どんないろーがすき?あーか! 8月中の酷暑はどこへ行ったのか、9月に入って関東の気温はぐっと低くなった。ニュースでは一過性のものではあると言ってはいたけれど、気温差から流石に体がしんどい。
「冬物、出すまででもないんだけどね。シャツは長袖だし、地下はそこまで気温変動無いし。」
「奥日光は10度らしい。普段からそこまではいかねぇけど、東京よりは流石に冷えてんな。」
南栗橋駅に用事があって来てみれば、日光はいつもの黒Tシャツではなくて、つなぎをしっかり着込んでいた。筋肉量が多くても、流石に寒かったらしい。
「珍しく赤いなぁ、と思ってさ。」
普段と違うからかそれとも元の気質なのか、目を引く。
「日光さ、今日は東京戻り?」
「そうだな。なんだ?するか?」
そこまで身長差のない日光を見上げる。少しだけ口元が意地悪そうに歪んでいた。
「…あとで連絡する。じゃあ、僕はもう戻るから。」
乗る予定だった登り電車がホームに滑り込んでくる。開いたドアを確認してすぐに乗り込む。寒い寒いと思っていたけれど、冷たい風が心地好かった。
「なぁ日比谷。お前も、赤くなってたぞ。」
耳元で囁けば、昼に見た表情が再生される。普段は表情が読みづらいのに意外に分かりやすいところ、嫌いじゃない。