プロポーズ⭐︎大作戦(仮) 牛島若利には大切な人がいる。博物館の学芸員とバレーボーラーの二足の草鞋を器用に履きこなし、牛島より口が達者で背が高く小顔で目鼻立ちのスラッとした美形の人だ。
大変気難しいようで、牛島曰く「褒めるべきところをストレートに褒めるとなぜか機嫌が悪くなるが、褒めないとそれはそれで拗ねる」とのこと。
美形の人曰く「褒められるのは嬉しいのですが、時と場所を弁えて欲しいだけです」とのこと。
その人の事となると見境がなくなる牛島を御す同じチームの星海光来と、星海と旧知の仲でチームキャプテンの昼神福郎の気苦労は絶えることがない。
人気商売であるスポーツ選手に妙な噂が立ってしまっては、牛島本人はおろかチーム全体の士気に関わる可能性が捨てきれないからだ。
先日ブラックジャッカルの宮侑が、同じチームのオポジット日向翔陽に公開プロポーズをしたことでバレーボール界が沸き立っている最中、牛島が妙なことを言い出さないか月島は内心ヒヤヒヤしていた。
その牛島の相手、昨シーズンDivision1に昇格した仙台フロッグスの月島蛍はアドラーズ内の気苦労は知る由もなく、練習試合では意気揚々と得意の煽りをしてくるものだからアドラーズコートは堪ったものではない。
観客がいる前では際どい煽りをしてこないところが狡猾だと、星海は毎回青筋を浮かべて対戦している。月島の元チームメイトである影山は煽り事態には反応するものの、それがどういう意味を持っているのかは理解していない。