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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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    TRAINING怪我をした類

    お題「出来損ないの土地」
    15分トレーニング 19

    993文字(所要時間約2分)
    慣れた様子で手を取られ、司にされるがままの手のひらを見つめていた。

    「ぅ、」
    「痛いか?」
    「……いや、大丈夫だよ」

     類が怪我をした。それも、司のセカイの中で。
     元よりその原因は類自身にあり、司は悪くない。何よりその傷だって随分小さなもので、普段の類であれば放置してしまう程度の浅いものだった。
     けれども彼はどこからそれを感知してきたのか、類が手のひらに小さな切り傷を作ったかと思うと、すぐさま飛び込んできて彼を救護しはじめたのだった。

    「救急セットなんて、このセカイにもあったんだねぇ」
    「それは、そうだろう! どのお前みたいな奴はいるからな」
    「ふふふ、皮肉だねぇ。……いや、申し訳ないとは思っているよ」

     彼は慣れた様子で類の切り傷に消毒液を塗り、柔らかい布で包んだかと思うと、その上から包帯できれいに手のひらをぐるぐる巻にする。随分上手だねぇ、と聞くと、前に習ったんだ、と返ってくる。

    「習った?」
    「……ああ。ちょうど、咲希の入院していた病院でそういうセミナーをしていてな。折角だからと思って習っていたのだが……」
    「うん」

     するすると施された施術は一瞬のうちに終わって 1078

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    TRAININGアルパカを着ている類

    お題「アルパカの本」
    15分トレーニング 18

    1071文字(所要時間約2分)
    「司くん、こういうのはどうだい?」
    「…………類、よくそんな物見つけてきたな?」

     類が今、着こなしているのはもこもことした綿つきのコスプレ衣装。ただしコスプレ、とは言っても何も性的な魅力のあるタイプのそれでなく、どことなくチープで、いわゆる宴会衣装に相当するような形の物ではあるのだが。
     類の着るそれに呆れているような表情で司は見つめ返してくる。
     それが、何となく楽しくなって、衣装の装飾品として備え付けられていたもこもこの手袋で彼の頬に触れてやる。

    「……っ、おい! やめろ!」
    「ふふふ、まぁこの感触は良いんじゃあないかな? 子どもたちも、喜んでくれそうだしね」
    「しかしだな……!」

     彼にちょっかいをかけるために、類が動くと頭の先が少しぐらぐらとした。
     この衣装には、類の頭の上に当たる場所から上に生えるようにして、何とも滑稽なアルパカの顔がくっついているのであった。

    「司くん。アルパカという生き物を見たことはあるかい? アルパカってね、結構シビアないきものなんだ。餌を持ってるとすごいスピードで近寄ってくる。でも、愛嬌を振りまくタイプではないから、食べ終わったらすぐにいな 1116

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    DONE五十歳になった司類

    お題「真紅の怒りをまといしお茶」
    15分トレーニング 17 ※作業時間1H

    2990文字(所要時間約6分)
    「類、お前も呑むか?」
    「……ああ、最初から赤ワインなんて、珍しいねぇ」
    「うむ。これなら、呑みやすそうだしな」
    「司くんは本当、食べ物に詳しくなったよねぇ」

     海に沈む夕日を眺めていた。しっかりと、この景色を忘れないように。
     爽やかに流れる海風が涼しい。
     まだ、夏は始まったばかりだ。薄いYシャツだけではこの老体に応えるかと思ったが、思っていた以上に今日は天候がよく、むしろ少しばかり汗ばむような、そんな行楽日和の一日だった。

     類が、このヴィラのバルコニーに一人佇んでいる間、共にこの場所へ来ていた司は、いそいそと二人夕涼みをする準備をしていたようだ。
     彼の、年なりに少しかすれた声に振り返り、その方を見てやると、そこには備え付けられた真っ白なソファテーブルの中央に、先程二人で買ってきたワインと、色とりどりのフルーツが並べられているのだった。

    「ディナーまではあと二時間もある。少し、この場所で休むぞ」

     先に座っている司は、同じくキッチンから持ってきたらしいフルーツナイフで丁寧にオレンジを剥いていた。彼は相変わらず料理がうまい。五十を超えて、未だに料理という物を覚えてこなかっ 3071

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    TRAINING類に振り回される司

    お題「戦争とあの人」
    15分トレーニング 15

    2337文字(所要時間約5分)
    司は、いつもより遅い速度で歩いていた。家から学校へ向かう通学路。
     天気は晴れやかで上々で、春も過ぎ、初夏の爽やかな風が緩やかに頬を撫ぜてゆくような日だった。
     これだけ、良い日であれば俄然気持ちも昂ぶってくるというのが人間の性であるはずなのに、司の気持ちは前述の通りに全く晴れていなかった。かと言って雨のように吹きすさんでいるわけではない、どことなくぼんやりと暗い曇天で、もやもやと、薄暗い気持ちだけに取り憑かれているのだった。

     原因は、わかっている。単純な寝不足だ。
     昨日は両親が共に外泊し、咲希もバイトで疲れたといって早く寝てしまっていたのだった。
     だから広いリビングには一人だけ。
     折角なのだから、と浮足立って大画面のテレビを占領し、定期契約をしている映画サイトの扉を開いたのが運の尽きだった。

    「うう……」

     いつもどおりに進んでいるはずなのに、体が弱っているのかなかなか前へと進まない。
     何も学校が嫌な訳じゃない。
     けれど、この朝の通学という動作そのものが、寝不足の体には一番厳しいのであった。

     ぐるぐると動かない頭の中で、昨日、見てしまった映画のワンシーンが思い起 2409

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    TRAINING学校でキスをする司類

    お題「真実の策略」
    15分トレーニング 14

    1620文字(所要時間約4分)
    触れ合う唇が熱を帯びてきて、ほんのりと身体が暖かくなってくる。
     彼がいつまでも離れてくれないせいで、荒く上がってきた息が二人の間にこもってしまう。
     一度、離れたと思ったらまた唇の真ん中を食まれてしまい、思わず声が漏れていく。

    「あ、」

     しかも、そこで思わず唇を開いてしまった一瞬の隙を目ざとく見つけられてしまい、彼の柔らかな舌が類の口内に割り込んでくる。
     ぬるぬると、けれど類の舌を味わうように、彼はキスという愛撫を続けていく。
     彼の舌に翻弄されたまま、けれどそれを続けてほしくなってしまった類は、その場所から一切動けなくなってしまうのだった。

    「――司くん、キス、上手くなったよね」

     長いキスを終えた後、ようやく開放された類が呟くように言う。
     ここは学校である。これ以上、二人唇を合わせていたらとても大変な事になってしまう。
     類は自身の感情とは逆に理性をもって、何とか彼を引き剥がして開放されたところだった。

    「……ああ! 色々と、研究したからな!」

     一方の司は、類と同じように息を上げながら、しかしどこか爽やかにそう言うのだ。
     もとより、全てに対して一直線で素直す 1577

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    TRAINING散らかる部屋問題について

    お題「免れたロボット」
    15分トレーニング 12

    1547文字(所要時間約3分)
    司はガシャガシャとロボットの残骸をかき分けながら、類の部屋に入り込んできた。
     その折には「うわ」だの「いたい」だのといううめき声オプションがついている。

    「類、そろそろまずいんじゃないのか?」
    「そろそろまずい? 何がだい?」
    「……この部屋の事だ! 一体、どうやったらこの短期間でこんなに散らかるんだ?」

     司は玄関よろしくマットを敷いた入口で靴を脱いでしまった事を少しばかり後悔しているらしい。
     ぶつぶつと少しばかり小さく悪態を付きながら、それでも部屋に呼び入れた類のすぐ近くまで、しっかりと来てくれるのである。

    「あぁ。最近新しいロボットを作っていたからね。そうだ! 司くん、見るかい? 昨日キミのためにとてもいいロボットを作ったんだ……!」
    「いいやいい! 類。むしろお前はどうやってこの部屋に入ったんだ……?」

     彼は類が少し前に用意していた来客用椅子をしっかりと見つけ、何とかその場所に座り込む。どうしても気になったのか、手元の届く範囲でしっかりと、積み上げられたおもちゃのようなそれらを少しずつ片付け初めている。

    「……ああ。いつ、入ったんだったかな? 確か、部屋に入った 1607

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    DONE彼との記念日を楽しむために

    お題「時計」「屋上」
    司類ワンドロ23

    2479文字(所要時間約5分)
    ひやりと肌を刺す冬の季節も終わりを告げて、今、季節は花開く春にさしかかっていた。
     司は高校へ向かう朝の道すがら、少しばかり胃の痛い悩みを抱えていた。

     彼が目指しているのは六月。恋人である類の誕生日についての事だった。
     彼と司が恋人同士になったのはつい二ヶ月前のバレンタイン。
     司が告げて、彼がその気持ちを受け止めた。
     だから、これから迎える彼の誕生日は、二人にとっての初めての誕生日となるのだった。

     まだあと二ヶ月ある。けれど、もう二ヶ月しかないとも言える。
     『スター』たる天馬司にとって初めての恋人を祝う誕生日。
     もちろんその前には自分自身の誕生日もあるのだが、こと『演出家』として華々しい計画を立ててくる恋人がその相手とあれば、少しばかり思考を凝らすのが早かったとて、問題はないのだろう。

    『司くん。司くんが好きなのは魚料理だったかい?』

     つい先日、ふと『何となく』を装って問いかけられた類の言葉を思い出す。
     その言葉の真意に気づかなかったふりをして言葉を返しつつ、類も、動いているのだなと少しばかりの焦りを感じたのだった。

     類は、司にとって何でもできるスペシャリ 2586

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    TRAINING司のセカイに咲いた花

    お題「僕が愛した薔薇」
    15分トレーニング 3

    1238文字(所要時間約3分)
    「おや?」

     神代類は、思いがけない光景に思わず小さな声を漏らした。
     ワンダーランズ×ショウタイム、練習時間の合間に司のセカイを散歩していた時の事だった。

     あいも変わらず派手で、にぎやかすぎるセカイ。
     けれど、それが彼らしくて本当に面白く、類は少しの暇があればその場所を散歩していたのだが。

    「……こんな所、前にはなかったはず……?」

     類が見かけたその場所は、あまりにも小さな花壇であった。
     たった一本の赤いバラの花がその中央に咲いていて、それを取り囲むようにこの世界には少しだけそぐわないようなシックな色の囲いで囲まれている。
     このセカイといえば、ぬいぐるみも花も、全てがカラフルでにぎやかで、なんなら顔や感情だって持っている者たちばかりであったのに。しかしこの場所の花ときたら、それとは全く違う、しんと静かで大人のようで、ひんやりと冷えているような印象さえあるのだった。

     一歩、その場所に歩んでみると、そこだけが少し陰っているようにも見えて、不思議な気持ちがする。
     一瞬これが、司の抱える何かしらの闇なのかもしれないとは思ったが、この場所の変わらぬ心地よさから顧みてもみ 1287

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    TRAINING司と類の日常。

    お題「素晴らしい教室」
    15分トレーニング 1

    902文字(所要時間約2分)
    天馬司の机は教室の廊下側にある。
     2Aの教室は、それでなくとも階段のすぐ近くにあり、とてもよく見渡せるいい場所だった。

     類は、そのすぐ近くの廊下をひた歩く。
     時刻は午後一時。
     昼休みも終わり、気だるい五時限目が始まろうという時刻だった。

    「類!」

     聞き慣れた大声が聞こえてきた、ような気がした。
     実際は、分厚い壁よろしく張られたガラス越しに声を張られたようで、類の耳に彼の声は聞こえてこない。けれど、ちょうど屋上から降りてきた類が目の前の教室を見やると、その目の前にはこちらを振り向いて、目立つ大げさな動作で手を振りながら、激しい自己主張をしている司の姿があるのだった。

     司は、類の恋人だった。
     つい最近、彼に押し入るように告白されて、類はうっかり承諾してしまったのだった。

     恋人同士になったからと言って、二人の関係性な何一つ変わっていない。
     こうしてお昼の時間だって、相変わらず類は一人で屋上へ行き優雅な時間を過ごしていたし、司だって変わらず、教室の友人たちと健康的な食事をするなり好きにしていたようだった。

     けれど、司はそれでもめげる事はない。
     類が昼終わりに 933

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    DONE司と類のバレンタイン(2/2)
    ふたりが恋人同士になるまでの話です。

    5838文字(所要時間約11分)
    ◇◇◇

     その後、二人の関係はどうなったのかと言うと『本当に何も進まなかった』のだった。

     お互いに年若い高校生でありながら、少しばかり役に入り込める舞台役者の端くれだった。
     そして、お互いに強情なところあって、今までの関係を壊さないように丁寧に、細心の注意を払って今まで通りを貫いてしまったのだ。

    『類、昨日言っていたアイディアだが……』
    『わかってるよ、司くん。そのためのカラクリも、明日にはできると思うよ』

     それくらいの『いつも通り』は変わらずこなし続けてきた。
     それはえむにも、寧々にも気づかる事はなく、次第にあの思い出は夢の中の出来事だったのではないか、などと思ってしまう程度にはいつもどおりだったのである。

     あれから二ヶ月程経っている。

     類は少しばかりのさびしさのような感情を抱えてはいるものの、司や、仲間たちとの関係がまだ壊れていないことをとても幸福に思っていた。
     安寧と、穏やかに紡げる関係性だけが残されている。
     類にとって自分自身の居場所という存在が、手のひらの中からこぼれ落ちないでいてくれることにただ感謝しているのだった。

     ◇◇◇

    「あ、」

      6086

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    DONE司と類のバレンタイン(1/2)
    ふたりが恋人同士になるまでの話です。

    7686文字(所要時間約15分)
    長く続いた冬の季節も過ぎ、陽の光が仄かに色めいてきた頃。
     『今年』という年号にも既に慣れ、人々は新たな春の季節に胸を時めかせている頃だ。

     二月十四日、バレンタイン。
     好き合う者同士が愛情という名の甘い菓子を贈り合い、慈しみ合うという特別な一日である。
     特に、学生という身分の者達には正月や盆の明け暮れよりもより特別な意味がある日であり、彼らはその言葉の響きに色めき合って、悲喜こもごもの思い出を作るのだ。

     しかし、この神代類にとって、この日はもう既に『終わった日』であった。
     彼は舞台の演出家としてこの日を一年の中でも特別な日としては理解しているけれど、それもショービジネスとしての側面としてだけである。
     彼にとっての『バレンタイン』という日は、だいたい去年の年末頃、彼の仲間達と行うバレンタインショーを企画していた時が一番のピークであり、そしてつい先日の土日にそのイベントを公演し終えてからは、もう過去に起こった日、という感覚なのだった。

     彼は朝のうちに下駄箱の中に隠された幾つかの小箱を把握したけれど、それに対しても大きな気持の変動を持つ事はなかった。
     元より良くも悪くも 7956