爬虫は愛で火傷する「雨彦さん、爬虫類みたいって言われたことないー?」
寝台の上での北村からの突拍子もない質問に無言の間をあけてしまった。狐ならたまに例えられるが、ヘビやトカゲはあまり縁がなかった気がする。
「いいや、ないな。なぜだい?」
「だってこんなに体温低いから。手とか足が冷え症って人はいるけど、ほとんど全身ひんやりしてるよー」
そう言って珍しげに俺の腕や腹を触ってくる北村の手は確かに温かい。そういえば先ほどまで触れていた胸や背中はもっと温かかったと思い返して、ククと喉が鳴ってしまった。
「そりゃあ。俺の全身に触ったことがあるやつしか知りようがないんじゃないか?」
この時の北村ときたら。思いっきり口をへの字に曲げて耳を真っ赤にしていた。
「…今の話は無かったことにしてくれるー?」
「難しいな。なかなか衝撃的な話で忘れがたい」
「忘れてよーもー…」
己の失言に気づいた北村が枕に顔を埋める。投げ出された手に自分のを重ねればゆっくりと体温が移っていく。北村から熱を奪っているようで少し申し訳なく感じていたら、不意に重ねていた指が絡められて緩慢な力で引っぱられた。枕から顔を覗かせた北村と目が合う。
「体温と、余裕のなさが、比例して。…僕ばっかり熱くなってるみたいで悔しいから、」
少し分けてあげるねー。そう言うと北村は、俺の指を咥えて口の中へ招き入れた。冷たい指先を柔い舌に包まれて、電流のような興奮が身体を巡る。
ああ、火傷してしまいそうだ。