クローはただ一点を見つめていた。クローが知らない誰かと楽しそうに話すファングを。
恐らくターゲットかそれに近い人物なのだろう。そう頭では理解していてもファングが自分以外に笑顔を向けるのは気分がいいものではなかった。
仕事の邪魔をしてセブンに怒られる訳にもいかなかった為しばらく眺めていると、ファングと話していた男が必要以上にファングに近付いているのが見えた。よく見たら腰に手を回そうとしてるではないか。
「ねぇ」
我慢の限界がきたクローがファングの腕に絡む。ファングは顔には出さなかったものの、目はなんで来た、とクローに向けていた。
「まだ、お話するの…?」
幼めの顔を利用して庇護欲を誘うように話す。ファングはため息をつくのをぐっと我慢して男に視線を戻す。
「すみません、弟を待たせているので。続きはまた今度」
唇に人差し指を当てて微笑む。男が去ったのを確認してからファングは再びクローに顔を向ける。
「お前な……仕事中だろうが」
「だってアイツ僕のファングに近付きすぎなんだもん」
「もんじゃねーよ」
最近クローが僕のと言いすぎてファングもそこはスルーする。そのことに気分を良くしたクローは絡めたままの腕を引っ張った。
「ほら行こ、ファング」
「はいはい」