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    shishiri

    @shishi04149290

    マリビ 果物SS

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    shishiri

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    ホラーアンソロジー『果物語』に寄稿させていただきました、拙著『狂気は蒼』の裏物語です。

    【参考文献】
    アンソロのお話しを伺ったとき、すぐさま「参加したい!」と飛びついた私ですが。実は極度のビビりでして、ホラー映画はもちろんの事、お化け屋敷にすら入れない。さて、ホラーとは一体どうやって書いたら良いのか……。と早速悩みました。ある程度設定を決めて書き始めるのと並行して読んだ本が、自他とも認めるホラー好き・宮部みゆきセレクトの『贈る物語Terror』です。ここでタイトルの元ネタになる『苦悩のオレンジ、狂気のブルー』を読みました。『水底の感』『沼』は、水をテーマにしようと思ってから、たまたまSNSbotで目にした作品であったりします。
    【テーマ①】
    怖いもの……と考えたとき。私自身、波の音(特に夜の)が苦手なのもあって、『水』をテーマにしようと思いました。幼少期に祖母から「お盆を過ぎたら、絶対に海に入っちゃいけない。連れて行かれる(実際は、波が高くなるから等の理由なんでしょうが)」と何度も聞かされ刷り込まれておりまして。この「連れて行かれる」というのがとっても怖かったせいで、波の音は私にとってヒーリングどころか、恐怖の対象なのです。
    【テーマ②】
    作品の中で、対比するものを描こうと思いました。
    湖(蒼、怪異)⇔空(青、希望)
    空で始まり湖(水底)で終る。空を見上げる時は希望を感じ、湖の底を見つめると怪異にあう。といった感じです。
    【テーマ③】
    物語の最初と最後に変化をつけるために、コンビを組んで二年目の果物二人の関係性の進展を、怪異と並行して描くことにしました。
    泳げないというコンプレックスを、蜜柑だけは馬鹿にしなかった、助けてやると言ってくれた。という小さな希望が檸檬の中に生まれ、満たされた事で、同じくあの湖にいながら怪異には支配されなかった檸檬。
    恐怖は誰の心の中にもあり、蜜柑も然り。あの湖の怪異はその恐怖に「(檸檬の幼少期を連想させる)溺れる子供」というイメージを与え増幅させ、蜜柑を支配し、やがて水底へと連れ去ろうとする。
    しかし蜜柑には檸檬がいたから、最終的にはその怪異から逃れることができました。
    二年という月日で知り得たこと、知らなかったこと。更にこれから重ねていく月日でまた、互いを知っていく二人であればいいな、と思いながら書きました。
    【湖の怪異】
    これについては「死人に殺された男」というのが先行してしまって、正直に申し上げますと、Aの思惑であったり怪異の正体については、厳密な設定を決めておりませんでした。ここについて気になる方も多いとは思うのですが、ガッカリさせてしまったらゴメンナサイ。なんちゃってホラーで終わってしまいました。スミマセン。
    自分で怪異の恐ろしさを表現できない代わりに、参考文献にあげたいくつかの作品をそれらしく配置して、雰囲気だけでも盛り上げたつもりです。それっぽくなったでしょうか……?因みに選んだ作品は部分的に「それらしい」ものを切り取り採用しただけであり、それらをお読みいただいても、今回の怪異には結びつきませんので悪しからず……。
    【仕掛け】
    ①宮部みゆきや伊坂幸太郎作品によくあるエピグラフ、というのをやってみたくて、『春の朝』から引用しました。この作品は、不倫関係にある男女が共謀し夫を殺害した翌朝、ピパという純粋無垢な乙女の、神を讃える清らかな歌声を聞き、良心の呵責から自ら命を絶つ。という話なのだそうです。空で始まり湖(水底)で終るように配置しました。
    ②実際に怪異にあっているのは蜜柑でしたが、それは檸檬の方なのでは?とミスリードしたいと考えました。この話を書く前に「溺れた過去があり泳げない檸檬」というネタがあり、そこでも湖での体験以降、檸檬の様子がおかしいと訝る蜜柑。というのを考えていました。
    ③あわや溺れる、というところで、檸檬により助かった蜜柑。不可解な事はあるけれど、一先ずは良かった……。と終わったところで、第三者のブログ主の話に移り。そこではまだ湖の怪異『水底ニテ待ツ』がこれからも知らないところで続いていく……。という不穏なラストで締めました。ミステリーでいう「ファイナル・ストライク」という趣向を目指したのですが、如何でしたでしょうか……?
    【凡さんの添削】
    イベント主催準備の傍ら、お忙しい中で拙著の添削を快く引受けてくださり、恐縮でした。誤字脱字や、セリフなど違和感がないかチェックしていただいた他、上記で語ってきた様な事が文面から読者に伝わっているか、をお訊きしました。
    沢山褒めていただき励ましてもらう中、凡さんからのご回答で、①Aの思惑とは?ついそれを考えてしまう②なぜ怪異にあったのは蜜柑だけなのか?と二点、引っかかる部分を御指摘いただきました。①については上記で書いた通りでして、決定稿では「いずれ何処かで、その思惑がわかる可能性がある」というような書き方に改めました。また②は、当初檸檬のセリフは「あれは何だ?」と、ミスリードを意識し過ぎたものであったため、余計にそんな疑問を生んでしまいました。なのでそこのセリフを、決定稿で改めています。それでも今回の裏物語で書いたような事は本文では描ききれていないせいで、二人の違いがイマイチ伝わっていないかもしれません。

    こうして、つらつらと書いていましたら、自分の作品の拙さが浮き彫りになる結果となりました。今の自分で書けるものは、全部表現したつもりでいたのですが……。それらは今後の課題として、これからも精進していきたいと思います。
    ここまで長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
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