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    もんと

    @monto228

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    もんと

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    ヒカセン×リーン
    初恋、戸惑い、芽生え

    ……の完結まで持っていけず5.3から塩漬けにされていたもの 半端に終わっている!ヒカセンはいつもの主夫部族オスラ戦士(18)

    青葉 肩にかけられたケープにどう反応を返したものか、衣服をただ贈られるというのも初めてでミンフィリアは困惑するしかなかった。

    「あの……?」

    「袖通してみて。多分サイズは大丈夫だと思うんだけど」

    白のワンピースに合わせて白いケープは肌触りも柔らかく、戦闘時の立ち回りにも耐えられる作りなのは袖を通した瞬間から分かった。鎧から魔法のローブまで作って修理までこなす人なのは、イル・メグでフェアリー達の気をひくために装備制作の実演をしてみせたので知っていたが。

    まさかケープまで作っていたなんて。それが自分用だとは思いもしなかった。

    「大丈夫、です。すごい……貰ってしまって本当にいいんですか?」

    「勿論だよ!イル・メグって少し肌寒いから羽織る物いるでしょう。手持ちの布と、目測だけの間に合わせなんだけど」

    「ありがとうございます。冷えるな、て思っていたから……それにサイズもちょうど良いです」

    「良かったぁ。でも、今度改めてきちんとしたの作るからよろしくね」

    「えっ、あ、あの……わ、かりました」

    間に合わせなんてとても見えない。飾り気はないが布には薄ら光沢と模様が浮かび、フードまでついている。

    湖を中心とした地であるイル・メグは山間にあるのもあって風が吹けば相応に肌寒い。着の身着のままでやってきたので羽織る荷物もないから、ありがたい贈り物だ。

    その時のミンフィリアは心に小さく芽生えた気持ちにはまだ、気づかなかった。





    エデンの調査も一段落し、衣服も必要な分を鞄から出していたリーンは荷物の底で眠っていた白いケープと再会した。冷涼な場所ではよく着ていたけれどアム・アレーンは砂漠地帯なのでケープの出番はない。

    きちんと収まっていたのでシワもなく、すぐにでも着れる状態だ。服を丁寧に畳めるようになったのもそういえばアムが教えてくれた、ケープを大事に使いたいと思って手入れの仕方を尋ねた時にやり方を見せてくれたのだ。

    中々上手く畳めないリーンに根気強くやり方を見せ、リーンの畳み方も途中途中指摘を挟んで……

    「……ーン。リーン、リーンたら」

    「あっ、ガイア」

    思いを馳せている間、ガイアが隣に座ってリーンの顔を訝しげに覗き込んでいた。

    何度も呼びかけてようやく意識を向けてきたリーンに、厚めの唇に薄く不満を乗せてガイアはため息をついてみせる。

    「あっガイア、じゃないでしょ。さっきから何回呼んだと思ってんの」

    「ごめん、これを見たら懐かしくなっちゃって」

    「ふうん?随分シンプルなケープね」

    そういえば、改めて作ると言っていたけれどあれから進捗はどうなったのだろう。リーンが思い出せる限り何か作るのに必要な事、好む色やデザインの具体的な相談をするといった素振りは記憶の中には見当たらなかった。

    彼は山ほどすべき事を抱えているのだし、何時になるとも明確に約束していないのだから気にしすぎる必要はないだろう。だけど何故か、リーンの胸中は晴れない。

    「けどね、アムさんが作ってくれたし凄いんだよ。どんなに動いても邪魔にならないし、シンプルだから合わせやすいの」

    「ふうん」

    大して興味無さそうに見えて案外よく見ているガイアの目は、ケープそのものよりリーンの思い入れの方に興味があるようだった。

    「お気に入りなんだ?」

    からかう声の調子にリーンは夢から醒めたようにがばりと顔を上げた。ただお気に入りと確かめるのではなく、そこに込められた感情がただならぬと見抜かれたのだ。

    「そ……!」

    素直にそうだよと言おうとして、リーンは言葉に詰まった。顔の血の巡りが急に早まって喉のつっかえがとれない。

    こんなことは初めてで、どうしたらいいのかさっぱり分からない。リダ・ラーンでピクシー達の惑わしの霧の中に放り込まれたような、自分の居る場所が分からなくなってしまったような。

    「そうなんだぁ。“ アム”が作ってくれたケープ、だもんねぇ?」

    楽しげにケープの端を弄ぶガイアはさながら悪戯に喜悦を見出す黒猫のよう。──これはずっとからかいの種になる。輪郭の掴めない心のざわめきがなんなのかはリーンには分からないが、今はガイアを止めることが先決だ。






    あれから日が経ち、からかわれるのが嫌だからあのケープはガイアの前ではなんとなく着たり出すのははばかられるようになった。ただ、ケープも、ガイアも、嫌いになった訳じゃない。

    アムが絡むとどうしてだか普段通りに出来なくて、おかしなことを口走ってしまう。こんなこと、旅をしていた頃は無かったのに。

    「なるほど、了解いたしました。私でよければ力になります」

    神妙なようで隠しきれない微笑ましさを見せながら、ライナはリーンに頷いてみせた。ヤ・シュトラやアリゼーはなんだかんだと用事があってクリスタリウムに滞在するのは珍しい。

    相談を持ちかけようとしたらもう発っていた、なんてことも多い。リーンもエデン調査もあって中々タイミングが合わない。そこで相談相手にライナを思いついたのだ。

    ガイアは……無しとして、心の変化について打ち明けやすく信頼があり、確実にクリスタリウムに居る。出来れば歳上の同性。うってつけの相手だ。しかし本人ですら要領を得ない感情について説明するのはリーンには難易度が高かった。話すのが苦手なわけではないのだが。

    対人関係は数年前から慣れだして、最近はもっと勇気を出せるようになった。手を差し伸べられるのを待つ側から、差し伸べる方になれると証明したいから。

    「見当、つきそうですか?この気持ちがなんなのか……」

    「はい。世間に暮らしていれば自ずと触れる機会があるもの、或いは既に目にしているかもしれませんね」

    「それは……?」

    「恋です。あなたは闇の戦士殿、いえ、アムさんに恋をしているんですよ」

    恋。
    聞いたことがある。特別な“ 好き”の感情。または状態のこと。しかし好きならもう幾つか持っているリーンは、首を傾げた。

    「好き、なら、サンクレッドやウリエンジェに対してもあります。同じではないんですか?」

    「お二人に関してからかわれても、きっとここまで悩まれた事はないとお見受けしました」

    言われてみれば確かに、サンクレッドとウリエンジェにはそういう風に見られても(外見年齢がやや離れすぎているのもあって回数は少なかったが)特別重くは考えなかったがアムに紐づけられると悩みは深かくなっていった。

    「そうです、確かにそんなに困らなかったというか……」

    冗談で好きなのかと聞かれたことはあった。それで精神が不安定になったというか、凄く恥ずかしくなってまともに受け答え出来ずに謝られてしまったこともある。

    一つ頷いてライナは優しく微笑む。きっと生まれて初めて芽生えた感情にどう向き合うのか分からないのだろう。
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