冬の夜に 文字通り歯の根が合わなくなる寒さのせいで、吐いた白い息が大げさではなく端から凍りつくのではないかと思うほどで、終いには眩しくもないのに視界がチカチカとしてきた。一枚しかない毛羽立ったホコリ臭い毛布を二人で分け合い体に掛けるも、処々の隙間から、なけなしの熱が容赦なく逃げていく。いっそのこと頭からすっぽりと被った毛布の中で恥も外聞もかなぐり捨てて抱きしめ合い、互いの体で暖を取りたいくらいだ。そうやって相手の胸に耳をあて心臓が動く音を聴くことができれば、巡る血の温かさを想像し、まだ生きていることを実感させてくれるのではないだろうか――。けれども、まだかろうじて残っている理性が、そうすることを止めている。しかし如何ともしがたいこの寒さを耐え凌ぐために、「ここいらが落とし所」とどちらともなく伸ばした左手と右手を、これは妥協の範囲内であると黙って握りしめ合った。指の跡が付く程きつく握りしめている掌だけが、ジンワリと熱くなる。
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