散歩 時刻は午前四時。
明日は休みなので司くんと夜通しで演劇の映像を見ていたら、夜が明けようとしていた。
「もうこんな時間だったのか」
「二人で夢中になってしまったね」
いつもなら、日付が変わる頃には寝てしまう司くんも興奮が冷めないのか、目はしっかりとしている。
この状態で寝ても、すぐに起きてしまうだろう。僕の部屋はショー関連のモノで溢れているから、気分を落ち着かせるには不都合すぎる。
それならば、この部屋を出るしかない。
「司くん、散歩に行こうか」
僕の提案に司くんは、魅力的なその目を瞬かせた。
「この時間にか?」
「この時間だからだよ」
時計を見て首を傾げる司くんの手を引いて、僕は作業場から外へと出る。
五月に入ったとはいえ、朝方はまだ気温が低い。
「寒くないかい?」
「大丈夫だ!」
もう一枚、羽織るべきだったかなと思って問い掛けると司くんは笑顔を返してきた。
繋いだままの手から、お互いの体温を感じる。
人気のない道路は静まり返り、僕と司くんが靴でアスファルトを踏む音だけが響く。
今の状況だと、僕と司くんしか居ないような錯覚に落ちる。
「こうしていると、オレ達だけみたいだな!」
司くんが僕の考えと同じ事を口にしたのが、二人の心が通じ合っているようで嬉しかった。
「……そうだね」
だから、返事が少し遅れてしまった。
それからは特に会話をする事はせず、ただ住宅街の道路を目的もなく歩く。
「ふぁ、っ……」
司くんのアクビが聞こえた。
夜も明けて、朝日が差し始めている。
「もう帰ろうか」
「そうだな」
明るくなったけど、繋いだ手はそのままにして僕達は帰りを急ぐ。
その後、一緒のベッドへ潜り込んで泥のように眠った。
次に起きた時、正午だったのは言うまでもない。