花南の港から来た列車がシガンシナに向かっている。乗客の一人が外の空気を入れようと窓を開ける。
窓から入った風でリヴァイの髪が揺れる。
「今、甘い香りがしましたね。あ、花が咲いてる。そうか、パラディ島は今、春なんだ」
風が運んだ花の香が彼らの鼻先を過ぎったようだ。
リヴァイがポケットからハンカチを出し、目許を押さえる。
「目にゴミが入っちまった」
連れの少年が優しく微笑んだのが、リヴァイにはばつが悪かったようだ。
「すっかり、涙もろくなっちまってな。年だな」
白状し、改めて涙を拭く。
「まあ、ファルコ。お前からしたら、何言ってんだ、オッサン、てめぇよく泣いてんじゃねぇか、って言いてぇところだろうが」
「そんなこと言いませんよ。リヴァイさんは、故郷に帰ってきたんですから、懐かしくて当然です」
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