DOS黒紅(しょた陽炎)春の芽吹きも終わり、木々は青々とした葉をつけ始め、少しだけ日差しもまぶしさを増してきた日だった。
頭ふたつぶんも遠い顔を見上げるのは大変だったが、待ちに待ったこの時間が嬉しくて、陽炎はそんなことは全く気にならなかった。
後見人である青龍との週一の対面。そこで、ようやく緊張せずに彼と話ができるようになった。
威圧的な態度にも慣れ、ただ言葉が少なく、喋るのがあまりうまくないのだなと気づいたからだ。
「それで、白蛇が」
ゆっくり会話を重ねれば、みじんも変化しないと思っていた表情にも、違いがあるのがわかってきて、最近の逢瀬の楽しみのひとつにもなっている。
「剣はあまり得意ではないけど、槍は」
「陽炎」
吐息めいた音で名を呼ばれ、は、と息を呑む。
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