーの飛び出しは間に合わなかった。ボールは綺麗に、ゴールを破ってみせる。
     そして、得点を告げるホイッスルが鳴った。
     わあっと歓声が上がる。二点目。ついにユベントスが追いついたのだ。
     ダビィは思わず脱力した。笑顔が自然とこぼれた。走っていってデレピの肩を抱き思い切り祝福してやろうと思ったのだが──どうにも全身に力が入らなくて、そういうわけにもいかなかった。デレピがゼダンにはない、己の持ち味を発揮してゴールを奪ってくれたこと。それにただ、喜びというよりは、安堵を覚えていた。
     代わりにデレピの肩を抱いて喜んでくれたのは、日向であり、トレサガやインザースでもあった。仲間の祝福を受け、笑顔を見せるデレピは、もういつものファンタジスタに戻っていた。
     やがてひとしきりデレピを祝福したあと、日向がこちらへ近づいてきた。
    「ダビィさん、あんたもお疲れ様。ナイスパスカット」
    「……今まで何もできてなかったから、これくらいはな」
    「あはは。でもまだ、追いついたばっかですから。次が勝負っすよ」
     ギラリと、闘志の籠った瞳がダビィを見る。その視線がダビィに力をくれる。脱力していた体に喝が入ったようだった。
    「ああ、わかってる。……ヒューガ。必ず守るから、得点を頼むぜ」
    「もちろんっす。ダビィさんも、攻めに参加してくれていいんですからね。あんたは運動量が持ち味でしょ」
     生意気に笑う日向に、ダビィはどこか嬉しくなって笑い返した。
    「勿論だ。攻めのサポートも任せときな」
     試合は振り出しに戻された。勝つために、必要なのはもう一点。勝ち越しのゴール。
     あと、もうひと踏ん張りだ。──火野とディアス。高い攻撃力を誇るナポリの攻撃を抑えつつ、点を取りに行かなければならない。

    ***

     その後の展開は一進一退の攻防が続いた。後半も後半、全員のスタミナも限界が近い中で、お互いにボールを中盤で奪い合い、中々どちらかが一方的に敵陣に入るという展開にはならなかった。
     試合が動いたのは、ロスタイム寸前だ。
     きっかけは、ディアスへのパスがカットされたことだ。これは何度目かわからない。ユベントスはディアスをジェンティーレがマークする一方で、ナポリのフォワード二人にいい形でボールが渡らないように、ダビィが獅子奮迅の働きをしていたからだ。
     ディアスは舌打ちをする。
     あからさまにディアスが警戒されて、パスが通らなくなっている。このままでは点が取れない。ユベントスの面子は、尻上がりに調子を上げてきているのはわかっていた。
    「それっ──」
     中盤でパスを回しながら機を窺うユベントス。しびれを切らしたディアスは、後ろまで戻ってディフェンスしようと駆け出した。
     こうなったら、ボールさえもらえればいい。前線でなくとも、いや、最早中盤ですらなくとも。
    「ディアス……⁉」
     火野の驚いた声が聞こえた気がした。彼がついてくると困るので、目くばせでそこにいろと示す。一度戦ったからこそわかっている。彼は前線で攻め続けてこそ、だ。こういうのは、ミッドフィルダーもできる自分の役割だ。
    「そこだあっ!」
     ディアスはユベントスのパス回しへと肉薄。
     そして、ゴール前への決定的なセンタリングを刈り取った。
     一瞬、その場の全員があっけにとられたような顔をした。なぜここに、と言わんばかりの。しかしディアスにはそんなことは関係ない。ペナルティエリアの少し前から、しっかりと狙うべきゴールを遠目に睨む。
    「行くぜ──!」
     そして、ドリブルを開始した。
     集中。精神が研ぎ澄まされる。あるいはかつて自分がオリンピックの舞台でやってみせたかのように。ぎらついた目で前だけを見据え、駆けだし始める。
     もう時間がない。決めるならば今しかない。その思いが彼の集中を極限まで高めた。今のディアスにとって、ディフェンダーの動きはさながらスローで見える。タックルを躱し、フェイントで抜き。一気に、前へ。
     一、二、三。機械的に数えるのは抜いた選手の数だ。
    「こいつ……⁉」
     半ば困惑した表情ながらも、男がまた一人、立ち塞がる。先ほどゴールを決めたデレピだ。しかし今は彼すらも、ディアスは意に介さない。
     一瞬の素早いフェイントでデレピを翻弄し、真っすぐ抜く。あっ、と言わんばかりの表情を置き去りに。
     観客がどよめく声が聞こえる。注目が一気に集まる。このたくさんの人が見守る大事な試合の中で、自分が、今、こうして、主役になっているという確かな感覚。それがディアスを更に加速させる。興奮以上に冷静に、彼は戦場を駆け抜ける。
    「──やらせるか」
     乗りに乗ったディアスを押しとどめるかのような低い声。目の前に、獣の気配。
     ダビィだ。彼もまたゾーンに入ったかのような凄まじい集中力で、ディアスに相対してくる。ここが山場だと察したかのような、全力のその上へ踏み込む乾坤一擲がそこにあった。
     抜けるか。いや、抜く──、いや。
     ディアスの思考は一瞬だった。彼は研ぎ澄まされた極限の中で、選ぶ。
     必ず自分を抜いてくるだろうと構えているダビィの思考の隙をつく。ダビィに背を向け、ボールを浮かせ、彼の頭上を通す火野へのオーバーヘッドパス──。
    「──!」
     それにダビィが反応できたのは、くしくも彼自身が得意とする技だったからか。それとも、熟練のベテランとしての勘がなせる技なのか。彼もまた、跳んだ。
     足が僅かに、ボールを介して衝突した。しかし、ディアスは動揺しない、ひるまない。一気に蹴り足を振りぬき、読まれたならばと力で押し込む。そしてそれは八割がた成功した。ダビィのオーバーヘッドキックはディアスのそれを相殺するには至らず、ボールは前へと飛んだ。
     ──ディアスと火野にとってしかし、不幸だったのは、勢いを殺されたボールがゆっくり山なりの軌跡を描いての飛び方になったことだろう。
     本来ならば。
     完璧なオーバーヘッドパスならば、オフサイドギリギリで飛び出した火野に、フリーでパスが通っただろう。誰もがディアスのド派手な一人抜きを警戒していた。ディアスは囮としての役割を果たし、信頼するストライカーの火野に最高のボールを渡せたはずだった。
     だが、ダビィとの衝突によって山なりに飛んだボールは、フィールド全体に一瞬の余裕を与えた。与えてしまった。
     ダビィと共に地上に着地したディアスが次に見たのは──その僅かな隙にすべてを理解し、火野へと駆け寄るジェンティーレの姿だった。
    「決めさせるわけにはいかない!」
    「ほざけ……!」
     火野がトルネードシュートのモーションに入る。と同時に、ジェンティーレが追いつき、スライディングで足を出す。
     シュートとブロック。勢いに任せた二人の動作が、ボールを介して重なった。
    「ぐっ……!」
     漏れ聞こえたのは、どちらの呻き声か。
     そして、驚くべきことに──ジェンティーレは、そのシュートをほぼ相殺した。流石にその凄まじいトルネードシュートの威力に足は弾かれたものの、同時にシュートの勢いもほぼ死に、後ろに控えるバッカスはそれをワンハンドキャッチする。
     ジェンティーレは不敵に笑った。
    「借りは返したぜ……!」
    「……、おまえ……!」
     二人の因縁はディアスにはわからない。しかし、その因縁がジェンティーレに普段以上の力を与えたのは確かかもしれない。なんにせよ、彼に追いつかせたディアスの負けでもあった。唇を噛み締める。
     そしてバッカスがボールを持っているという事実は、予断を許さなかった。先ほどの超ロングパスを思い出す。もう一度あのカウンターをされれば、日向に点を許すことになる。そしてこの時間帯でのそれは試合終了の合図にすらなりうる。反射的にディアスは、させまいと後ろへ向かって走る。
     しかし、意外にもバッカスはそうしなかった。その瞳が見たのは、ダビィだった。
     ボールがダビィに渡る。どこかその二人には不思議な通じ合いがあるような気がした。
    「ちいっ……!」
     火野がダビィへとプレッシャーをかける。しかし、試合後半とあって彼の足はあまり動いていない。一方でダビィはと言えば、中盤のダイナモと呼ばれるそのスタミナを存分に発揮していた。
    「どいてろ、ひよっこ!」
     結果は火を見るよりも明らかだった。ダビィは火野を翻弄し、一瞬で抜き去る。これに関しては火野を責める気も起きない。──そして、中盤でデレピがボールを受け取った。
     トップ下。
     ゲームをコントロールするユベントスの心臓。
    「おれが止める!」
     ディアスはデレピに向かった。ここでこの男を止めねばならぬ、という強い予感。そして、自分なら止められるはずだという自負もまた、あった。
     だが、デレピと相対した時、ディアスはぞっとした。背筋が冷える。
     前半の、いや、後半のデレピとも、それは別人だった。完全に自信と調子を取り戻したらしいその姿は、ユベントスのファンタジスタと呼ぶに相応しかった。隙がない。ボールを取れそうにない。それはディアスの心が先ほどの攻撃失敗で焦っていたせいもあろうが、ディアス自身は気づけなかった。
     そして、鮮やかなフェイント。それでもディアスはついていく。そして日向へのパスをさせまいと、パスコースを塞いだその瞬間──その足にボールをぶつけられた。
     パスをカットできたわけではないのだとは、すぐにわかった。わざとだ。そして跳ね返ったボールが、パスになる。前線へ駆け込んでいたダビィへとそのボールは吸い込まれていき。
    「決めろ、ヒューガ!」
     ダビィからのパス。一旦ボールが後ろへ戻ったかに見せかけた、その虚を突いた。日向にボールが飛んでいく。そして日向は地面を蹴った。
     ざり、と、グラウンドが削れる音を聞いたような気がした。
     パスに合わせた、ノートラップ雷獣シュート。ディフェンダーが駆け寄るものの、そのシュートモーションは早い。止めようにも足を出すのがやっとだったディフェンダーを吹き飛ばすようにして、雷獣が、解き放たれた。

    ***

    「よっしゃあ!」
     ゴールに飛び込んだボールを見て、日向は雄たけびを上げた。二点ビハインドで迎えた後半戦。ついに、三点目をあげたユベントスは逆転に成功したのだ。日向が全身で喜びをあらわにしたのは当然のことと言える。
     すると、そこへダビィとデレピが駆け寄ってきた。
    「やったなこの野郎!」
    「ナイスだぜヒューガ!」
     二人に手荒く歓迎されて、日向は内心で胸がいっぱいになった。けれどそれを押し殺すようにして、日向はダビィににやりと笑いかける。
    「あれえ? おれのゴールは、入れて当然なんじゃなかったでしたっけ? お祝いしてくれるなんて心がお広いなあ」
     するとダビィは、まさしくそんなことは忘れていたとばかりの顔になった。これが見たかったのだ。日向は肩を震わせて笑う。隣のデレピはといえば既に声を上げて笑っていた。
    「ばっ、馬鹿野郎! あれは、その、……ああ、もう!」
     二人を見てダビィは反射的に悪態をつきつつも、やがて控えめな声でこう続けた。
    「おまえのシュートが決まったら、そりゃ、嬉しいに決まってんだろ……!」
     彼の顔は赤らんで、とても恥ずかしそうだ。グラスの奥の視線はそっぽを向いている。とはいえ先輩としてのねぎらいなのか、なんなのか……その手が伸びてきて、わしゃわしゃと日向の頭を撫でた。
     日向より小柄な体でいっぱいに手を伸ばしているのがどうも、先輩としての威厳というよりは、可愛さをそそられるような姿で。日向はもう吹き出してしまった。面白いやら、嬉しいやら。
     でも、それを茶化して楽しむより先に、言わなきゃいけないことがある。
    「ダビィさん、ありがとうございます」
    「何がだ?」
    「いえ、さっきのプレイ。中盤の突破、デレピさんとの連携、お見事でした」
    「……あ? お礼なんて要らねえよ。前半からずっと不甲斐なかったのはおれたちの方だし、あれくらいは、できて当然のこった。だから──その。おれの方こそ、ありがとよ」
     彼はようやく視線を合わせ、真正面から日向を見て、そんな言葉を吐く。今度気恥ずかしくなってしまったのは、日向の方だ。
    「……おれこそ、褒められるようなことなんて」
     そう誤魔化し気味に言うと、デレピがすぐさま遮った。
    「そんなことないさ。おれが立ち直れたのは、ヒューガのおかげだ。だから、ありがとう」
    「そういうこった。ちゃんと受け取っとけ」
     二人の矢継ぎ早な言葉にさらされて、日向は否定できずに折れて、ただ小さく頷いた。それを見たデレピは満足げに頷き返し、そして二人の肩を叩く。
    「さあ、まだ試合は終わってないぞ! 最後まで全力でやりきらなきゃな!」
     そう言って、彼は歩いていった。その背中にはトップ下としての自負と威厳がある気がして、なんだか嬉しくなった。ダビィと日向は顔を見合わせる。ダビィもそうなのだろう、彼の瞳には薄く笑みが浮かんでいた。
    「……おれたちも行きましょっか」
    「おう、そうすっか。あと少しだ。気を抜くなよ」
    「抜きませんって。ハットトリックしたいんで、もう一回パスくださいよー」
    「うっせ! 贅沢言ってんじゃねえよ!」
     背中を軽く叩かれ、日向ははーいとかなんとか、間延びした返事をしながら歩き出した。それをダビィは見送って、それから彼もリスタートのためにボランチとしての位置についたようだ。
     日向は後ろを見た。ダビィと、デレピ。そして、ジェンティーレにバッカス。たくさんの選手が自分を支えてくれているのを感じる。彼らが何と言おうと、自分が点を取れたのは間違いなく彼らのおかげだ。
     自分の背中はどう見えているだろうか。本当のところ、ダビィに褒められたのは嬉しいとともに、最初のゴールのように当たり前だと言ってほしい気持ちもないわけではない。気を遣ってほしくないし、頼ってほしいし──あわよくば、このチームの柱になり、支えていきたい。目標とする大空翼がバルセロナでそうなったように。
     しかし、しばらくそんな物思いに浸った後に、柄にもないな、と日向は思い直した。
     自分は猛虎だ。難しいことは考えず、ひとまずゴールを見据えるのがちょうどいい。
     それから、試合に集中するために一度大きく深呼吸し、前を向いた。

    ***

     試合終了のホイッスルが鳴った。
     ナポリ二点、ユベントス三点。劇的な、ユベントスの逆転勝利──。
     前半とは見違えるほどの戦いぶりを見せ、三点を返し、延長にももつれこませずに試合を終わらせたユベントス。そのメンバーが喜び合っているのが、試合を終えて脱力するディアスの視界に映った。
     悔しい。とんでもなく悔しい。そしてそれと同時に、羨ましい。
     自分は短い準備期間の中で、全く考え方の異なる火野と、ある一定のところで認め合ったつもりでいたし、いいコンビになれるとも思った。連携もちゃんとして、ナポリというチームの色を存分に発揮したつもりだ。けれど、彼ら──ユベントスの選手たちは──チームというよりはまるで家族のようで。お互いに励まし合って、誰かが沈んだ時には誰かが受け止めて。切磋琢磨の空気感の中に、どこか穏やかな友愛の情があって。
    「いいチームだなあ」
     ぼやくと、隣で火野が呟いた。
    「次はリベンジする」
     横を見れば、負けず嫌いの彼らしく、不機嫌そうな眉根で彼は日向を見据えている。
    「そうだな。おれたちも家族になんなきゃなあ!」
     相槌を打ったディアスだが、ついつい考えてたことが口に出てしまった。すると唖然とした火野が、今度はこちらを向いて。
    「おれはお前と家族にはならないが?」
     ……。確かに失言だったが、せめて比喩として受け取ってくれてもよかったのにな。ディアスは苦笑してしまう。ジャパニーズ系の人間は真面目だから困るな──なんて言ったら、火野は怒るかもしれないが。
    「まずはさ、それを冗談と受け取れるところからだぜ」
    「なんだそりゃ。……ま、いいや、なんでも。あとで特訓付き合えよ」
    「りょーかい」
     そう言うと、満足げに頷いた火野は日向に向かって歩いて行った。彼らは永遠のライバルだとか聞いた。積もる話もあるのだろう。ディアスはそれを見送りながら──早くも、次のユベントスとの勝負に、心を躍らせていた。
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