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    彼との記念日を楽しむために

    お題「時計」「屋上」
    司類ワンドロ23

    2479文字(所要時間約5分)

    ##司類

    ひやりと肌を刺す冬の季節も終わりを告げて、今、季節は花開く春にさしかかっていた。
     司は高校へ向かう朝の道すがら、少しばかり胃の痛い悩みを抱えていた。

     彼が目指しているのは六月。恋人である類の誕生日についての事だった。
     彼と司が恋人同士になったのはつい二ヶ月前のバレンタイン。
     司が告げて、彼がその気持ちを受け止めた。
     だから、これから迎える彼の誕生日は、二人にとっての初めての誕生日となるのだった。

     まだあと二ヶ月ある。けれど、もう二ヶ月しかないとも言える。
     『スター』たる天馬司にとって初めての恋人を祝う誕生日。
     もちろんその前には自分自身の誕生日もあるのだが、こと『演出家』として華々しい計画を立ててくる恋人がその相手とあれば、少しばかり思考を凝らすのが早かったとて、問題はないのだろう。

    『司くん。司くんが好きなのは魚料理だったかい?』

     つい先日、ふと『何となく』を装って問いかけられた類の言葉を思い出す。
     その言葉の真意に気づかなかったふりをして言葉を返しつつ、類も、動いているのだなと少しばかりの焦りを感じたのだった。

     類は、司にとって何でもできるスペシャリストであった。
     頭がいい。度胸がある。それに、何に対してでも貪欲な程に深い探究心をもって、どこまででも成長を続けている。
     それが味方であれば、どれだけ心強い事だろう。
     けれど、ことこの『誕生日』というところにあっては、そんな彼を一つ驚かせるような『何か』で彼氏としての面目を保ちたいという純粋な思いがあるのだった。

    「うーーーむ」

     司は低い唸り声を挙げながら、一人通学路を歩んでいく。


     ***


    「おや司くん、珍しいね。予告もなく君が来るなんて」
    「……ああ、まあ。な?」

     そうやって司がもやもやと考え込んでいる間に、早い午前は過ぎ、いつの間には昼休みの時刻となっていた。
     いつもであれば、教室やその日に居心地のいい場所を選定し、『天馬スペシャルな特製弁当』を広げるのだが、ふと今日に限っては、敵情視察、ならぬ類視察のために、この屋上までのこのこと上がってきたのであった。

    「今日もお弁当、作ってきたのかい?」
    「類は購買のパンか。……相変わらず、野菜は入っていないんだな」
    「うん。野菜はちょっと、僕の口には合わないみたいだね」

     一人、風に吹かれるがままパンを食んでいる彼の隣に座る。
     少しだけ、彼の温もりを感じるようで、身体が暖かくなってくる。
     類は、よくこの場所で昼を食べているようだった。
     司も、彼がこの場所にいると知るれた日は、こうして一緒に食べているのだが。

    「まぁ……お前が身体を悪くしないのであれば、良いのかもしれないけどな……」
    「ふふ、司くん。僕のこと、そんなに気にかけてくれるんだね?」
    「それは――、そうだろう! 類は、大切な恋人だからな!」

     胸を張って彼に向き直る。彼は、少し驚いたような、不思議そうな顔をしているが、司は『伝えたい事は全て伝えてゆく主義』であったので、そのまま言いたいことを続けていく。

    「類は、昔から野菜が苦手だったのか?」
    「うーん……そうだねぇ。少なくとも記憶がある中で、野菜を食べた事はなかったね」

    「それは、逆に面倒ではなかったか?」
    「いいや、そうでもないよ。両親は特に指摘することもなかったし、栄養なら、野菜を摂らなくても大丈夫なだけ別のものを食べているしね」

    「……お前のそういう所、逆にすごいなと思うぞ……」
    「ふふふ、お褒めに預かり、光栄だよ」
    「褒めてはいないんだがな……」

     ふぅ、と何気ない会話を過ごして気持ちが落ち着いてくる。
     なぜだか、今日は類のために色々と思案してしまった日であった。
     類。彼の、誕生日。
     彼を喜ばせるには一体どうしたら良いのか。

     けれどそんな彼の為を想いすぎて疲れてしまっては本末転倒だ。
     そういえば、『お兄ちゃんはすぐやりすぎる』などと妹に言われた気がする。

     司は、ふう、と一息ついて、身体の力を抜いた。
     類に、与えてやりたいものは何か。
     このタイミングで少し、思った事がある。

    「……っ! 司くん、今日は本当に珍しいねぇ」
    「嫌、じゃないか?」
    「だ……大丈夫。司くんこそ、何か体調でも悪いのかい?」
    「うむ。ちょっと、思うところがあってな……。類。少し、このままで良いか?」

     司は、すぐ近くにいる類の肩にもたれかかってみる。
     頬を彼の肩に載せ、視界を少しばかり傾ける。背は高いクセ、割に細身の類の肩は少しゴツゴツとしている。けれど、触れてみるとその薄い肌は暖かく温もっていて、ひどく心地よい。

    「これだな」
    「? どういう事だい?」
    「ふふふ……類にはまだ教えん! だが、楽しみにしていてくれ!」

     彼にもたれかかり腕組をして、合点納得の行く答えを思いつく。
     類に、与えてやりたいものは。
     司が類にしてやりたい事は。

     類は、司の言葉にクエスチョンマークを浮かべただけのようではあるが、それ以上に言及してくることはなかった。
     温もりと、二人の穏やかな時間が流れていく。
     司がほしいのは、そして彼が類に与えてやりたいと思うのは、まさにこの時間を共にいつまでも、過ごしてゆきたいという想いなのだった。

    「……類は、ジンクスのようなものを信じる方か?」
    「ジンクス? ……そうだねぇ。よく言われている事くらいなら、少しは知っているけどね。絶対に信じている程ではないけれど」
    「そうか。……まぁ、いいだろう」

     そして司は、また少し考える。
     『時計』をプレゼントしよう。そう思う。

     その贈り物には『同じ時間を共有したい』という裏の意味がある。
     ジンクスや占いの好きな妹に、前々から何度もそういう心理テストめいた話を聞かされていて助かった。
     類に、そして類と共に歩む時を贈りたい。司はそう思ったのだ。

    「もう少し、このままでいさせてくれ」
    「……うん、お昼休みの間なら、大丈夫だよ」

     いつまでも離れない司を、類はずっと受け止めたまま隣に座してくれている。
     司はその温もりを肌に受け止めるようにして味わいながら、二人でどこまでも、この時を刻んで行けたらと思うのだった。
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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