まなざしいつだったか、お前と、話したことがあったな。
何のために生まれてきたか、何のために生きているかというような話だ。
俺はこんなふうに答えたかと思う。誰かの胸に種を残すためじゃねぇかと。遺志という名の種だ。
俺のまわりで生きて死んでいった奴らを思い返し、そう考えた。俺自身については、考えるのを放棄した。考えるより先に体が動くたちだからな。
だがこの頃、わかってきた。
俺は何のために生きているのか。残された種を育てるためだ。遺志という名の種が、芽を出し、育って、花を咲かせ、実を結ぶ。そんな未来のために、生き続けている。
お前の残した遺志が俺に力を与える。そういった言葉を、俺はかけたこともあればかけ損ねたこともあるが、いつだって気持ちは同じだった。
お前は、どうだったのかな。俺にわかるのは、お前が力の限り仲間達の残していった遺志のために前進し続けたことだ。
ハンジの奴も、似たようなもんだ。皆、見てるかな、とか気にしてやがった。死んじまった仲間達に誇れる自分であろうとしてたんだ。お前も仲間達の目線を気にしていたな。そんなことハンジは知らねぇだろうに。
エルヴィン、きっと、誰よりお前がハンジに力を与えた。前進し続ける力を。
お前というやつは、まるで風みたいにうまく煽るんだ。もともと燃えさかっている火はさらに大きく、挫けそうになったり、弱気になったりで、ともすれば消えてしまいそうになったとしても、うまく煽って再び燃え上がらせる。
最終奪還作戦直前のお前の言葉を、ハンジはいたく気に入っていたらしい。地下室に何があるのか知りたければ見にいけばいいと言ったことがあっただろ。「それが調査兵団だろ?」と。俺には方便に聞こえたが、好奇心の強いハンジには、えらく響いたようだ。あの言葉は、団長を継いだ後もハンジの胸に残り続けた。わからないものがあれば理解しにいけばいい。ハンジはそう言って、海を渡り実際にマーレを見にいくことを決めた。口に出さない時でも、お前の言葉を力としていたに違いない。俺には方便と思えた言葉をだ。本当か、嘘かなんて、どうだっていいんだろうな。どのように行動したかだ。お前はさいごまで仲間達の信頼に応えようとした。
今日はもう一人逝った。
フロックだ。あいつをああも駆りたてたのは、間違いなくお前だ。新兵を率いて獣に突撃するお前の背に、悪魔を重ねた。人類を救うには悪魔が必要だと信じた。そしてエレンに悪魔を求めた。俺達とは敵対することになったが、あいつなりにエルディアを思っていた。
罪な野郎だな、エルヴィン。ハンジもフロックも、お前と出逢わなければ、違う人生を送っていただろう。お前の存在があいつらの運命を変えた。
二人の調査兵の眠る地となったオディハが遠ざかっていく。飛行艇はスラトア要塞に向かう。決戦の地となるだろう。
見ていてくれるか? ハンジに影響されちまったみたいだ。お前みたいなことを思う。お前達が残していった遺志に、俺は生かされている。必ずお前達に報いてみせるから、見ていてくれ。お前達のまなざしが、俺の力となる。