社長ホルス×副社長に降格セトここは株式会社エネアド。キャラバンやラクダの貸し出しだけでなく、IT方面でも大きな業績を残しているエジプト屈指の大手商業会社だ。卑怯な手で社長の座を奪ったセトだったが、前社長の子息であるホルスにその場を譲らなければならない事態となった。

創業者ラーはまだ若いホルスを社長にする事に気が進まない発言をしていたが、株を最も多く有しているマアトの発言力はあまりにも大きく、セトは彼女の意思に抗う事ができなかったのである。

「わかっているんじゃないですか。あなたが今どうすべきか」

エグゼクティブなその口元から発せられた言葉にカッと顔が熱くなる。恥ずかしさと、怒りがこみ上げた。
（コイツ…！やっぱりあの男の息子だ！）

セトからすればホルスなど大学を卒業したばかりのひよっ子も同然の子供だ。力でねじ伏せてやる、少し痛い目を見れば言う事をきくだろう。そう思って花瓶を手に取り投げつけようとするも、ふと妻のネフティフが頭をよぎり、思いとどまる。
ホルスは現社長だ。もしも自分がクビにでもなれば露頭にさまよい、ネフティフに貧乏な思いをさせてしまう事になる。
それだけはダメだった。だから、オシリスの下で恥辱に耐え抜いてきたのだ。

長年に渡りセトは前社長のオシリスからセクハラを受けていた。愛する妻との生活を守る為、その過剰な触れ合いに耐えていた過去がある。

「くそが！」

社長席に跪き、セトはホルスのチャックに手をかけた。ホルスは満足そうに微笑み、セトの頭を撫でたのだった。


Fin.