ぎ将きょい✖にょたぜんさま 思えば、姜維は出会ったときからあの尊き存在に心を惹かれてやまなかったのである。
「我らは、ここに降伏する」
世の婦女というものの多くが敗戦に際して、大いに狼狽し、悲嘆に暮れ、泣きわめくものであることを考えると、その公主の態度ははなはだ型破りであった。――いいや、そんな言葉では、とうていその時の姜維の驚きを言い表すことなどできやしない。何せ彼女は先の通り、実に簡潔にして明瞭な一言でもってひとつの国家を終わらせたのだ。その瞬間、永遠に郷里を失ったはずの彼女の頬を飾っていたのは涙ではなく、うっすらとした微笑である。
「この暗愚めのことはいかようにでもしていただいて構いませんが、民にはなんの罪もありません。どうか優しく接してくださいますよう」
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