ポッキーゲーム「煉獄千寿さんだよね、ちょっとお話してできる?」
放課後、教室を移動しようとして扉を開けると、待ち受けていた高等部の女子生徒数人に囲まれた。またか、と心の中で小さなため息をついて振り返る。千寿にとっては時々訪れる風景だ。
用件は皆一緒──同じ学園で教鞭を取る兄、杏寿郎のこと。明朗闊達で爽やかな好青年、老若男女誰とでも分け隔てなく話ができる兄は、よくもてる。他校の女生徒から声をかけられたこともあるくらいだ。ファンクラブがあるとかないとか、学園内の有名人である杏寿郎を兄としている以上、降りかかるあれやこれやは千寿には避けられないものであった。彼女はいるのかに始まり、手紙を渡して欲しいだの、プライベートを教えて欲しいだの。教師ではなく一人の男性としての姿をあの手この手で聞き出そうとしてくる。マスコミの相手をする芸能人もこんな感じなのだろうか……心の中では辟易としつつ「煉獄先生の妹」という立場で兄の評判を落とすことはあってはならない。ただ千寿も内心は複雑だった。何が悔しくて自分の恋人の情報を根掘り葉掘り聞こうとする者の相手をしなければならないのか。
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