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    阿国さんから忘れられたままの凌統の話
    オロ2までの友好関係がオロ3でなきものとされてしまった時の悲しみの捏造作文、の修正ver

    友情出演:甘興覇

    君の知らない春が来る この素っ頓狂な世界に来るのは、どうやら今回がはじめてではないらしい。
     朧げながら戻りつつある記憶の中には、つい先日『はじめまして』と挨拶を交わした人々の姿があった。その後の少しの気まずさと、蘇る温かさがむず痒い。けれども、ちっとも嫌な気はしなくて、改めて『久しぶり』と声を掛けては笑いあった。
     その中で唯一人、俺の『久しぶり』に首を傾げた人がいた。もしやと思って名を告げると、彼女は覚えのある晴れやかな笑顔で『はじめまして』と挨拶した。



    「おまえ、へんだぞ」
     向かいで飯を食らう甘寧が、肉を頬張りながら言った。
     んなめいっぱいに詰め込んで喋るんじゃないっつーの。ぽろぽろ零れる食べカスを見やると、甘寧はへいへいと肩をすぼめて咀嚼に専念した。
    「なに、変って」
     食べ終えたところを見計らって、飯屋の店員が置いていった茶を渡した。
     甘寧は一瞬固まって、恐る恐る茶器を受け取った。身構えなくても、毒なんざ入れないっての。
    「これ」
    「は?」
    「これがまずおかしい」
     俺が渡した茶器を、不審物でも見つけたみたいに甘寧が指差す。
    「だから、別になにも仕込んじゃいないよ」
     甘寧はしばしぽかんと呆けた後、わざとらしくでかい溜息を吐いて、茶を飲み干した。
    「そういうことを言ってんじゃねぇんだよ」
    「だったらなに」
    「お前、俺に飯の時の世話なんざしたことねぇじゃねぇか」
     大皿の飯を取り分ける、空いた杯に飲み物を注ぐ、小皿をこまめに取り替える。
     小さなことにも気を配れる男になれ、という両親の教えに従い生きている俺に、そういうこと言う?へぇ?
    「つまり?俺が気配りの出来ない男だと、思われてたってわけ?あんたみたいに?」
    「ちげーわ、その逆」
     これは以外な返答だ。食って掛かりそうな上体を、わずかに後ろへ逸らす。
     甘寧は、俺を馬鹿にしたことはとりあえず置いとくけどよ……と頭に置いて言った。
    「おっさんとか陸遜とか、一緒に飯食いに行った奴の世話をいちいち焼くお前が、俺には徹底してそういうことしねぇじゃねぇか」
    「そりゃあ……癪だからね?」
    「だろ?」
     いや、そこで同意されても。
     甘寧はうんうんと頷いて続ける。
    「そんな奴が急に飯よそってきたり、食後に飲み物渡してきたりしたら、ちょっと、びっくりするだろうが」
    「確かに……けど俺、そんな屈辱的なことをした記憶は、」
    「凌統、手元見てみろ」
     まあ、愕然としたよね。
     飯を食い終わった後、下げやすいように皿を重ねる癖がついてるのは確かなんだけど。
    「俺の分の皿まで重ねてやがる」
    「え、こわ………」
    「だろ!?だからお前今日変だぞっつってんだよ!!」
     ようやく理解を得られたことで満足気な甘寧は、俺の分の勘定までして席を立った。
    「ちょっと、あんたまでこわいことやめてくれる?」
     仕返しだと笑った甘寧の後を追って、俺は席を立った。



    君の知らない春が来る



    「自分は思い出したけど、向こうは忘れたまま……って相手、いるかい?」
    「あー……いいや?反乱軍にいる奴らは粗方思い出したし、向こうも俺のことは思い出してたぜ」
     見覚えのあるような、ないような。異国の風情と少しの禍々しさが混じった町をぶらつく。
     確か、以前にもこの町を散策した。この角を右に曲がった通りに甘い菓子を取り扱う店が、
    「…やっぱりある」
    「あ?」
    「そこの菓子店、コンペイトウって絶品の菓子があるよ。陸遜と朱然に買っていってあげたら?」
    「へぇ。ちっと覗いてみっか」
     店の外で甘寧を待つ間、広がる町並みを改めて確かめた。
     この向かいの長屋には白い猫が飼われていたっけ。裏路地の怪しげな呪いの店の前には、もう何年も使われていないという古井戸があった。肝試しにやってくる餓鬼共を脅かすのを日課にしてるじい様が、表通りで団子を売ってて、それを食べながら歩いた。
     それから確か、きれいな装飾の箱を見つけたんだ。中を見るため蓋を開けようにも、びくともしない小箱。彼女が数回それを振ると、いとも容易く蓋が開いた。いっとう大事なものをしまい込むための、仕掛けのついた箱なのだそうだ。
     その時に、何か、話をして───ああだめだ。やっぱりそこだけモヤがかって思い出せない。
    「買えるかあんなもん!!」
     予想通りの反応で、甘寧が店から飛び出してきた。
    「数粒で城が買えるお値段らしいからねぇ」
    「知ってたのかよ!!」
    「知らなかったら、あんたに教えてないよ」
     ああ言えばこう言いやがる!ぎりぎり歯ぎしりする甘寧を放って、再び歩き出す。
     そうそう、前もこんな風なやりとりをして歩いたんだった。
     相手はこんな、筋肉の塊じゃなかったけど。
    「んで?お前があの店で騙された相手ってのが、お前のことを忘れたままの奴って話か?」
    「……あんたのそういう所が、俺はどうにも好かないよ」
     因縁云々を除いてもね。俺は小声でそう付け足したけど、甘寧は「俺の好きな所なんざひとっつもねぇくせに」と馬鹿にでかい声で言った。
     そうそう、そんな所もだ。



    「あの後、俺なりに考えてみたんだけどよ」
     なんで考えた。
     なんで、こういう時に限って、無い頭を振り絞って、考えてみるんだお前は。
    「こいつだろ?お前が言ってた奴って」
     こういう所が、本っ当に、もう。
     俺がらしくもなく動揺した一日から数日後、甘寧がなんと件の人物を伴ってやってきた。
    「黙って着いて来い言わはるから、来たんやけど……やぁん、またしゅっとしたええ男はんと会うてしもたわぁ」
     甘寧の隣でぽっと頬を染める彼女は、相変わらずの彼女だった。自由奔放で、掴みどころがなくて、自然と目で追ってしまう、異国の女の子。
    「けどうち、ちょっと強引なお人も好きみたいどす」
     押しの強すぎる彼女は、すすすと甘寧の隣に並んだ。
     美女の上目遣いだってのに、甘寧はあからさまに警戒していて「………こいつで合ってるか?」と、小声で確認してきた。情けなく、後退りしながら。
     認めたくない。こいつに筒抜けだったことを。認めたくない、けれど。
     大当たりだよ馬鹿野郎。
    「あーっと、ごめんね?急に連れてきたりして。乱暴なことされなかっ、」
    「うちのこと心配してくらはるん?こないな男前にそない優しゅうされてもうたら……もうっ嬉しおす!」
     ち、近いな。しかも、食い気味だ。
     俺が半歩下がるよりも早く、彼女はずいっと顔を近づけた。
    「甘寧様に連れてきてもらう途中で、聞きましたえ。凌統様のこと」
     名前を呼ばれただけで、どきりとした。
     彼女の澄み切った声が、どうしようもなく心地良い。夢や幻なんかじゃなくて、あの時間は確かに存在していたんだと実感する。
    「うちのこと、覚えててくれはったんやねぇ」
     白魚のようなきめ細やかできれいな手が、俺の手を掴む。
     誘われるがまま、彼女の頬に手を添えた。
    「きれいなお顔、色っぽい泣き黒子、逞しゅうて大きな手。ぜんぶぜんぶ、懐かしいはずやのに……」
     堪忍え、と目を伏せて、背伸びをしていた彼女は踵を下ろした。
     やっぱり、そうか。彼女は、俺のことを、
    「阿国さん、俺は」
    「きっと、あん時のうちがしまいこんでしもうたんやわぁ」
    「え?」
    「凌統様とのこと独り占めしとうて。欲張りやからなぁ、うち」
     彼女が鈴を転がしたような声で笑う。
     ああ、そうだった。以前も、そんなことを言っていたっけ。



    『箱の中には何を入れるんだい?』
    『いっとう大事なもんをしまうんどす』
    『阿国さんだったら?』
    『やぁん!そないなこと、恥ずかしゅうてよう言わんわぁ』
    『おっと、野暮だったかな。ごめんよ』
    『そや。凌統様のこと、しもうてまいましょ』
    『答えるんだ………って、俺?』
    『開け方も忘れるくらい大事に大事にしとったら、根の国の神さんにも気づかれまへん。ずぅっとうちだけのもんどす』



    「……大事にしまってくれたのかな」
     ─────凌統様もお口堅うして、いつか忘れとくれやす。
     細い人差し指を口元に当てられて、悪戯っぽく笑う姿が脳裏を過ぎる。
    「凌統様?」
    「……あ、ごめん。かわいいなと思って」
     朱色の頭飾りに青葉が何枚か張り付いている。ちょっと失礼と断って、それらを摘んだ。
     甘寧の奴、どんな案内をしたのだろう。彼女も大概行動派だけど。
    「葉っぱまでくっつけちゃって。一体どこ通ってきたんだい?」
     あの猪に負けじと追いつく姿が目に浮かんで、俺はつい笑ってしまった。
     すると、目をまん丸にした彼女がぱちぱちと二、三度瞬いた。右と左を一度ずつ見て、さっと両頬を抑えた。
     どうかしたのか聞く前に、彼女はくるりと背を向けてしまった。通りの向こうで、神経質そうな色男が彼女を呼んでいる。これから出撃だそうだ。
     後ろ髪を引かれる思いではあるけれど、お役目ならば仕方ない。いい男の隣に立つ彼女は、そこにあるべくしてあるようだし、なにより楽しそうだ。
     いってらっしゃい、と声をかけると、振り向いた彼女が柔和に微笑んだ。
    「今度のうちともぎょうさんおしゃべりしとくれやす。白いおまんじゅうみたいな猫ちゃんと会うて、町の子らと肝試しして、お団子食べながら歩くんどす。かいらし小物選んでもろて、それから、」
    「コンペイトウは、また今度ね」
    「もう、いけず!」
     お日様の下、桃色の和傘が開いた。
     春を纏った彼女が、そこにいる。





     すっかり忘れていたのだけど。
    「………………終わったか?」
     両手で顔を覆い隠した直立不動の甘寧も、そこにいた。
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    DONEこの後事情を知った権に「おま、お前たち……このっ………馬鹿者ーーーーー!!!!!!!」ってめちゃくちゃ泣かれる

    7月7日の蒙甘というか、蒙と甘
    ※ピクブラ掲載作品→一時的にポイピク避難中
    ミルキーウェイにはほど遠い 酒盛りを終えた二人は悪童よろしく、隠れ処の屋根へとよじ登った。大の男が二人屋根に腰を下ろすと、ぎしりと嫌な音を立てて木材が軋む。したたかに酔いが回った頭は、その音がなにやら愉快なものだと判断したらしく、揃ってけたけたと笑いあった。
    「一年、か」
     一息ついた呂蒙が、名残惜しそうに呟いた。寝そべっていた甘寧は、隣に座る呂蒙を横目でちらと見る。
    「なんだよ。頼んできたそばから惜しくなっちまったか」
     呂蒙はふむ、と顎を摩る。しばし考えて、そうかもしれんと肯定した。
    「彼の地は要所中の要所だ。お前ほどの適任者はいないという殿のお考えに俺も賛同したからこそ、こうして話しにきたわけだが」
     頼みがあると隠れ処に呼び出され、なにかと思えば川向こうの要所を一年間守りきれという。上官からの、ましてや他でもない呂蒙の頼みだ。断る理由などないというのに、このお人好しの上官殿は面目ないという風体で頭を下げた。
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