───────カツン。
綺麗に結われた銀色の髪、しなやかさが映えるドレス、そして紅のヒール。
仮面越しでもすれ違う人々を虜にするのは、何を隠そう潜入捜査として女装したレッカだ。
「おい、潜入のわりに目立ってないか」
「ハッ、バレなきゃいーんだよ」
「……まあいい。目立つ行動はするなよ」
相手役として隣にいたカイと打ち合わせ通り一旦離れたレッカは会場内を歩き、目当ての人物へと近づこうとする。いや、近づこうとした。
「失礼、そこのお嬢様」
「……何か?」
「突然すみません。どうしても貴方とお話がしたくて」
ターゲットまでもう少しという所で邪魔が入る。適当な理由をつけて離れようとしたが、相手の男はしつこく、中々退いてくれない。
レッカは思わず脚が出そうになるが、今ターゲットに勘づかれて逃げられるのは御免被りたかった。
「あの、いい加減に────」
「すみません、僕の連れに何か」
レッカのストレスが頂点に達しかけた時、男とレッカの間にカイが立ちふさがった。
カイの気迫に押されて言葉が出ない男を横目に、カイはレッカの手をとって軽く口付けをする。
「お話のところ申し訳ありませんが、この後用事があるのでこれで失礼します」
「……っ、あの」
「ごきげんよう」
その後目当ての相手に接触し、それぞれ情報を手に入れた2人はエンドーの迎えを待っていた。
「チッ、無駄な時間くったぜ」
「俺は蹴り倒すんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ」
「目立つなって言ったのカイだろ」
「まあお前黙ってれば美人だしな」
「嬉しくねーし!!」