たった1つの鉛玉で
父はただのガラクタに成り果てた。
間もなく動きを止めるだろう拍動が、空けられた穴からごぽりと気味の悪い音を生み出した。
とぷとぷと溢れる赤黒い液体がゆっくりと足元で血溜まりを広げていく。
ぼろぼろと大粒の涙を垂れ流す弟の叫喚はソレに比例するよう声量を上げた。
地に伏した男の髪を掴みぞんざいに持ち上げると、ぬるりとした感触が混じり、つい、眉尻が跳ね上がる。
穢らわしい。
次第に温度を失うソレの首筋にひたりと指先を添えれば、弟がまるでバケモノでも見るかのように恐怖と絶望を眸に浮かべてこちらを見上げたが、自責の念などひとつも生まれやしなかった。
脈打つ度にずきずきと頭が割れるように痛むのは何故だろうか。
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