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    somakusanao

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    somakusanao

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    不謹慎な話の続き。灰谷兄弟。

    #ココイヌ
    cocoInu

    『禁じられた遊び』④灰谷兄弟 九井一から依頼を受けた。ある男のDNAが必要なので、墓を暴いてほしい。もちろん作業は専門業者に頼むし、面倒なことは部下にやらせればいい。灰谷兄弟はその監視と確認だ。なぜ九井自身がやらないのかといえば、スポンサーとの打ち合わせが入っているらしい。金稼ぎに関しては九井に一任するというのが、幹部の共通認識だ。墓荒らしなど気が向かないが、しかたない。高くつくぜと金を要求すれば、ことのほかあっさりと九井は頷いた。拍子抜けする。
    「その代わり、もうひとつ頼まれて欲しい」
     黒川イザナの骨が欲しい。
     かつて灰谷兄弟を導いた男の名だった。あの強烈なカリスマはいまもなお灰谷兄弟の脳裏に焼き付いている。
     依頼の男とおなじ霊園に佐野家の墓地があるので、ついでに頼む、と九井はさらりと言った。兄弟は顔を合せた。「なぜだ」と声を発したのは兄の蘭だ。
    「鶴蝶にやろうと思ってな。でも、あいつに頼むのは酷だろう」
     イザナに心酔していたS62年組というのなら、望月完爾でもいいだろう。
    「おまえらが適任だと思った。断るなら、望月に頼む」
     弟の竜胆が舌を打つ。
     なるほど九井が安易に報酬を了承したのは、こういうことか。嫌な奴だな、と思う。その狡猾さは神話に出てくる蛇のようだと思った。
     竜胆は顔を顰めたが、蘭は笑みを浮かべていた。
    「わざわざ墓を暴いてまで鶴蝶にイザナの骨をやるっていうのは、どういう魂胆なんだ?」
    「あいつは頼んだことは必ず成し遂げる義理堅い男だからだ」
    「へぇ。完遂してほしい依頼があるってこと?」
    「オレが死んだ後のことを頼もうと思っている」
    「ハァ? 死んだ後のことォ?」
     竜胆が場違いな素っ頓狂な声をあげる。蘭はにやにやと笑う。
    「おまえたちは考えないのか? 死んだ後のことを」
    「肉になるだけだろ」
    「その肉はどうなる」
    「骨になるだろうな。なるほど、鶴蝶に頼んだのはそういうことか」
     蘭には通じたようだが、竜胆にはわからない。口を尖らせながらも、「どういうことだよ」と兄に聞く。
    「骨を届けてほしい奴がいるってことだ。そりゃあ、よろこぶだろうな。犬は骨が好物だからな」
     そこまで言えば竜胆も九井の意中がわかったようだ。九井が執着する乾青宗という男。あんなやつのどこがいいんだか。さっぱりとわからないが、九井の骨が届けられることを思うと同情する。
    「鶴蝶が先に死んだらどうすんだよ」
    「イザナといっしょに死ねなかった男だ。オレが先に死ぬさ」 
    「……乾って奴には同情するぜ」
     思わずつぶやけば、九井が笑った。
    「オレもそう思うぜ」
     竜胆は、ウェ、と舌を出した。
    「依頼は成立だな」
    「まぁ、いいだろう」 
     九井は最初から蘭の答えが分かっていたかのようだ。さっさと退室していった男の背を見送って、蘭は竜胆を振り返った。
    「おまえもオレの骨が欲しい?」
    「いらねーよ。どうせいっしょに死ぬんだし」
    「鶴蝶のように残されるかもしれないぜ」
    「オレは兄貴より先に死ぬ」
    「年齢順ならオレが先だぜ」
    「最後くらいゆずれよ、兄貴」
     灰谷兄弟は死んだらどこに行くのだろう。つめたく暗い墓の中に埋まるのか。それとも海の底に沈むのか。土の中で朽ちていくのか。どうせ兄も弟も知ることはないのだから、どうでもいいはなしだった。
     


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    somakusanao

    DONEココのすきなおにぎりを考えていたら、いつのまにか書いてました。
    ドラケンとイヌピーの話。
    おにぎりは作らないことになったので、タイトル詐欺です。
    そうだ、おにぎりをつくろう「ドラケン、おにぎりの具はなにが好きだ?」
    「うーん。鮭かな」
    「鮭か……。作るの面倒くせぇな」
    「待て待て。オマエがオレに作るのか?」 

     言葉が圧倒的に足りていない同僚をソファーに座らせて説明を求めてみたところ、「ココが忙しそうだから、おにぎりでも作ってやろうと思って」と言う。それはいい。全然いい。九井はきっと喜ぶだろう。

    「なんでオレに聞くんだよ……」

     乾は九井にサプライズをして喜ばせたいんだろう。それは安易に想像できる。
     だがしかし、イヌピー同担拒否過激派九井が面倒くさい。きっと今もこの会話をどこかで聞いているはずだ。最初の頃は盗聴器盗撮器の類を躍起になって探していた龍宮寺だったが、ある時期に諦めた。ようするに九井は乾の声が聞こえて、乾の姿が見られればいいのだ。盗聴器と盗撮器の場所を固定にしてもらった。盗聴盗撮される側が指定するっていうのもなんだかなと思いながらも、あらかじめ場所を知ったことで龍宮寺の心の安定は保たれる。ちなみに乾は中学時代から九井につねに居場所を知られている生活をしているので、慣れ切っている。
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