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    怪我をした類

    お題「出来損ないの土地」
    15分トレーニング 19

    993文字(所要時間約2分)

    ##司類

    慣れた様子で手を取られ、司にされるがままの手のひらを見つめていた。

    「ぅ、」
    「痛いか?」
    「……いや、大丈夫だよ」

     類が怪我をした。それも、司のセカイの中で。
     元よりその原因は類自身にあり、司は悪くない。何よりその傷だって随分小さなもので、普段の類であれば放置してしまう程度の浅いものだった。
     けれども彼はどこからそれを感知してきたのか、類が手のひらに小さな切り傷を作ったかと思うと、すぐさま飛び込んできて彼を救護しはじめたのだった。

    「救急セットなんて、このセカイにもあったんだねぇ」
    「それは、そうだろう! どのお前みたいな奴はいるからな」
    「ふふふ、皮肉だねぇ。……いや、申し訳ないとは思っているよ」

     彼は慣れた様子で類の切り傷に消毒液を塗り、柔らかい布で包んだかと思うと、その上から包帯できれいに手のひらをぐるぐる巻にする。随分上手だねぇ、と聞くと、前に習ったんだ、と返ってくる。

    「習った?」
    「……ああ。ちょうど、咲希の入院していた病院でそういうセミナーをしていてな。折角だからと思って習っていたのだが……」
    「うん」

     するすると施された施術は一瞬のうちに終わってしまう。左手が、まるで大怪我をしてしまったようになっている。けれど、施された司の気持ちが暖かく、甘んじて受けて見るのも悪くはないな、と思うのであった。

    「お前に、いや、オレの近くで誰かが怪我をしていても、治せるというのは嬉しいものだな」
    「……ふふ、司くんって結構、責任感の強い人だよね」
    「ああ! それは、オレがこのワンダーランズ×ショウタイムの座長だからな!」

     相変わらずの口上ではあるが、類はふふ、と笑いたくなった。
     それは皮肉や冷笑のそれでなく、心から、温かい気持ちが溢れたせいで浮かんできた笑みだ。
     天馬司。このショーユニットの座長である彼は、そういう男気のある所を持っている。

    「ああ、だが……」

     類は、彼の口上をまるで外野のように楽しんでいたのだが、ふと振り返り話しかけられてはたと現実に目を向けた。

    「どうしたんだい?」
    「ああ、類。だが、いくらこのセカイが気になったとしても、無理はしないでくれ。オレは、お前が傷つくのを見たくはないぞ」

     つん、とまるで子供のように額を指でつつかれて諭される。
     もう子供ではないんだから、という言葉が漏れてしまったが、こと座長モードである彼には甘んじる事にした類だったので、そうだねぇ、と一つ言葉を落とすことにして、この会話を終わらせてしまったのだった。



    [20210415]
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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