フロイドが小エビの小指の爪を塗る話フロイドは意外とマメな男だ、と思う。細かい作業が得意だし、苦にならないタイプであるらしい。鮮やかなターコイズブルーに塗られた俺の両手の小指の爪には一ミリのはみ出しもなかった。俺の小指の爪は、土日だけ彼の好きな色に塗られる。彼と過ごす週末のルーティン。月曜日になる前に、このささやかな小指の先に乗った海は、彼の手によって丁寧に落とされる。俺としても「その小指何?」「どうしたの?」なんていう風に同級生から余計な詮索をされなくてすむし、厳格な先生から見咎められてマナーを注意されることもないので、彼のやりたいように任せている。学生の身分でなければ、小指一本分くらいを彼のために染め続けていても構わないのだけど。俺の小指が染まるのは、今のところは彼と過ごす週末限定となっている。
4708