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    niesugiyasio

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    niesugiyasio

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    原作軸エルリ連作短編集『花』から再録17『花』(最終話)
    リヴァイは巨人のいない世界で生きている。

    南の港から来た列車がシガンシナに向かっている。乗客の一人が外の空気を入れようと窓を開ける。
    窓から入った風でリヴァイの髪が揺れる。
    「今、甘い香りがしましたね。あ、花が咲いてる。そうか、パラディ島は今、春なんだ」
    風が運んだ花の香が彼らの鼻先を過ぎったようだ。
    リヴァイがポケットからハンカチを出し、目許を押さえる。
    「目にゴミが入っちまった」
    連れの少年が優しく微笑んだのが、リヴァイにはばつが悪かったようだ。
    「すっかり、涙もろくなっちまってな。年だな」
    白状し、改めて涙を拭く。
    「まあ、ファルコ。お前からしたら、何言ってんだ、オッサン、てめぇよく泣いてんじゃねぇか、って言いてぇところだろうが」
    「そんなこと言いませんよ。リヴァイさんは、故郷に帰ってきたんですから、懐かしくて当然です」
    「故郷の街がなくなっちまったお前に言うのは何だが、あまり帰ってきたという感じはしねぇんだ。変わりはてちまって、むしろ、ここはどこだ?くらいの感じがある。ただ、ふと思い出してな。あの頃は、泣いたことなぞ、なかったんだが」
    「泣けるようになるまで、時間がかかるといいますし。それに、泣く余裕もないような時代だったんじゃないですか」
    「そうだな」
    ガタンゴトンと音を立てて列車は進む。
    月日を要したが、和平が成立し、島外からパラディ島を訪れることができるようになった。彼らは船で島の最南の港に着いた。
    「ガビの奴、ちゃんと次のに乗ったかな」
    「大丈夫でしょう。自分で言ったことはきっちり守る奴ですから」
    就航したばかりの定期船が着くのは初期に出来た港だ。
    「悪ぃな。お前もガビと一緒にもう少し港に残りたかっただろうに。俺がこんな脚だもんでこっちにつきあわせることになっちまって」
    「コニーさん達との約束の時間に間に合わせるにはこの列車に乗るしかなかったじゃないですか。ガビは、まあガビだからしょうがねぇなって、遅れても皆許すでしょうし、それに、一人になりたいように見えたんで」
    「俺もそんな気がした」
    「一人で話したいことがあったんだと思います。ガビはいつも一番で、とくに目をかけられていましたから」
    「マガトの眠る海か」
    彼らはあの港から船出した日に思いを馳せる。
    「俺は巨人化したせいであの港を出た時のことはまったく覚えてないんですが」
    「俺も朦朧としてて断片的にしか覚えてねぇ。どうやって船に乗ったんだか。とにかく、あの時は、獣の野郎を仕留めることしか頭になかったからな」
    リヴァイは窓の外に目を遣る。
    「あんなとこに街ができてやがる」
    やや離れた丘陵地が街になっている。手前は畑や果樹園だ。
    「この辺りは昔は、原野だったんですよね。壁の外を無垢の巨人が包囲していた頃は」
    「そうだ。壁の外がどうなっているのか分からなかった。調査兵団の壁外調査でも、この辺までは来られなかったな。後から考えりゃ、大した距離でもねぇんだが」
    列車がスピードを落とし、駅を通過する。シガンシナの一つ手前の駅だ。特急列車なので小さな駅には停まらない。
    青空の下、陽光の注ぐ緑の野を列車は走る。
    「春ってのは、こう、野山が緑になって、花が咲くんだよな。俺はけっこうな年になるまで知らなかったが」
    「そっか、リヴァイさんは地下街で育ったから」
    「地下には木も草もねぇからな」
    「レベリオも地下でこそなかったけど、建物がぎゅうぎゅう詰めにひしめいていたから木とか全然なくて、こういう景色は見られなかったなあ。戦士候補生になって壁の外に出られるようになって、そうか外の世界はこんなふうなのかと。空はこんなに広いのかと」
    「海の向こうとこっちで、とくにこっちは壁の外に人類がいるとは思ってもみなかったってのに、似たような思いをしてたもんだな」
    「壁の外には人類はいないと思い込まされていたっていうのはびっくりでしたよ」
    「俺なんかは疑ったことがなかったな。たいていの奴がそうだろう。俺の知ってるなかじゃ、一人だけだな。壁の外に人類がいると信じてたのは」
    「エルヴィン・スミス元団長ですね。ハンジさんの前の調査兵団団長だった」
    「俺達の前で口に出すことはなかったがな」
    「言論統制が敷かれていたんですよね。口に出し、それを当局に知られれば、逮捕される。下手をすれば、命まで」
    「ああ」
    それだけではないとリヴァイは知っているはずだが、言葉を濁した。
    「多くのことを考えている奴だったからな。奴の考えていることが分かったためしがねぇ」
    「その考えが分からなかろうとついていく。絶大な信頼関係があったんですね」
    「奴を殺すために調査兵団に入ったっていうのにな」
    「ええっ、それは初耳ですよ」
    「兵士になるとか、考えてみたこともなかったよ。俺は地下街のゴロツキだった。ガキの頃からケンカに明け暮れ、まあ、負けたことなどなかったな。そのうち立体機動装置を手に入れてな、仲間と地下街を飛び回りながら商人や金持ちどもの荷物なんかを盗んでいたんだ」
    「カタギの人じゃないような気はしていましたが」
    「そうドン引きすんなよ。俺からしたら、お前やガビみてぇにちっせぇガキの頃から兵隊を志すほうが狂った世界に思えるけどな」
    「それは、その通りです」
    「マーレは常にどこかと戦争をしていたんだもんな。この島はといえば、シガンシナが襲撃を受ける前、マーレ軍のいうところの始祖奪還作戦の前は、ある意味平和だった。にせものの平和だったわけだがな。巨人が壁をぶち破って壁内へ入ってくるなんて心配をする奴は滅多にいなかった。俺は三重の壁のど真ん中にある都のしかも地下にいたから巨人に囲まれている実感とかはなかった。巨人どころか壁も見たことがなかったからな。地下街の天井、つまり、地面の裏側なら毎日見ていたが」
    「そんなリヴァイさんがどうして調査兵団の団長を殺すことを思いついたんですか? 接点がなさそうですが」
    「当時は分隊長だった。敵の多い奴だったからな。その一人に雇われたんだ。仲間を人質に取られていたからというのもあるが、このいけすかねぇ野郎を生かしちゃおけねぇ、そんな短絡的な殺意があったよ」
    「でも、止めたわけですよね。エルヴィン元団長がその後も生きていたことを考えると」
    「計画通りにいかなかった。奴はこっちの思惑などすべてお見通しだった。俺達が実行に及んだ頃には、俺達を雇った貴族は奴に失脚させられていた。地下街から一緒に出てきた仲間が無垢の巨人に殺られちまった後に、俺はそれを聞かされた。怒りに任せ、奴を殺そうとしたが、結局できなかったな」
    「そういう相手をどうして信頼するようになったんですか?」
    「何でだろうな。分からねぇな。俺からすれば、面白い発想をする奴だったよ。極力戦闘を避けようとしたりな」
    「巨人との交戦を避ける陣形が用いられており、その発案者がエルヴィン元団長であったとの報告書をそういえば読みました」
    「発想の転換みたいなものを、周囲にも求める奴だった。奴は俺達に問いかけたもんだ。てめぇには、何が見える?と。敵は、何だと思う?と」
    「そんなこと言われたら、考えちゃいますね」
    「そう、人に疑問を抱かせ、考えさせる奴だった。調査兵団に入った場合の、通過儀礼みたいなもんだったな」
    「エルヴィン元団長は、正解が分かっていたのでしょうか」
    「いや、奴にも分かっちゃいなかったろう。もとより、答えを求めていたわけじゃねぇ。自分らの頭で考えさせたかったんだ」
    「俺もその手に乗ってしまっただろうなぁ」
    「風のような奴だったよ。人を煽る」
    「会ってみたかったなぁ。そんなこと言える立場じゃないですが」
    「お前はその頃、ほんのガキだったろ」
    列車がカーブにさしかかり、大きく揺れる。車窓から街が見える。
    「シガンシナか。壁がねぇが」
    リヴァイはしばし、シガンシナの街を遠望する。この辺りの位置からシガンシナを望んだことは何度もあるが、壁に遮られ、街並みそのものが見えたことはなかった。
    「そろそろ降りる準備をした方がよさそうですね」
    「ああ」
    すぐ隣が荷物置き場で、その先が乗降口だ。
    ファルコが網棚と座席の下に置いておいた荷物を一つ背負い、もう一つは肩に提げて、荷物置き場に括りつけてあった車いすのチェーンを解き、乗降口に向かう。リヴァイは杖をついて、その後に続く。
    列車はスピードを緩めつつ、シガンシナの街を左手に見るかたちで進む。ウォール・マリア跡を超えた先が鉄道駅だ。
    列車が停車する。ファルコが乗降口の扉を開け、ホームに降り、車いすを下ろす。杖を頼りにステップを降りるリヴァイにファルコが手を貸す。ポーターに荷物と車いすを頼み、杖をつくリヴァイに時々ファルコが手を貸しながら改札を目指す。
    改札を出たところに、列車の運行表があった。その一点をリヴァイが指差す。
    「コニー達が乗ってくんのはこれか」
    「余裕ありますね。ゆっくり街の方へ向かいましょう」
    構内のクロークに荷物を預け、リヴァイの乗った車いすをファルコが押して、彼らは駅を出る。露店で買った花をリヴァイの膝に乗せ、駅を背に、まっすぐに伸びる道を進む。
    花が咲き乱れている。紅の差した白い花と黄緑の葉っぱが空を遮る。道に迫り出した鈴なりの花を避けながら、ファルコはリヴァイの乗った車いすを前に進める。花の蜜を吸っていた小鳥が飛び立ち、枝が揺れる。
    川へ出る。橋を渡る。横手には船着き場。かつての交通の要だ。今も川沿いに住む人々の足になっているし、水運としても活用されている。
    「すっかり、見晴らしがよくなっちまったな」
    かつてなら、必ず壁が目に入った。行く手にはウォール・マリアが、左手にはシガンシナ区との間を隔てる壁がそびえ、威圧感を醸していた。今は、視界を遮るものはない。まばらに建つ家々の向こうに、シガンシナ区内の密集した家並みが見通せる。
    「壁の跡は、水路として活用されてるんですね」
    「壁になってた巨人の足が埋まってたんだもんな。けっこうな深さだ」
    「瓦礫もまだまだ残っていますね」
    「片付けきれねぇよな」
    彼らは十字路で向きを変え、前を見る。
    「門があったところですよね」
    「ああ」
    かつては壁に隔てられ、門をくぐって区内に入っていた。今は遮るものはなく、水路を渡る橋だけがその名残だ。
    「そのへんで止めてくれねぇか」
    リヴァイは水路沿いの道を指した。かつてなら、壁際の道であった。ファルコは彼に言われた通りに車いすを進める。
    「このへんでいいですか?」
    「ああ」
    リヴァイは黙って水路際の瓦礫を見つめる。まるで誰かそこに座っているみたいに。
    「リヴァイさん、しばらく一人でも大丈夫ですか」
    リヴァイは一人になりたいようだと、彼の目に映ったのだろう。
    「兄に花を供えてきたくて。ガリアードさんにも」
    リヴァイは無言で頷き、膝の花の束から掴めるだけ掴んでファルコに渡す。ファルコは花を二本だけ受け取って後はリヴァイに返してシガンシナ区内へと入っていった。
    リヴァイは花を一本取って、背を屈めて瓦礫の上に置く。
    そよ風がリヴァイの頬を撫でる。その顔に残る傷をいたわるように。

    何か、甘ったるい匂いがするな。
    ああ。花が咲いてる。
    ついこの前までは無かったよな。花も、緑も。もっと殺風景だった気がするが。
    春だからな。
    春っていうのは、花が咲くのか。

    遠い日にかわした会話だ。彼が地下街を出てシガンシナに来て初めての春だった。
    リヴァイはかわらず瓦礫の上をみつめている。
    そこに誰か座る誰かと向かいあっているみたいに。

    俺は、報いることができたか?

    リヴァイは声なく語りかける。

    ユミルの民ってやつは、ずっと、奴隷だったらしいな。見えない鎖にがれていた。言ってみればあの頃の俺達は、奴隷同士で戦わされていたんだ。巨人が人間を食ったのは、自分達を滅ぼしたかったからだろうか。王家の末裔ジークは、子どもが生まれないようにすることでユミルの民の全滅を図った。全員が巨人に食いつくされても似たような結果になる。
    道を通じ送られてきた血肉により巨人の体は形作られていた。アッカーマンと九つの巨人の継承者を除けば、自らの意思を保てない。誰かの意のままに巨人化させられ、ただ従わされる。都合よく記憶を書き換えられたこともあった。道はまるで鎖のようにユミルの民をいでいた。
    もう誰も、巨人にはならない。記憶を改ざんされることもない。鎖は断ち切られ、解放された。もう奴隷じゃない。皆、自由になった。
    誰かの勝手で巨人にされちまって、てめぇの意思を失って操られちまうような、そんな不自由から、解放された。
    隣にいる奴が巨人になって襲いかかってくるような目に遭うことも、もうないんだ。
    これが最善だったのかは、俺には分からない。
    ひでぇもんだ。あちこち、踏み潰されて。大勢、踏み殺されて。
    だけどそれでも、巨人のいない世界だ。
    お前がここに生きていたら。
    お前ら皆、ここに生きていたら。
    心から、そう思える。
    巨人がいた頃には、思えなかったからな。
    そう思い続けられるよう、俺なりにできることをやっていく。
    なあ、俺はお前に、報いることができたか?
    先に逝ったお前達の人生に意味を持たすことができたか?

    彼の前に跪く。膝に置かれた、人差し指と中指の欠けた手に、己が手を重ねる。
    声ならぬ声で語りかける。

    リヴァイ、お前はよくやった。
    お前は十分、俺に報いてくれたよ。
    もう戦わなくていいんだ。
    俺達の意思を継いでくれてありがとう。
    俺達の捧げた心臓を無駄にすまいとしてくれてありがとう。

    リヴァイが俺を見つめているように錯覚する。
    錯覚でも構わない。見つめ返す。
    彼の声なき声を聴く。

    こういう気持ち、何て言ったらいいんだろうな。
    恋しい、というのかな。
    エルヴィン、俺はお前が恋しいよ。

    唐突に考えてしまう。もっと生きていられたらよかった。お前の言う通り、最終奪還作戦に加わらず壁内で待っていたら、結果は違っただろうか。だがどうしてもその選択はできなかった。
    詮無い考えを振り切り、再び彼に語りかける。

    かつて俺は、先に逝った仲間達のまなざしに苛まれた。託された心臓を重荷に感じた。
    だがお前はいつだって、そうした仲間たちの遺した意思を、力にしてきた。
    それがお前の強さだ。これまでも、これからも。
    巨人のいない世界で、壁の向こうの世界で、新しい仲間ができていることを知っているよ。巨人がいた時代からの仲間もいる。お前はそうした仲間達をたいせつにするし、彼らもお前をたいせつにする。
    そして、お前は俺達のことも忘れないと知っている。
    俺のことを忘れないと知っている。
    これからも、お前の力となれたなら。
    どうかこれからは、つらい出来事でなく、俺達の過ごしたあの日々のなかにも確かに存在した幸福なひとときを、日常の些細な物事を、思い出してほしい。俺や、あの頃の仲間達との記憶が、ふとお前を微笑ませられるといいんだが。
    そうだ。いつだったか、イラクサを摘んでスープにしたことがあっただろう。食べられる草を知っているのか、すごいな、とお前が褒めてくれた。お前に褒められるなど滅多にないことだったから、俺は有頂天になったよ。他には知らなかったので、詳しい団員に聞いてさらに知識を得たものだ。それから、野いちご。最初、食えるのか?とお前は怪しんだな。おそるおそる口に運ぶお前の引き攣った顔が、食べた途端に綻んだのを、俺は見逃さなかった。俺が野いちごとへびいちごの見分け方が分かることに、感心してもいたな。

    リヴァイの表情が和らぐ。あの頃はほとんど見せなかった穏やかな顔をする。その頬を涙が伝う。その涙を拭ってやる手を持たない身がもどかしい。リヴァイはポケットからハンカチを出し、頬を押さえる。泣けないより、泣けるほうがいい。凍えついた悲しみは、涙となって流れゆくこともない。雪解けを待たねば、泣けないものだ。抱え込んだ悲しみが涙となり、お前のもとから流れていきますように。
    リヴァイは呼ぶ声に振り向く。道の向こうからコニーが駆けてきている。その後方を歩いて来るジャンが手を上げて挨拶する。戻って来たファルコは、ライナーと一緒だった。ばったり会ったらしい。彼らは丘の方を指差す。しかしそれぞれ指す木が違い、顔を見合わせつつ首を捻る。大人しく全員が揃うのを待つのがいいという話に落ち着く。到着時間にばらつきがあることから、待ち合わせの場所は前もって決めてあったので、そこへ向かう。コニーがリヴァイの車いすを押し、皆でシガンシナ区内の方へ向かう。

    俺は、そっとリヴァイに語りかける。
    俺は、傍にいるよ。お前の頬を撫でる風になろう。花の香を運ぼう。新緑や、土の香も。すっかり泣き虫になったお前の頬を伝う涙を払う風となろう。
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    niesugiyasio

    PAST原作軸エルリ連作短編集『花』から再録15『空』
    終尾の巨人の骨から姿を表したジーク。
    体が軽い。解放されたみたいだ。俺はこれまで何かに囚われていたのか? 空はこんなに青かっただろうか?
    殺されてやるよ、リヴァイ。
    意図はきっと伝わっただろう。
    地鳴らしは、止めなくてはならない。もとより望んだことはなく、地鳴らしは威嚇の手段のつもりだった。媒介となる王家の血を引く巨人がいなくなれば、行進は止まるはずだ。これは俺にしかできないことだ。
    エレン、とんだことをやらかしてくれたもんだ。すっかり信じ切っていたよ。俺も甘いな。
    また生まれてきたら、何よりクサヴァーさんとキャッチボールをしたいけれど、エレンとも遊びたいな。子どもの頃、弟が欲しかったんだよ。もし弟ができたら、いっぱい一緒に遊ぶんだ。おじいちゃんとおばあちゃんが俺達を可愛がってくれる。そんなことを思っていた。これ以上エレンに人殺しをさせたくないよ。俺も、親父も、お袋も、クサヴァーさんも、生まれてこなきゃよかったのにって思う。だけどエレン、お前が生まれてきてくれて良かったなって思うんだ。いい友達を持ったね。きっとお前がいい子だからだろう。お前のことを、ものすごく好きみたいな女の子がいるという話だったよな。ちゃんと紹介して貰わず終いだ。残念だな。
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